SECOND HALF
この頃、通勤で電車に乗るためにホームで電車を待っているとき、列の一番前に立つのが怖かった。電車がホームに入って来るとき、無意識のうちに電車に飛び込んでしまうんじゃないか、っていう気がしていた。だから、列の先頭には立たずに、わざと2番目に立つようにしていた。
ある日、仕事で残業をして、結構遅い時間に帰ったんだ。俺はある大きな駅で地下鉄から私鉄に乗り換えるんだ。その駅は私鉄のターミナル駅なので、電車はそのホームに入線して乗客を降ろしたあと、今度は反対向きに出発するんだ。で、俺が降りる駅の改札は駅の前の方にあるので、俺はいつも先頭車両が停まるホームの一番端に並ぶんだ。だから、ホームの一番端に立っていると、入線して来る電車はまだ結構スピードが出ている。
その日、その駅で電車を待つとき、いつもなら誰かが先頭に並ぶのを待ってその後ろに立つようにしていたんだけど、たまたまその日は残業して疲れていたんだろうな、列の先頭に立ってしまったんだ。
これからアパートに帰って、一人で晩飯を食って、自分で風呂を沸かして入って、適当にテレビでも見て、寝て、明日の朝一人で目覚めるんだ、って思ったらなんだか家に帰るのがいやになっちまったんだ。
もういいや、って思った。こんな生活、終わりにしよう、って。
そして、無性にカナに逢いたかった。カナがいるところに行って、もう一度カナと話がしたいって、本当にそう思った。
作品名:SECOND HALF 作家名:sirius2014