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SECOND HALF

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そして、電車が入線して来るのが見えた。電車の強烈なライトがぐんぐん近づいて来る。けっこうスピードが出ていた。
近づいて来る電車のライトを見ているうちに、俺はそれに引き寄せられるような感覚に捉われた。
そして、衝動的って言うのかな、俺はふらふらと左足を一歩前に出してしまった。そのままの勢いで右足を出そうとしたとき、いきなり腹に圧力がかかった。誰かが俺のベルトを掴んで、ぐっと俺を引き止めたんだ。
俺は後ろを振り返った。
カナだった。
カナが俺のベルトを両手で掴んで、顔を真っ赤にして両足を踏ん張っていた。体重が倍以上ある俺を、カナがあの小さな体で、必死で引き留めていたんだ。
俺は声も出なくて、あっけにとられて体の重心をカナに向けた。とたんに、カナはつっかえ棒を外されたみたいになって、ベルトから手を放すとそのまま、とっとっと、っていう感じで後ろに下がって雑踏の中に混ざってしまった。
俺は慌てて人ごみを透かしてみたけれど、もうカナの姿はどこにも無かった。俺は茫然と周囲を見回した。頭が完全に混乱していた。
結局その日はそのままアパートに帰った。でも、もう死にたいという気持ちはどこかに吹っ飛んでいた。
衝動的に電車に飛び込みそうになった俺を、カナが引き留めてくれた。カナが死ぬなって言うんだったら、俺は生きなきゃいけない。ぼんやりとした頭で、そう思った。

作品名:SECOND HALF 作家名:sirius2014