SECOND HALF
結婚を機会に、カナは当時勤めていた病院を退職した。人間関係が難しかったらしい。だから、寿退社ということにして、辞めたんだそうだ。当時は薬剤師の資格を持っていれば、アルバイトやパートでも時給三千円取れていた時代だから、当面は薬局のアルバイトでもする予定だった。
結婚して2年目。俺もカナも子供が好きだったし、どうせ子供を作るなら早いとこ作って、さっさと子育てを終えて、まだ体力のあるうちに2人でやりたいことをやろうっていう考えだったから、そろそろ子供を作るか、って言う話をし始めた頃だった。
ある日の午後、仕事をしていた俺のところに、警察から電話がかかって来た。
カナが近所のスーパーに買い物に行った帰りに、事故にあったという知らせだった。
俺の両親は、親父の転勤のため飛行機で2時間かかる場所に住んでいてすぐには来られないので、カナの両親に連絡して、俺は警察から教わった病院に向かった。
病院に到着して受付に尋ねたところ、すぐに警察の人が来て、俺が連れて行かれたのは、地下の霊安室だった。
カナは身長が153センチしかないんだけど、特にそのときのカナの体は小さく見えた。
カナは自転車で歩道を走っていて、脇道から飛び出して来た車にぶつけられて車道に飛び出し、運悪くそこに走ってきたトラックに轢かれたんだそうだ。
見ただけでは大きな傷も無く、まるで眠っているようだった。
俺は悪い冗談なんじゃないかと思った。
昔のラグビー仲間がカナと組んで、俺を騙してるんじゃないか、今にもカナが大成功って笑いながらぱっちり目を開くんじゃないか、って思った。
でも、カナの目が開くことは無かった。
作品名:SECOND HALF 作家名:sirius2014