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SECOND HALF

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俺は酔っ払いが座っていた席に腰を下ろすと、俯いて縮こまっている女の子に話しかけた。
「もう大丈夫だよ。」
女の子が顔を上げて俺を見た。俺は息を飲んだ。
カナだった。
「カナ・・・」
俺が呟くと、カナは首を軽く傾けて、俺に向かって頭を下げた。そして、携帯電話を取り出すと、文字を入力し始めた。カナの文字入力はすごいスピードだった。カナはすぐに携帯電話の液晶画面を俺に向けて見せた。
「助けていただいてありがとうございます。」
液晶画面にはそう入力されていた。俺は改めてカナをじっくりと見た。カナも俺から目をそらさない。
カナじゃなかった。
よく似ていたけれど、カナじゃなかった。
俺は安心すると同時にがっかりした。
やっぱりカナはもういないんだ。
改めて、その思いが心に沁みこんで来る。
その一方で、俺はそのカナによく似た女の子が気になった。女の子はまた携帯電話に文字を入力している。
電車が駅に停車した。女の子は俺に携帯電話の画面を向けた。俺は画面の文字を読んだ。
「わたしはこの駅で降ります。
本当にありがとうございました。」
「大丈夫? もう夜遅いから、家のそばまで送って行くよ。」
俺は無意識にそう言っていた。言ってから、自分で「えっ? 俺、なに言ってんの?」って思った。
女の子が笑いながら、両手を前に出した。結構ですと言っているようだった。その笑顔は、本当にカナにそっくりだった。
その時、車両の反対側で怒声が響いた。俺が声の方を見ると、さっきの酔っ払いがドアの前でわめいていた。俺の視線を追った女の子がそれを見る。電車が完全に停まりドアが開くと、酔っ払いが降りるのが見えた。女の子の笑顔がこわばるのがわかった。

作品名:SECOND HALF 作家名:sirius2014