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俺の周りは曲者揃い!

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第五話 周り=良い奴?



 先生の指示で時雨は教室に入った。
 3―Ⅱと書かれた扉を開け、中に入ると、当たり前の如くクラス全員の視線が時雨に………来ない?
 一クラス20人程度だとは聞いていたがとてもじゃないが20人の視線とは思えなかった。
 時雨は教壇の前に歩き、クラスメイトと初めて向き合った。
 明白だった。
 ただでさえ少ないクラス編成なのに、ところどころに空いている席はより一層クラスの人数を少なく見せていた。

(ざっと見て6人か…。かぜでも流行っているか?)

 朝見たニュースでは特にかぜが流行っているということは言ってなかったはずだが、この学校だけで流行っているのだろうか。ここまで生徒が休めば、学校側も学級閉鎖などの対策をとりそうな気がするが所詮それは中学校までのことであり、高校ではあまりそういうことはしない。しかし、かぜが流行っているにしても出席している生徒が一人もマスクを着けていないことに時雨は疑問に感じた。

「はい、それじゃあ自己紹介よろしく。」

 疑問は捨てきれないが、先生に促されて時雨は頭を切り替え、自己紹介に入った。

「初めまして。今日からこのクラスに転入することになった柳崎時雨です。一年間という短い時間ですがよろしくお願いします。」

 形式的で面白みがないと言われればそれまでだが、下手にテンション上げて白けるよりは普通に話した方が良いと判断し、時雨は形式的な言葉を選び自己紹介をした。それに加え、あまり目立ちたくない時雨にとっては丁度いい自己紹介だと自分で思った。

「はい、ご苦労。柳崎君の席はあそこね。んじゃそろそろ授業始まるから柳崎君への質問は授業終わった休み時間にするように。」

 ホームルーム終了にテャイムが鳴り、白石先生は出席簿を片手に教室から出ていった。
 時雨は先生に指定された窓側の後ろから二番目の席に向かった。しかし、人数が少ないので席の配置は縦5列、横4列なのであんまり後ろの席とは言い辛かった。
 その時ちょうど時雨の席の後ろに座っている眼鏡の生徒と目が合った。
 眼鏡の青年はニッコリと、片手を挙げると、

「やあ。初めまして柳崎君。これからよろしくね。」
「あ、ああ。」

 眼鏡の少年を見て時雨が感じ取った第一印象は「真面目そう」だった。加えて、ものすごい清らかなオーラがあった。
 クラスで初めて声を掛けられた時雨はぎこちない返事をして席に座った。

「僕の名前は草原渓(くさはら けい)。ケイは渓流の渓ね。一応このクラスの副委員長をやってる。まあ、何かわかんないことあったら遠慮なく聞いてくれよ。」

 草原渓…。時雨は名前を覚えようと何度か頭の中で草原渓という名前を復唱した。

(それにしても、名前まで清らかだな…)

 反復しているうちにそう思えてきたが、やさしく、何かと助けてくれそうなので、時雨はとりあえず彼を頼ることにした。

「草原くん。」
「渓でいいよ。」
「えっと、それじゃあ渓、さっきクラスの副委員長って言ってたけど、クラス委員長って誰?」
「あ~彼女ね…」

 渓の表情が少し曇ったように見えた。

「ん~まあ、クラス委員長なら隣の列の一番前の女の子がそうだよ。」
「隣の列の前…」

 教えてもらった席に目を向けた。

(っ…)

 その席にいる女の子もこちらを見ていた。
 息を飲んだ。
 あんまり恋愛経験のない時雨だが、長い髪を後ろで束ねている彼女は表現しようもない美人だった。
 容姿端麗。これに才色兼備が加われば、どこにお嫁に行っても恥じない理想のお嫁さんになれるだろう。

「柳崎君。彼女を狙うのはやめたほういいと思うよ。」

 渓は彼女を見つめている時雨に耳打ちした。

「え、あ…いや…別に狙ってるってわけじゃないけど、やっぱり高みの華なのか?」
「まあ、ある意味では高みの華かな。」
「ある意味…?」

 時雨はその言葉が気になって渓に尋ねようとしたところで授業開始のテャイムが鳴り響いた。
 一限目は英語である。
 この学校での英語はどこまで進んでいるのか渓に聞いたところ、前の学校で教わったところとたいして変わらなかったため時雨は少し安心した。
 時雨は転校初日から悪い噂が立たないように、しっかりと準備して先生を待った。



 桐谷第二高校の授業は五十分間でそれが六限目まである。また、授業間の休み時間は十分という普通の高校と同じくらいの時間配分だった。
 そんな十分間の休み時間。授業が終わるなり時雨に元に走り寄ってくる女子生徒がいた。
 ちなみに、渓は職員室に用があると言って、授業が終わると同時に教室から出ていった。

「初めまして柳崎君。私、谷川茜(たにかわ あかね)。普通に茜って呼んでね。これからよろしく!」

 やたら元気で明るい声だった。
 唐突の明るい声で一瞬気圧されたが、なんとか笑みを作って答えることができた。
 その元気な声で自己紹介した茜は肩まで伸びた髪を右側の方だけ結っていた。自己紹介から少し話してみると、時雨が感じた第一印象を裏切ることなく茜は明るい性格で、容姿もそれなりに良く、恐らくこのクラスのムードメーカーポジションを担っているのであろうと推測がついた。
 そして、茜の胸は高校生とは思えないほど大きかった。当の本人は気づいていないようだが、時雨は不覚にも彼女の胸に目がいってしまった自分を戒めた。
 茜の元気な自己紹介をきっかけに時雨の周りに人が集まってきた。

「俺は鳩山光輝(はとやま こうき)。部活はテニスやってる。これから仲良くしようぜ。」

 どのクラスにも一人はいそうな誠実で頼れるスポーツマン、鳩山光輝。

「ぼ、僕は瀬戸内薫(せとうち かおる)。よ、よろしくね。」

 制服から男子だと判別できたが、女子の制服で挨拶してもそのまま通りそうな、やたらかわいい顔の瀬戸内薫。
 しかも、彼の場合自己紹介の後、ニッコリと頬笑むものだから、時雨は性別の壁を越えそうになったがなんとか踏みとどまった。
 加えると、薫の席は時雨の前の席であるため、これからずっとさっきのあのかわいい顔を見ることになると思うと、本当にこれから我慢していられるのだろうかと心配になってきた。 

「はじめまして、リュウザキ。ワタシはスクルド=リリィ=藤乃(ふじの)。名前が長いのでリリィとでも呼んでくださいネ。」

 恐らくこの学校のアイドルであろう美しい金髪碧眼のクオーター、リリィ。
 他にも5、6人の生徒が時雨に自己紹介した。
 そして、大体自己紹介が終わったところで光輝は質問を切り出した。

「柳崎は前の学校でなんか部活やってたのか?」
「え…と、一応、バトミントン部には入ってたけど…」

 前の高校の話は少し抵抗があった。そして、一番答えたくない質問が茜から放たれた。

「というか柳崎君ってさ、どこの学校から転校してきたの?」

 きた…
 時雨の顔に冷や汗をかくのと同時にあまり思い出したくない一つの高校の名前が頭の中に浮かんだ。
 この質問をされるのは少なからず予想していた。
作品名:俺の周りは曲者揃い! 作家名:帝 秋吉