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俺の周りは曲者揃い!

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「昨日の夜は合コンに行ってきたけどもう少しのところでふられた。だからイライラして家で夜中ずっとお酒飲みながらゲームしてたのよ。」
「は………」

 自分でもわかるくらい呆気にとられた表情になった。
予想外中の予想外の回答に時雨の考えが一瞬フリーズした。そして一瞬のフリーズ状態から脱した時雨の頭は色々とツッコミどころが満載の理由になんと返答すればよいのかわからず、茫然と立ち尽くしていた。
 彼女は彼女で、こんないい女ふるなんてなんのよあいつ…それとも私がもっとおしとやかに振る舞ったほうがいいのかしら?などと独り言を言っている。

(この人本当に教師なのか?)

 ようやく呆気にとられた状態から脱した時雨はすでに一つの疑問が浮かんでいた。時雨はこの疑問を尋ねたかったが、さすがにこの質問は失礼だと思い開きかけた口を閉じた。
 それによくよく考えてみると教師だって合コン行ったり夜中にゲームしたりする。あまり釈然としないがそういう教師もいるのだと時雨は自分に言い聞かせることにした。
 沈黙に時間もそう長くなかった。さっきまでブツブツと独り言を言っていた白石先生は腕時計に目をやると立ち上がり、

「そろそろ行くわよ。」

 そう言って扉を開けて廊下へと進んでいった。結局、他愛もない話ばかりで大事な話をまったくしていないような気がしたが、とりあえず時雨も返事をしてその後について行った。
 いよいよクラスメイトと顔合わせである。さっきまでの先生とのやり取りで若干緊張は解れたものの階段を上がるにつれてそれなりに緊張してくる。階段を上がっている間何度か深呼吸をした。

「もちろん自己紹介してもらうからね。まあ、さっきみたいな調子でやれば大丈夫だから。」
「あ、はい。」
「それと、基本私はノータッチだから。めんど…生徒の自主性の育成はこれからの人生でためになるものだからな。」
「今、思いっきりめんどくさいって言いませんでした?」

 先生は言い直していたが時雨の耳は確かに「めんどくさい」という単語を拾っていた。

「そんなこと言ってないわ。生徒の自主性を尊重しているのよ。」
「そう…ですか。」
「そうよ。自主性は大事よ。」
 先生はそう言いながら自分の言葉に納得して首を上下させ「うんうん」と言っている。
 時雨にとっては言い訳にしか聞こえないのだが…。
 そんな先生の姿を見て、本当に先生なのかと疑う片隅で緊張している自分を馬鹿らしく思っていた。そう思うとだんだんと緊張が解けてきた。三階についた時にはなぜかあまり緊張してなかった。
 時雨の転入するクラスである3ーⅡと書かれた扉の前で二人は足を止めた。聞き取れないが、中から話し声が聞こえた。大方、転入生の話題であろう。

「それじゃあ、『入って』って言うまでそこで待機していて頂戴。」
「わかりました。」

 先生は取手に手を掛けたが、思い止まり、時雨の方を向くと微笑んで、

「確かにうちのクラス、もとい学校は曲者が多いけどそれでもみんな最高の生徒たちよ。だからあなたもきっと………楽しめると思うわ。いや、絶対にあなたは『このクラスは最高です』って言うわ。」

 それだけ言うと先生は教室の中へと入っていった。

 断言してきた。このクラス最高だと…。

 途中に言い淀んだのは転入する際にあらかじめ学校側に伝えてあった過去の出来事が頭にちらついたからだろう。
 そして時雨はこの先生を、白石先生を侮っていたのかもしれない。教師から若干逸脱しているが、もしかしたら彼女は…

 『最高』で『曲者』の先生なのではないのかと

作品名:俺の周りは曲者揃い! 作家名:帝 秋吉