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俺の周りは曲者揃い!

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第二話 家庭≠安全!


 
 カーテンの隙間から朝日が入り込んできた。
 今日はいい天気のようだ。しかし、まだ四月の初めなので朝はまだ肌寒く、柳崎時雨はベッドの中から出られずにいた。
 寝ぼけた眼で時計を確認するとまだ6時だった。もう少し寝ようかと思い時雨が再び目を閉じようとした時、下から時雨の母親である|柳崎京子《りゅうざき きょうこ》の声が聞こえた。

「時雨―。早く起きなさい。」
「今日から学校でしょー。」
(ああ、うるさいな。まだ6時だっての。もう少し寝かせてくれ。)

 時雨は毛布をかぶり、母の声をシャットアウトしようとした。しかし…

「時雨―、起きないなら母さんが落としに行くわよー」
「‼」

 時雨はベッドからほぼ条件反射に等しい反射速度で跳ね起きた。
 急いで階段を降りようとすると、当の本人はちょうど階段を上がろうとしていた。

「あら、起きたの。わざわざ起こしに行く手間が省けたわ。早く顔洗ってきなさい。ご飯にするわよ。」

 そう言うと京子は台所へと入っていった。

(あ、あぶなかった…)

 時雨は本気でそう思った。京子の言う「落とす」というのは比喩であって比喩でない。時雨の今までの経験がそう語っていた。確かにベッドから落とされるがただベッドから落とすのではなく京子の場合、護身術の技を掛けながら落としてくる。実際、命を「落とし」そうな思いをしたこともあった。
 朝から地獄を味わうのをなんとか避けることに成功した時雨は洗面所で顔を洗い、テーブルに座って用意された手作りの朝ごはんを食べながら母親に念を押した。

「母さん、別に起こしに来なくていいよ。ちゃんと時間には起きるから。」

 実際、時雨は時間になると自分で起きる習慣がある。というか、この習慣を身に付けなければ生死に関わりそうになる…。

「それにまだ6時だよ。学校は8時半からなんだからもう少し寝かせてくれよ。」

 京子もキッチンから出てきてテーブルに座り、朝ごはんを食べ始めた。

「でも、今日から新しい学校でしょ?」
「いざって時のことを考えて早く起こしたのよ。」
(いざってどんな時だよ…)

 時雨の引っ越してきた家は転入先の学校まで徒歩十五分で行ける場所にある。自転車を使えば7、8分で着くという距離である。
 したがって、時雨は少なくともあと1時間は寝ていられたのである。
 おそらく、新天地で母も不安になっているのだろうが、俺まで巻き込まないでほしい、と時雨は切に願った。

「大丈夫だよ。とにかく、朝から技掛けにくるのはやめてくれ。」

 すると、母は呆気にとられた表情をして、

「あら、失礼ね。普通に起こしに行くつもりだったのに。」
「絶対ウゾだ。」

 時雨がそう断言すると、京子は呆気にとられた表情から一転して意地悪い笑みを浮かべた。

「あ、ばれた?まあ、朝から痛い思いをしたくなきゃ、ちゃんと一人で起きなさい。」

 最初からそのつもりだ。というか、時雨の今までの(ほとんどトラウマに近い)経験が無意識のうちにそうしていた。
 それにしても、母の演技はうざいくらいうまいな、と時雨は感心?していた。
 時雨の母、柳崎京子は高校生で今の父と結婚して、その一年後俺を産んだので今はまだ三十代である。それに加え、一時期だが女優として活躍しこともありそれなりに演技も上手く、息子の俺が言うのもなんだが、姉さんと言っても問題ないくらい若く見える。
 今は、合気道の先生をしながら父の仕事を手伝っている。時々、ドラマの出演依頼が来ると都心
に出向いたりもしていた。
 ちなみに今は撮影があるらしくメイクをして女優の顔になっている。

「鈴葉は?あいつも今日、桐南の入学式だろ?」

 時雨はこの場にいない妹の所在地を確認した。

「まだ寝てるんじゃないかしら。新入生は十時からだから…」
(なんで俺だけ危険な目に遭ってまで起こされなきゃならないんだよ。)

 時雨は理不尽だと思わずにはいられなかった。
 妹こと|柳崎鈴葉《りゅうざき すずは》は先月、前にいた地元の中学を卒業し、今日から桐谷南高校に入学することになっている。学業はそんなに良くないがスポーツ万能で特にバドミントンではシングルで全国大会に出場したことすらある。文武両道で有名な進学校、桐谷南高校には推薦で合格している。

「それじゃあ、私は撮影があるから行くわね。新しい学校頑張ってくるのよ。」

 朝ごはんを食べ終えた京子は時雨に微笑みかけた。そして、鞄を持ってリビングから出ていき、数分後、ドアが閉まる音が聞こえた。
 時雨も朝ごはんを食べ終わり食器を片付け、とりあえず八時までどうしてようかと考えた。二度寝すればいいのだろうが、朝の母の脅し?で完全に目が覚めてしまった時雨に二度寝はできなかった。

「シャワーでも浴びるか。」

 時雨は、シャワーを浴びた後何して時間を潰そうかと考えながらバスルームに向かった。
 バスルームの扉の前に立ち、躊躇なく扉を開いた。

「「‼」」

 そこには、ちょうどバスルームから出てきた全裸の妹、鈴葉が立っていた…。

作品名:俺の周りは曲者揃い! 作家名:帝 秋吉