Lady go !― 幸せがクルマで♪ ―
__130000km 〜 ママさん
ママさんの家に来てから初めての日曜日。
せっかくママさんとの初めての日曜日なのに、このママさんったらドライブに連れ出すこともしないで、ワタシの体のパーツを次々に取り外しはじめたの…。
何をするっていうのよ?
なんだか不安なんだけど
大丈夫かな?
ちょ、ちょっと、、そこ外したら、はずかしいわ…
使い慣れた工具でワタシのパーツはどんどんと外されていったわ。そうしてママさんは外したパーツを手に取ると、微笑みながら一つ一つじっくりとパーツのチェックをはじめていったの。
そんなママさんの姿をチビちゃんはいつも不思議そうに観察しているけど、最後には飽きてしまってお外に遊びに行ってしまう。
毎週毎週、ママさんは休日になると根気よくワタシのパーツの手入れをしてくれた。そうして磨かれたパーツを再びはめて貰うと、ワタシの心はどんどんと軽快な気分になっていったの。ワタシのパーツが一つが光ると、ママさんの手は決まって真っ黒になっていた。そしてママさんはいつだって微笑んでいた。
次の日曜日も、また次の日曜日もママさんは丁寧にパーツを磨いてくれた。
チビちゃんは生意気な動物(ママさんにキレイにしてもらっていた)と遊びながら、車庫のそばでワタシたちを眺めることもあったわ。ママさんは、そんなチビちゃんにはお構いなしで、ワタシをどんどんと健康にしていってくれたの。
もう生意気な動物との夜のお話は出来なくなったけれど、それでも時々はお喋りもしたわ。チビちゃんに名前を貰ったんだって、とても喜んでいたわね。けれどもその名前はありきたりで、とても素敵な名前には感じられなかったわ (フン)
でも名前があるっていうのはとっても素敵なことね。ママさん、ワタシにも名前をくれないかなぁ。
いつからか、チビちゃんはママさんを手伝うようになっていたの。生意気な動物との遊びにあきたのかな? 小さな手袋が真っ黒になっても 赤いほっぺがお髭のように汚れちゃっても ママさんのようにニコニコしてくれた。とっても嬉しい。実はワタシは、チビちゃんが触れてくれるの、ずっと待ち遠しかったの。
そうして3ヶ月もたった頃、ママさんのパーツ磨きはようやく終了した。
ワタシは若かった頃のようにピッカピカになっていた。ママさんとチビちゃんの二人が ワタシのことを若い頃のような爽快な気分にしてくれたのだ。でも、いくらピカピカでもやっぱりもう歳なんだから、これからは慎重に走ろう。こんなにして貰ったのにドライブ中に止まったりしたら、またガッカリさせてしまうから。
そして、とうとうエンジンがかかると、ママさんお気に入りの音が鳴り響いた。
ブルルゥン ブルオォォ〜ン、ボッボッボッ…、、、
ブルゥボォゥゥゥゥゥン 、、、ボッボッ…、、、
それからすぐにママさんとドライブに出発したの。ワタシはママさんを乗せて走り出したとたん…。。。自分が生まれ変わっていることを実感したわ! 重々しい走りだしは軽快に変わり、中速での気だるい感じがなくなって足回りも軽やか! コーナーではしっかりとアスファルトを捉えている! ワタシは自分自身の走りに驚き、ママさんのドライビングテクニックに酔いしれながら、喜びに溢れて走り続けたわ! 走りながらまわりのクルマたちに嬉しさを伝えたんだから♪
この日のドライブのことを、きっとワタシは忘れない。
作品名:Lady go !― 幸せがクルマで♪ ― 作家名:甜茶