Lady go !― 幸せがクルマで♪ ―
__130000km 〜 中古車店
次の日、ワタシは遠くの店に連れていかれた。
その店に並んでいるクルマはほとんどが年寄りで、若いクルマは一台もいなかったわ。ワタシはその店の端っこの方に並べられて、そこで新しいパートナーを待つことになったの。
正直、パパと別れたのはとても悲しかったけど、次のパートナーとの新たな出会いっていうのにも、ちょっぴり期待したりもしていたのよ。
昔の男を振り返らない
そこがちょっと重要なのよ
いつだって女の子は新しい恋をさがしているものでしょ☆
それなのにワタシのことを気に入ってくれる人はなかなか現れなかったの。
もっとピカピカにしてくれたならなぁ〜、もっと真ん中の方に並べてくれていればなぁ〜って、なんだか端っこのほうでイジけてしまってたわ。
随分と長い日をその場所から動かないでいると、すっかり老けちゃった気がしたりして、もう走る自信すらなくしてしまっていたかも。もう、ボォ〜っとするのにも飽きてしまっていて、とにかく何処かにお出かけしたかったのよ。
すると、ワタシはトラックに乗せられて、お出かけすることになったの。
やがて幾重にも積み上げられたクルマがたくさん見えてきて、トラックはそんなクルマたちの集合団地みたいな場所に到着したわ。あまりにもたくさんのクルマがいらっしゃったので、なんだかウキウキしてきた。
でも、実はこの場所はそんな楽しい気分とは程遠い場所だったの。
ふと機械音の聞こえてくる方を眺めて見ると、クレーンに吊り上げられたクルマが鋼鉄の「ハコ」の中に運ばれていくところだった。大きな磁石に捕まえられたそのクルマのボディは、古ぼけてサビだらけ。しかも窓ガラスもライトもなくって、部品もたくさん失われてしまっていた。そのクルマは空中で揺られながらスッポリとハコの中に放り込まれると、もっとうるさい機械の音がはじまって、分厚い鉄のシリンダーがハコの壁を押し狭めはじめた。
とてもやるせない音が響いてきた。おもわず目をそむけてから、ようやくワタシは理解した。
ここはワタシ達の墓場なんだなって。
作品名:Lady go !― 幸せがクルマで♪ ― 作家名:甜茶