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海野ごはん
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novelistID. 29750
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北国ロマンス

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「スキー板は着いてるかな?」
「はい、すでに到着しております。あちらの方にございますので」とフロントマンは指を差した。
「カッちゃん、すぐに滑ろうか」敦子は今すぐ滑りたいらしくそわそわしてる。
敦子の目的はちゃんとしたスキーだった。克己は酒だが。
若い頃から敦子は滑り慣れているので苗場のスキー場を滑りたがっていた。それに比べて克己がスキーを始めたのはたったの2シーズン前だ。
酒処の新潟でなかったなら来てなかったかもしれないという具合に、そうたいしてスキーに関心がなかった。

最上階に近い部屋はゲレンデが目の前で、眺めがよかった。
ダブルのベッドの部屋は敦子の希望だった。
ひとつのベッドでなきゃいやだと言う。せっかく付き合っているのに、別々に寝るなんてもったいないと彼女が言ったのだ。
敦子はいつも優しくしてくれる克己に手紙を書いてきていた。出会ってまだ3ヶ月だけど「好きだよ」の言葉をしたためて来たのだ。
恋愛は最初の頃はとんでもなく燃え上がる。毎日想う気持ちは何事にも変えがたい。敦子は感謝の気持ちを克己に渡そうと一晩かけて書いてきていた。そして、いつ渡そうかと考えていた。
 

ジュニアスゥイートの部屋は、リビングとベッドルームの二部屋で構成されていてわりと広かった。
ベージュ色のおとなしい部屋。万人受けのする当たり障りない部屋だった。
「調度品にあと少しお金をかけていたらいいホテルになるのにな~」と、そんな言葉が似合いそうもない酒飲みの克己が言った。
「いいじゃん。素敵な部屋だよ。なんたって眺めがいいじゃん」
「そうか・・ただの真っ白な山があるだけなんだけど。山より酒だな俺は」
「このゲレンデがいいのよ。ほらあそこなんか滑りた~い」
敦子は、高い頂上の方を指差した。
克己が見上げると、初心者じゃとてもきつそうな傾斜のこぶが見えた。
「え~、あんなとこ滑んの?無理、無理、無理・・」
「いいわよ、あたしが滑って来るまでカッちゃん下で待ってて」
「あ~、そうしとくわ」そう言いながら冷蔵庫のミニボトルを克己はスキーウェアーのポケットに突っ込んだ。
「カッちゃん・・飲むのはほどほどにね」
「何でだよ。これが目的なのに」
「カッちゃん・・飲んだらエッチ出来なくなるじゃん」
「バカ言え。今日はスペシャルだから夜は張り切るに決まってるだろ」
「ほんと~?」敦子は半分疑う目で克己の顔を覗き込んだ。
「俺はスケベの塊だから大丈夫だ」
敦子は笑いながらスキーの準備をした。手紙を渡すのは後からでいいかと思った。

作品名:北国ロマンス 作家名:海野ごはん