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愛を抱いて 2

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「俺達でファミリーなサークルを作らないかい?」
柳沢が云った。
「面白そうね。」
世樹子が云った。
その夜、5人は中野ファミリーの誕生を祝って乾杯した。

 5月15日は、初めての合コンの日であった。
私は、大学のクラスの仲間と「合コン愛好会」なるものを作っていた。
メンバーは5人で、その中の1人である西沢が、高校時代の女友達と合同コンパの話をつけたのだった。
私の様な地方出身者は、普通やる方ないのだが、地元の男は救世主とも言える存在であった。
相手側は、大妻女子短期大学の1年生で、人数はこちらと同じ5人だった。
原宿駅から表参道を歩き、明治通りを渡ってしばらく行くと、左手に、ブティックなどが入っている背の低いビルがある。
そのビルの地下2階に、柳沢がバイトをしている喫茶店があった。
割と広いその喫茶店を貸し切って、第1回合同コンパは始まった。

 私は一番端に座り、私の正面にはニュートラが、横にはヨーロピアンの女が座っていた。
「これで、1人千円なんて信じられないわね。
お店に悪いんじゃないの?」
「酒は持ち込みだもの。
それに、友達がここでバイトしてて、顔が利くんだ。」
「こんな形でコンパすれば、安くて楽しめるわね。」
「でも、どこの店でもできるってわけじゃないでしょ。」

 我々は「合コン愛好会」の結成にあたって、次の様な会則を決めた。
一、費用はワリカンで行う。
こちらが奢らなければ来ない様な女は、相手にしない。
二、女の取り合いは避け、互いに助け合って良い雰囲気に持ちこむ。
三、合コンで知り合った女とは、一度しかセックスをしない。
その夜のうちにホテルへ連れこむのが理想である。
間違っても、合コンで知り合った女と交際を始めてはならない。
(次回からの合コンが、円滑に進行しなくなるため)
四、週に一度のペースで行う。
話を持って来る役はメンバーのローテーション。
また、その者が幹事を務める。
五、気に入った女がいない場合でも、他の者のために、盛り上げる事に協力する。
六、セックスする事を最終目的とし、それが達成された場合、成功と評価される。

 「ケンちゃんが交通事故で両手両足を失くしちゃって、毎日家から一歩も外に出れずに生活してたんだってさ。
でもケンちゃんは野球が大好きで、友達の皆がしているのを、いつも窓から眺めてたんだって。
ケンちゃんのお母さんは、そんなケンちゃんが可哀相でたまらなくて、一度だけでもケンちゃんに野球をさせてやりたいと思ったんだ。
ある日お母さんは、野球をしている子供達の処へ行って、ケンちゃんを仲間に入れてくれる様頼んだんだってさ。
子供達は快くケンちゃんを入れてくれたんだって。」
「良かったわね。」
「うん、ケンちゃんは大喜びさ。」
「でも両手両足がなくて、どうやって野球をしたの?」
「お母さんもそれが気になって、皆と仲好くやってるかどうか、こっそり様子を見に行ったんだって。
すると…。」
「どうだったの?」
「ケンちゃんはちゃんと、野球のホームベースになっていたんだってさ。」
ニュートラの女はよく笑った。
「ある日、お母さんは買い物に出かけて、ケンちゃんが一人で留守番をしてたんだってさ。
ところがお母さんが帰ってみると、ケンちゃんの姿がどこにもないんだ。
お母さんはびっくりして、家中を捜し廻ったんだって。
でも、見つからなかった。」
「外へ出ちゃったの?」
「いや、ケンちゃんはちゃんと家にいたんだ。」
「どこにいたの?」
「トイレさ。」
「…?」
「ケンちゃんはトイレで、便器の蓋になってたんだ。」
「やだあ…!」
コンパの前半、我々は、「ジャブ」と呼んでいた、とにかく女を笑わせて場を明るく盛り上げる事に、専念した。


                           〈三、中野ファミリー〉






4.柴山泥酔事件〔その1〕


 「とある山奥に、小さな池があって…、若いカップルがその池に近づくと、ある生き物が出て来るんだ。
何だと思う?」
「山があって池があるんでしょ…? 
それは襲って来るの?」
「どうかな…? 
でも毒を持ってるかも知れない。」
私は紙とペンを借りて来て、絵を描きながら話をした。
「ワニ?」
「違う。」
「小さな池だったわね。
魚?」
「魚じゃない。」
「池にやって来るのは、若いカップルじゃなきゃ駄目なの?」
「いい質問だ。
若くなくても、カップルでなくても良いんだが、二人でないといけないんだ。
一人の時は、それは居ないんだよ。」
「…?」
「誰もやって来ない時も、それは居ない。」
「…全然わかんない。」
「カップルが池の反対側から近づいても、それは出て来ないんだ。」
「降参。
何が居るの?」
「へびさ。」
「蛇?」
「そう。
へび。」

 コンパが中盤を迎えた頃、私はトイレに立った。
すぐ後から、淳一と野口も入って来た。
用を足しながら協議した結果、私の受け持ちはヨーロピアンに決まった。
ニュートラ等に比べ、ヨーロピアンは最初からほとんど笑わず冷めた感じであったが、案外落としやすいと私は踏んでいた。
トイレから戻って、我々は受け持ちの隣に座れる様、席替えを行った。
私は初めからヨーロピアンの隣だったので、そのままだった。
各自は女に質問を始め、相手にも沢山話をさせる様心がけた。
場は次第に、話題を決めた全体的な会話から、二人きりの対話へと移行した。

 「私って話してても、あまり面白くないでしょ?」
ヨーロピアンが云った。
「そんな事ないよ。
どうしてさ?」
「人の話に巧く乗って行けないのよ。
冷めてるって、よく云われるわ。
可笑しいと思っても、すぐに笑ったりできないの。
鈍いっていうか、表情を造るのが下手なのね。」
「でも、その事は、君を魅力的に見せてるよ。」
「ありがとう。
そんなに気を使ってくれなくて好いのよ。」
「気なんか使わないさ。
少なくとも俺は君に悪い感じはしない。」
「本当にそうなら、嬉しいわ。」
「そうじゃなかったら、席替えの時に他へ行ってるさ。」
「あなたがさっき色々話してた事、とても面白かったわよ。」
「笑ってもらうためだけの、意味のない話さ。
でも君の反応が気になってたから、良かったな。」
「他の娘がぱっと先に笑い始めるでしょ、そうするともう駄目なのね。
自分だけ、変な笑い方しそうで…。」
「そういえば、前に座ってる娘は、よく笑ってたな。
こっちが喋り終わらないうちに、もう笑ってんだもの。
でも、ああいうのは、馬鹿に見えるよ。」
「駄目よ。
聴こえるわ。」
「彼女、子供の頃に重い病気してるって事聞いてない? 
40度ぐらい、熱が出たとか…。」
「しっ…、聴こえるってば…。」
「あっ、何か私の悪口云ってるんでしょ?」
ニュートラが、こちらへ身を乗り出しながら云った。
「違うよ。
病気の話さ。」
私は云った。
「何なのよ、それ。
作品名:愛を抱いて 2 作家名:ゆうとの