火付け役は誰だ!2
「わーお…いくらジャーマンスープレックスでも普通床に放射状に凹みは出来ないよ、流石神秘の国ジャパン、シュギョーで得られる筋肉は伊達じゃないみたい…」
この光景を向かいのマンションから覗き見していたのはジャパニメーションファン、シメルタ。
先程まで彦や媛佳を覗いていたのだが、ヨウタの逆鱗に触れ急遽二手に分かれることになった。
正しくはヨウタからシメルタの胴体が分かれるか別行動するか据わった目で聞かれたのだが。
「…実際こーして見てても眼福ってだけで何の神様とか聞こえないんだよね!!技術大国ジャパンの恐るべき防音ガラス!!」
すっかりやる気がないようで豊満な上半身をフェンスに預けっぱなしである。
覗いている(様々な意味で)たるみきった姿を妖精二人が気づいたならば穂子が(別の意味で)襲ってきそうなものだが、そちらはあいにくと瑞に追撃中のようだ。
「あーあ、わざわざ軋む屋上のドアを気づかれないようゆっくり静かに開けたのに…くたびれ損かな、兄さんにたっぷり文句言ってアイス買わせてやろう!!ナイス名案自分!!」
この屋上、何もないせいか来る人もないらしい、整備員すらサボるのかドアに油が差されていないのだ。
「うーぬ、それにしても何か出来ないものか…ここから跳び移ることは……無理だね、ニンジャのシュギョーしとけば良かった…」
「こらこら、変な気を起こしてはダメよ?」
不意に後ろから声がかかった。
まさかこのマンションの人に見られたのかと振り返る。
そこにいたのはいかにもフライパンを持って料理するのが得意というような家庭的な若奥様がいた。
誤魔化して早く逃げ出したいシメルタだが今の状況で逃げては、後々の騒ぎになるかもしれない。
何しろ何もない屋上でマンションの住人でないものが一人、変な意味にとられる可能性も泣きにしもあらずんばなり
とここまで考えて少々会話しなければと判断したシメルタは
「い、いえ違いますちょっと景色を覗い……いや楽しんでいただけですあはははは」
「そう?」
若奥様は棒読みで冷や汗を流すシメルタに構わず同じようにフェンスに寄りかかった。
「あ、あのお姉さんはなにゆえ屋上に?」
「あら、お姉さんなんて言われたの久しぶりね。ふふ私は景色じゃなくて子供たちが遊んでるのを見に来たのよ、高いところが好きだからついでに屋上まで来ちゃったの。」
見れば下には小さな公園があり何人かが遊んでいる。
あの誰かが彼女の子なのだろう。
「良いですねーお子さん楽しそうで…」
「ちょっとやんちゃで今プロレスごっこにもはまっちゃって。」
「男の子なんか皆そうですよ!!私の兄さんもプロレス顔負けの技かけてきますもの!!」
「うふふ、仲が良いのね。」
「そりゃ勿論ですよ!!」
つかの間談笑し、場の流れが和らいだ。
「じゃあ私もやることに戻りますね!!景色堪能しましたし!!」
「ここはいい気晴らしの場所だからまた会うかもしれないわ、またねお嬢さん。」
「奥様もお子さんもお元気で!!それではッ!!」
「(危ない危ない危ない一般人に自殺と思われて色々騒ぎになるとこだった!!そしてこんなへました時に兄さんが一緒じゃなくて本当に良かったーッ!!)」
屋上の軋むドアを開け、階段をかけ降りながら小声で叫ぶシメルタだったが、バッチリ兄のヨウタが持つ望遠鏡でへまは捉えられており、後々にお仕置きが待っていたのは言うまでもない。
「…あれ?何だか忘れてるような。」
≡≡火付け役は誰だ!≡≡