火付け役は誰だ!2
「何もやることがないよ~...暇すぎて死ぬ死ぬる、瑞ー何かご自慢の秘密道具でも出してよ瑞ー」
「…秘密兵器なら。」
「待ってそのバズーカみたいな水鉄砲どこから出したのしまってしまってというか何で持ってるの。」
「…バディの武器が派手すぎるから買った、しめて¥1800。…キャラの薄さ防止用。」
「あ、あれ?どこからそのお金」
「…キャラクターの主導権握るために使ってみたいけど、ダメ?」
「フフン色目は同性をイラつかせるだけじゃーッこの乳お化け!!否!断じて否だよ間違いなく痛いし!!!」
それ以前にこの妖精達、部屋を二度は爆破し一度は浸水させている。
リーチもいいところの部屋と信用状態で室内水鉄砲等に興じた場合、部屋は廃墟にレベルアップ、同時に家主達二人が三段変化飛び越して怒りのラスボス形態、満貫だ。
「…従わないなら致し方なし。…排除シマス。」
「訳がわからないロボキャラ発現したよ!?」
「…再会したヒロインが機械化改造されて悪堕ち…王道…。」
「私が言うのも何だけどボケの連鎖が止まらない待って。」
ツッコミ不在の負荷は重かったようで穂子が早くも音を上げる。
「…こうでもしてないと寝る。」
「脳にタナトスさんが来てるよー…」
「…タナトスは来たら永眠する。」
タナトスさん等と軽々しく言っているがそのタナトスさんは死の神である。
おそらく穂子は眠りの神ヒュプノスの事を言いたいのだろうが本当に頭が回っていないらしい。
「私は一食に三杯のご飯とおかずの塩鮭さえあればもうなにも要らないんだよ…カモンタナトス。」
「…何という日本人。」
「伊達にかまどの神様の妖精やってないよーアイラブ白米ベリーマッチ。ぎぶみーちょこれーと!!!」
「…要は空腹?」
「そういう事だね!!」
ぎぶみーちょこれーとが何故この文脈で出てきたのか首を捻りながら瑞は前々から気になっていた疑問を口に出した。
「…前からの疑問。」
「どんと来たまえ500円。」
「…鑑定料ならほら子供銀行券。」
「うわぁい燃料!!!」
「…その反応想定外。」
「で、何の質問かなこのジト目妖精…待ってその水鉄砲バズーカ下ろして謝るから。」
「…話をそらさない。…私達の大元が決まったのは有名な神話が作られたギリシャとローマ。」
「ふんふん、そだね。」
「…何故『かまどの神様』なんかがメインに?…言い方が悪いが風の神や下手したら人の王よりマイナーなのに。」
「…結構容赦ないね…いやよく言われるけど。」
穂子自身も苦笑いを浮かべる辺り良く言われる事らしい。
ギリシャ神話で12神とされるヘスティアとローマ神話の家庭神ウェスタは同一とよく見なされるが、12神ながら他の神のように力を使った場面も活躍した場面も描かれることがない。
「その理由はだね、結構消去法な所があるんだよ。」
「…消去法?」
「そうそう、例えばさっきの例だと…風の神、特に西風の神ゼピュロスは太陽神アポロンと仲が悪いでしょ?」
「…成る程、ヒュアトキンスの話。」
ギリシャ神話になるが西風の神ゼピュロスと太陽神アポロンはヒュアトキンスという青年と仲良くなろうと近づくが、アポロンとしか接しないヒュアトキンスにゼピュロスが嫉妬して殺してしまうという事があった。
ヒュアトキンスはアポロンの手の中で死んでいき、その血が流れた血にはヒヤシンスが生えたという美少年の話。
尚余談だがギリシャ時代には少年趣味が流行っていたのは言うまでもないことである、神様にも流行があるようだ。
「うん、だからまだまだあそこの仲が悪くてねー。」
「…では人間の王なら?」
「それもキツいねー人間は人間だし、もし神様とのハーフだとしても…」
「…!!…そうか、女神ヘラ…」
「…(殺られるでしょ?)」
「…納得。」
女神ヘラはギリシャ神話の主神ゼウスの妻だが非常に嫉妬深い上実行力があるためゼウスの浮気相手やその子供に対して一切の容赦がないのである。
あのヘラクレスに関してはもはや何度ヘラが殺そうとしたか分からないくらい刺客を送っている。
これも原因は浮気神もとい主神ゼウスにあるのだが。
「それにハーフもハーフでプライドが高いから神々の癇に障るみたいで…」
「…じゃあヘスティアが選ばれた理由って…」
「ローマが食事を重視した結果家の守り神として立場を確立した、それと『どの神とも争わず対抗せず対立しなかった』から、になるね。」
「…結構適当。」
「本人のヘスティア様全然気にしてなかったけどねー12神採用通知来たときお料理教室行ってたもの。」
「…採用通知…そして流石自由人。」
穂子の説明通りならヘスティアやウェスタは実力関係なく12神入りした事になる。
ならばその元にいる穂子は純粋な戦闘が出来る瑞より弱かったはずなのだが現実は逆。
ならば答えは一つだけ。
ヘスティアは、ウェスタは12神としてかなりの強さを持っている。
それなのに他と対抗しないというとかなり底が知れない存在なのかもしれない。
と、ここまで瑞は考えた上で言葉を紡ぐ。
「…でも穂子料理できない、本当にヘスティアの妖精?」
「世の中には適材適所があるんだよ気にしない気にするな。」
穂子の能力がどのような面において適材かどうか瑞にはイマイチ分からなかったが深くは突っ込むまい。
聞きたいことは尽き、会話を終えたと認識、席を立とうとした時だった。
「じゃ、私からも質問なんだけどさ」
言葉を投げ掛ける穂子の表情は瑞からは見えない。
ただ多分笑いをうかべているのだろう、この口調。
「瑞も本当に『水の神』の妖精なの?」
三番、幕引き