火付け役は誰だ!2
△三番、まな板に瑞▼
相も変わらず置いてきぼり。
妖精二人は部屋を我が物顔でゴロゴロ転がっていた。
本当はそれ以前に家の本来の主人から頼まれたやることメモが置いてあるのだが、それを見もせずミツユビナマケモノのようにのんびりしていた。
いわばニート、現代の縮図。
圧倒的に非生産的だが究極の平和、バトルロワイヤルにいるはずの寝転がる妖精達には闘争が見られない。
「彦もお年頃なんだからそーゆーマンガどこかに隠し持ってたりしてないのかなー」
「…これだけ探して無いなら無駄。…無いのも不思議な気がするけど。」
「せっかくこうやって寝転がってまで探してたのに、隙間という隙間を!!」
「…一番メジャーなベッドの下に無かった時点で結果が明らかだったみたい。」
非生産的だがこのゴロゴロは家主側を瀕死に追い込むような活動だったようだ、概して神話で妖精とはいたずら好きでも有名である。
いたずらとは関係なしに彼女らはこの家のキッチン部分にとあるマンションの一部をも爆破しているため、これがただの彼女らの好奇心である可能性もあるのだが。
「…『暇になったから探し物ゲーム!!』なんて言うから…」
「だーだって暇なんだものー」
完全に諦めてはいないのか彼女らは尺取り虫のように『青少年の本』を探す。
ただ元気な方、穂子が言うように暇なのもこれを助長しているのもおそらく事実。
早い内に手を打たねば第二第三の爆破被害が出ることも考えられる。
それ以前になぜそれを探そうとしたのか、健全な乙女にはその発想は通用しないが人間の常識外こそ妖精の真骨頂なのかもしれない。
そのように二人してしゃくしゃく部屋を動くこと五分、今度は静かな方、瑞が声を上げた。
「…発見。」
「お手柄ァーっ!!!!」
「…なんの本かわからないけど。」
「どれ、ホントだ本棚の下にあるね、何か薄い本が。」
「…タイトルが見えない。」
「何にせよ取ってみれば分かる!!覚悟せよ彦!!!朝から貧乳コンプレックスを引きずらせた罪は重いよ!!」
この一言のせいかさりげなく後退する瑞、持たざる者と持てる者との確執は深いのだ。
更に苦労して取り出すこと二分。
遂に本棚の下にあった薄い本は全貌を明らかにした。
「…これは」
「間違いないね。」
「…いや、中等家庭科の教科書。」
「ひ、彦にこんな性へ」
「…その発言は同じ妖精としても疑う…つまびらかに言えばドン引き。」
「うるさーいー目当ての彦をいじれるような物がなくて失望なんかしてないよーもー…」
一人暮らしをする際に引っ張り出した上家庭料理の欄が付箋まみれにしているのは涙ぐましいが彼女らにもそれは伝わったらしく微妙な空気が流れる。
「戻しておこう。」
「…そうしよう。」
付箋を張ってあったということは今使っており、ベッドの下にあったということはおそらく無くしていたのではないかと思われるが、教科書は無慈悲にベッドの下に強制送還されてしまった。
≡≡火付け役は誰だ!≡≡