火付け役は誰だ!2
「……これで二回目になるわけだが」
「ん゛ーー」
「……この監視に全く意味を見いだせない俺がいるんだが。」
「ん゛ーーまんでみ゛いばで」
「とにかくモゴモゴしてる口の中空にして話せ、シメルタ。十秒以内だ。一応言っておくがタイムオーバーと共に逆さに吊るすからな。」
「……それは流石に苦しいね兄さん!!」
「あっさり二秒で飲み込んでから言うな。」
屋上。
学校前のマンションに二人の人影、先日の火口達の部屋を見ていた二人だった。
因みにそのマンション、最上階の端の部屋前にどういう訳か爆発痕があり、改装中という名の立ち退き処分なのだが、この二人はどうやってか侵入している。
それにしても先ほどの二人のうち女の方は口一杯に頬張った何かを二秒で飲み込んだが通常の人はあのような事は出来ない、生命の神秘なので真似してはいけない、死ぬ。
「で、栄養が脳にいってない大食いは何かちょっとでも考えてたのか?」
「脳にだっていってるよ!!きっと多分!!」
「エネルギー保存の法則って知ってるか、よってお前の栄養は胸にしかいってない。」
「痛い痛い!!ヨウタ兄さん!!望遠鏡のファインダーはこめかみにグリグリしても何も見えないよ!!」
「じゃあ目か。目がご要望か。」
「私カタツムリじゃない!?そんなに目と顔離れてないって!!!」
「キャッチコピーは視力百倍だな。」
「取り替え式眼球?!」
「抱腹絶倒に飢えた子供達に笑いを配るんだな。」
「流血沙汰とお巡りさんしか届けられないよ兄さん!!」
一通りからかい終わったのかヨウタは再び望遠鏡のレンズを学校に向け直す。
「忘れてるだろうからもう一度繰り返すがこの監視の意味は何だと言ってるんだ、そもそもこれはお前の提案のはずだ、シメルタ。」
「さっき言われた事は流石に覚えてるよ!!そしてじゃあ今度は私が監視の意味を理解出来ないヨウタ兄さんに直々に教えて差し上げましょう!!」
「寝言は寝てから言え。寝た方が頭が良くなるかもしれんしな。」
「……何か?」
「何も。」
「よろしい、続けますよ兄さん。」
「監視の目的なんて決まってるじゃないですか、このバトルロワイヤルは情報戦でもあるんですよ?妖精がどの神様の使いなのか分かったら対策も立てやすいというものです。」
このバトルロワイヤル、妖精達が『神様の力』に対して自らの無力を感じた為に行われているものであり、妖精達は自分達が所属する神様の力を得意とする。
炉、竈の神ヘスティアに仕える穂子が火に関する力を使っていたように。
その代わりに神様の象徴を怖がったり苦手とする特徴がある。
つまりは所属する神様の力が分かればその妖精の攻撃の仕方も弱点もある程度は分かってしまうのだ。
「バディ次第では有利不利が分かれるのもそれが理由だしな。確かに情報戦には一理ある。」
「おっ?兄さん兄さん今私誉められた!?わーい今日から赤飯だ!!!」
「今日からずっとかふざけるな、そして良く聞け俺は一理あると言った、譲歩だ譲歩。」
流石にシメルタの常時ハイテンションに疲れてきたのかうんざりした声で続ける。
「だからといって学校まで見張ってどうすんだ、学校見張っても力分かる訳ねぇだろうが。そんならむしろ妖精のいたあの部屋見てた方が効率的だろうよ。」
「……てへ?」
無言でヨウタが望遠鏡を振りかざしたのを見て真顔に戻るシメルタ。
「い、いやいやいや理由はあるんだよ兄さん!!」
「遺言として言え。」
「……敵と言えば謎の転校生じゃない?」
「要約。」
「学校のドロドロ恋愛活劇にあわよくば参戦!!」
ノリと勘で生きる自由人シメルタに着いていけなくなった常識人ヨウタの望遠鏡が突き刺さった。
二番、幕引き