火付け役は誰だ!2
△一番、妖精住むれば宿主忘る▼
さて、少し現実逃避してしまったがしっかりと現状を見つめよう。
俺は火口星彦、高校一年になりたての男子高校生。
髪を染めるも高校デビューも何もなく、ただ凡庸普通平和を愛する15歳である。
今は通った高校が実家から遠い場所だったために家から離れて寮生活、寮と言っても目の前のマンションでろくに日も差さない不良物件にて暮らしている。
と、絵に書いたような平凡寮生活的学生だっただが、そんな俺の日常はとっくに崩れ去っている。
原因など言わずもがな、一人のある妖精。
振りかえれば2日前。
気持ちよく朝に起きた俺は何故か洗濯物の山に埋もれた少女(服装備:なし)を発見したのだ。
日本人(人?)的な明るい黒髪を肩までで揃えた少女は名前を穂子と名乗り神話の時代より生きる妖精だと宣われた。
そう今俺の居間で覆水にクッションを投げつけようとしている女子で間違いない、大丈夫見間違いではありません。
彼女は俺の証拠を見せてみろとの主張に、あっさり竈の神ヘスティアに仕えていたからと炎の向きを操る力を見せつけ、妖精だと認めさせた。
起こった出来事がここまでなら俺に(偏った恋愛の)春しか訪れていなかった。
だがしかしBUT現実は甘くない、渡る世間はなんとやら。
この一見ちびっこにしか見えない妖精は部屋に住み着くだけでなく、俺をバディとして選んだから妖精同士のバトルロワイヤルに参戦しろとのご命令まで引っ提げてきたのだ。
何故か俺に拒否権は無かった為に俺は学業とバトルロワイヤルの両立に悩んでいる、新しく入る部活なんて考えてる暇もなくなったんだがどうしてくれる。
と、ここまでがくどいようだが『2日前の状況』、万物は流転するのです。
一日前、俺はバトルロワイヤルの初戦に巻き込まれ、曖昧な形ながら勝利した。
そして戦った敵は、まだ呑み込めていないのだが、相手方の妖精引き連れてまた俺の家に居着くとの御宣言。
その相手は今クッションを振り上げる穂子にチョップを繰り出している、大丈夫その人で合ってます、昨日まで敵だった人であってます、妙に馴染んでいるけど。
名前を覆水媛佳。
秀麗な顔に勝ち気そうな雰囲気を漂わせているが、ブラウンの髪は長く伸ばして一本のお下げ、右肩から垂らしている。
黙って柔和な顔でいればご令嬢なのだが、(色々)小さいために年相応に見えない事が多々ある。
更に覆水が黙って柔和な顔などする時は、決まって半径三メートルには立ち入らない方が良い印だ、物凄く怒ってる時の。
立ち入ったならば鉄拳とどこから出したのか分からない小型消火器による目潰しを受けるだろう。
そんな性格もあって穂子もそうだがどこか子供のような印象を受けるのは俺だけではないはずだ、いや別に胸部の膨らみが穂子よりも格下なのが原因とは言わな
言葉にしていなかったはずの俺の眉間に、ダーツが刺さるようにフォークの柄が刺さったので、そこから先は自主規制させていただきます。
俺はまだ大量のフォークに全身貫かれて果てるような結末は迎えたくない、アイアンメイデンはいつの時代も禁止です。
さて、一日前に変化したのはこれだけではない、覆水についていた妖精まで居候しているのだから。
曰く名前を瑞、名前の通り水を司り、先日の戦いでは水を高圧圧縮した球を使い、俺穂子共々散々なアザ打撲内出血をこしらえられた。
髪型が伸ばしっぱなしの感がある上に艶消しのような黒髪。
そのせいか暗い印象があるが暗いのではない、正しくは黒い。
幾度となくバディの覆水に上半身のからかいを仕掛けて完膚なきまでに始末されているのを俺は幾度となく目撃している、この一日の内に。
からかうだけあって流石に瑞の胸部は穂子や覆水と違いなかなかのご発達を
直後頭の両側面を掠りながらナイフがドアに着弾。
頭の両側面、つまりは投げられたナイフが二本。
いつの間にやら穂子と覆水の大惨事ハムカツ戦争は終焉を向かえ、状況を理解し見守っていた親切な家主に対する攻守同盟が締結されていたらしい。
やはり胸部をいちいち説明したのはまずかったのだろうか。
その答えは俺の視点からリビングの二人をご覧頂ければ一目瞭
「彦彦、人間のお肉って成分的には豚とあんまり変わらないらしいね!!」
「因みに哺乳類の肉は旨味成分が他より高いんだって、知ってたかしらキラキラネーム。」
「待て待て俺は今何も言ってなかった、食後の一休みに暖かくリビングを眺めていただけじゃないかお二人!!それとお肉についてなにやら不穏な会話をなさっているが、君達はお肉になんで詳しいんだろうな!!やっぱり鶏肉について調べ」
ここまで言った所で二人して満面の笑みを浮かべてお箸と消火器を向けられました。
遺書、遺書はどこじゃ?
それともダイイングメッセージが良いのか、メッセージなんにしよう、『貧乳』とかなら犯人絞り込めるかな。
「…それは余計な一言。」
助けようとせず淡々とサラダを咀嚼する瑞。
その瑞が食器を一回叩いた瞬間目を光らせた猛獣のラッシュは始まっていた。
リングアウトとタイムアウトを要求します、本当にありがとうございました。
因みに何の関係も無いことだが鶏肉にはバストアップ効果があるとかないとか。
余計な一言の為に武力制裁を行われている俺に
救いの八時のチャイムはまだまだ聞こえない。
≡≡火付け役は誰だ!≡≡