小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
瀬間野信平
瀬間野信平
novelistID. 45975
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

火付け役は誰だ!2

INDEX|15ページ/16ページ|

次のページ前のページ
 


「……何か嫌な感じがしたぞ今。」
「またあのバカ達がキッチン爆発させたんじゃないの?」
「あり得そうだから伏線を張らないでくれ。」

ようやく長い初夏の陽が落ちる頃、俺の隣にはなんのことはない覆水がいた。
昼に言った食費の件について覚えていたらしく買い物に律儀についてくるのが目的だったらしい。

「それよりレジを知らないってどんな時代の生まれなんだよお前……」
「うるさいわね凡人庶民、成金は成金らしくお取り寄せよお取り寄せ、判子しか押さないの。」
「とんだ箱入り暴力娘め……」
「グダグダ言わずに荷物を持って歩く!!それとも何?もしかしてチャッカマンはか弱い箱入り娘に荷物を持たせるの?」
「消火器構えながら言うなそれ脅迫。」
「脅迫も懇願も紙一重よ、四文字変えたら一緒じゃない。」
「跡形もねぇじゃねぇか!!掛詞も何も元の言葉を粉々にしといてなんだその自慢げな顔。」
「ビッグバン覆水のなせる技よ。」
「はいはい爆発爆発、跡形も残らなくていいよお嬢様。」

「うるさいわね爆破犯。」
「そっちもだ箱入り娘。」

回りから微笑ましいカップルに見えない程度にはギスギスしたこの会話、ただ覆水と妖精の計三人(特に胸が貧弱な二人)がよく食べるから、寮に着く頃にはいくらか機嫌も直るだろう。

「ところでだが、今日の夜って大丈夫なのか?」
「お巡りさんこっちです。」
「冷静に通報するな、誰か来る来ないって話だ。」

覆水との初戦がわずか1日前。
通常ならばゆっくり休みたいところだ、というか寝かせてください俺をベッドで。
ただバトルロワイヤルと言うだけあって誰が、いつ仕掛けてくるかは分からないと穂子は言っていた。
ならば警戒して損はないし、夜襲は是非ともご遠慮していただきたいのだが、勝利条件が拠点の破壊またはバディ、妖精どちらかの戦闘不能だから夜襲が有利なのは間違いない。
いつ仕掛けられてもおかしくはない。
とまで考えて覆水に聞いたのだが覆水は興味を無さげにあくびを一つ。

「……私もう負けてるから関係無いじゃない。」
「そうでした、でも土足で夜襲はお前も怖いだろ。」
「だってー私の部屋はー誰かさんに爆破されちゃったしー今いるの私の家じゃないから土足も何も関係無いしー」
「分かった、分かったから協力してくれ。」

正直な話今の体力では走り回れそうにない、覆水と瑞が協力してくれれば相手に対してもあの圧縮水で大分距離を取る事が出来る。

「まぁ、良いけど、タダじゃないでしょ?」
「……条件を言え、どんなことでも聞き流してやろう。」
「耳に水詰めますわよ。」
「申し訳ありませんでした。」
「冗談はともかく、じゃああれね、テストでの勝負の罰ゲームはこっちで決めさせてもらうわ。」
「それで良いのか?というかテストで勝負って何だっ……あ。」
「前にちゃんと言ったわよね、次のテストで勝負だって。」
「記憶に御座いません。」
「メモリー物理的に整理される前に全力で思い出しなさい。」

思い出した思い出した、この前校舎裏に呼び出されてテストで勝負宣言されましたされました。
まぁ少なくとも今の俺に拒否権は無いので受け入れるしかないのだが、この時に俺はこう思っていた。
覆水にしては条件が甘いような、と。
まぁその心配は後にしよう、今は覆水の協力が大切だ。

「……分かった、乗った。だが協力するからにはちゃんと夜の番もしてもらうぞ。」
「え?何言ってるのよ、チャッカマンが起きて、来たら私起こしてよ。」
「待って俺まだ成長期、伸びねばならないんだよ夢の180センチまで!!」
「嫌よこっちも成長期よ!!身長も体型もまだまだ伸び盛りなんだから寝かせなさい!!」
「よし折衷案として今夜は両方寝るでどうだ!!」
「異議無し!!」

協力の意義も無いようだが気にしてはいけない。
重要なのは成長期とホルモンバランスだい。


「それで良いのかね若人?」


突然路地の暗がりから声が掛けられた。
がらがら声だが不思議と耳障りは無い。
警戒の為にチャッカマンに手をかけ覆水もスプレーを出したがそれよりも前にまた声が掛かる。

「警戒は無用無用、ただの老いぼれ占い師だわさ。」

よく路地を見るとちゃんと小さな机にヴェールを被った小さなおばあさんがいた。

「バトルロワイヤルなんか久々に聞いたが今回はこの街でやるんだねぇ。どうだいお二人さん、ちょいとお婆の占い聞いていくかい。」

バトルロワイヤル、確かにこのおばあさんはそう言った。
高校生の妄想に聞き取れるこの単語を聞いて声を掛けてくるならば、このおばあさんはやはり関係者なのだろう。

「おばあさん、すみませんが、お名前を伺っても?」

覆水も同様の事を思ったようで用心して言葉を出した。



「婆の名前を聞くなんてお嬢ちゃんも物好きだねぇ、ただの古くからの占い師、色々な名前で呼ばれたけどもここで知られる名ならば、そうだね」



「神託のデルフィ、とでも名乗れば通じるかね。」





六番、幕引き


作品名:火付け役は誰だ!2 作家名:瀬間野信平