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Da.sh Ⅲ

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 扁平な石と尖った石を選り分けて置いていた場所まで走って来ると、明良は扁平な石を手に取り、追いかけてきた連中の腕のあたりを狙って、投げた。
「人に向けては、決して飛ばしてはならん。怪我では済まないこともある」
 父の声が一瞬聞こえた気がしたが、自分の身を守るためなんだ、と自身を納得させた。
 しかし、暗闇で、輪郭が分かる程度で。しかも相手には、考える力がある。今まで相手にしていた動物とは違う、ということを理解するのにそれほど時間を要しなかった。
 石を投げてくる、ということが分かると、彼らにはそれを避けることが出来る。避けて逃げるのではない。すぐに、攻撃に移ってくることが出来るのである。またその行為は、彼らの怒りを増幅させるのに十分な効果があった。

 大声で罵倒しながら迫ってくると、バットを振り抜く体勢に持って来た。
 明良は、今までに感じたことのない恐怖に、おののいた。初めて、怖い、と思った。やられる、と思った瞬間、手当たりしだいに石を投げつけた。だが、すべてやり過ごされた。無闇矢鱈に投げた石には、威力も何もない。それでも当たったら痛くはあり、軽く怪我をする。
「テメェー、フザケテンジャッ、ネエーッ」

 明良は、真っ先に振り下ろされてきた棒を持つ腕に、しがみついた。
「離せ、コンニャロウ」と振りほどこうとする腕から、背中に回り込むと、腰に両腕で抱きついて必死になって離さない。
 後ろにいた連中に背中を打たれた。体じゅうにしびれが走る。堪(こら)えに堪えた。膝裏を打たれてくず折れても、必死になって、腰に巻き付けた腕を放さなかった。
 誰が誰なのか、皆目分からない。だがそこにいる連中は皆、敵なのだ。
 誰かが、足をつかんだ。砂礫の上をうつぶせで引きずられる。ヘルメットをかぶったままの頭に、蹴りを入れる者がいた。背中を踏みつけてくる者がいる。反吐を吐いた。
「きったねぇなぁ、川ン中、投げ込んじまえッ」
と言う声が聞こえる。
 力はすでに尽き、その声も、遠くから聞こえてくるようだ。意識が朦朧として、痛みを感じなくなってきている。
――春樹、圭吾、慎也・・・。
作品名:Da.sh Ⅲ 作家名:健忘真実