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Da.sh Ⅲ

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 多摩川の河川敷。
 龍神会の総長が指定した場所である。そして時間は夕方6時、と。
 晩秋のこの時間帯はすでに暗く、人影は全くなくなる。
 明良たちは、指定された時間よりも1時間早く到着し、闘いの準備を整えた。
 10分前。
 彼らは土手下にマシンを置き、総長を先頭に、金魚のフンのようにぞろぞろと連なってやってきた。それぞれ手には、なにかをぶら提げている。角棒やバットである。ヌンチャクを、得意げに振り回している者がいる。バイクに乗っている時には背中に回していたヘルメットを被っていた。
 近くにある清掃工場の電灯が、おぼろげではあるが、彼らの存在を浮かび上がらせている。
 冷えた砂礫に腰を下ろしていた明良たちは立ち上がると、ヘルメットをかぶり顎紐をキュッと締めた。彼らが武器を持参してきたことは、族、という種族をよく理解していなかった明良たちの誤算であったが、明良は動じなかった。
 草叢を挟んで、5メートルの距離がある。
 4人対29人。

「逃げずによく来た、褒めてやるぜ」と、ポケットに両手を突っ込んで肩を怒らしている、総長。
「よぅ、今ならまだ、許してやってもいいんだぜ」
 肩にバットを担いだ総長の腰巾着が、前に出て来て言った。
「嫌だ。思い描いていたグループと違ったんだ。俺たちとは、世界が違ったんだ」
 明良はゆっくりと、落ち着いた口調で言った。
「生言ってんじゃァ、ネエ!」
 総長の言葉尻を合図に、彼らは扇状に広がった。
 同時に明良達4人は、彼らに背中を見せて走った。
 彼らは、「逃げんなァ」、「待て!」と、全速力で追いかけて来た。
 いや、追いかけることは出来なかった。先頭に立った者が草叢で足を取られて転んだのである。4人が先頭に立っていた。それに続くものが、転んだ者の上にかぶさって、転んだ。その難を逃れて追いかけてくる者も、足を取られて転んでいる。

「クッソォーッ」
 彼らの眉間に青筋が立った。おそらく。一段と低く、うなるような声を発したことから、明良たちは感じ取った。
 草を結んで、いくつもいくつも罠を作っておいたのである。そのアーチに足を突っ込んで、足をすくわれたのだ。そんなにうまくいくとは思っていなかった。
 振り返って立ち止まった明良は、あいつら、案外、馬鹿だ、と思った。
作品名:Da.sh Ⅲ 作家名:健忘真実