Da.sh Ⅲ
「じいさん、頼みがあるんだが」
陽気な日差しの中、芝の上に段ボールを敷き新聞紙を上掛けにしてごろ寝をしていた。声の主を確かめるために上体をひねると、視線がその男の顔に釘付けとなった。
――浜崎! いや、彼はとっくに死んでいる。いよいよワシを、迎えに来たのか。
元の姿勢に戻って、目を閉じ黙っていた。すると、再び声が降ってきた。
「じいさん、力を貸してくれないか」
――もしかして、明良なのか? だとすれば、こんな姿を晒すわけにゃいかねぇ。
男はすぐそばに寄って来てしゃがむと、囁くようにして言った。
「パスポートが欲しい、ふたり分。東南アジア人がいい。じいさんに頼めば手に入ると、聞いたんだ」
「悪事でもぉ、働いているのか?」
男の捨て置けない言葉に堪らずつい、背中を見せたまま尋ねた。
「悪事、かぁ。そう言えなくも、ないな。人助けのつもりだけど」
「明良よぅ」
と上体を起こして見せた、もじゃもじゃの白髪頭で、日に焼けしわの深くなっている顔を見て、明良はのけぞって眼をみはった。
「先、せぃ?」
「ふんっ、よせやい、もうじじぃだ」
「いったい・・・」