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Da.sh Ⅲ

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 昼飯も食べずに、川原の短く刈り取られている青々とした草の上に寝転がり、いつの間にか寝入ってしまっていた。
「よう、明良」
 腰を下ろす気配に顔を向け、それから上体を起こした。曲げた膝を抱え、顔をうずめた。
「かぁちゃんが心配してっぞ。学校からぁ、戻ってこないって、電話があったとさ。捜し回ってたかぁちゃんとぉ、ばったり出くわしてな」
 正源寺満政は川面を見つめ、しばらくしてからのんびりした口調で続けた。
「ここはぁ静かだな、あったけぇし、昼寝にはぁもってこいだ・・・ほれ」
 目の前に突き出されたあんパンを躊躇しながらも受け取ると、明良は乱暴に袋を破いてかぶりついた。正源寺は、明良の食べる姿を、目を細めて黙って見ているだけだった。
「さあぁて、仕事に戻らねぇとな」
 明良は口いっぱいに頬張りながら黙って、何言うでもなかった正源寺の後ろ姿を見送った。


 正源寺は父の親友であり、高校時代に同じクラブ、柔道部で共に汗を流したという。父が元気な頃、明良が小学2年生の時だが、この地の警察署に配属となった正源寺が、警察の道場で柔道を指導するということを知った父に連れられて、道場に通い始めた。
 父が癌で逝ったのは3年前、小学5年生の時である。その時に、柔道は辞めてしまった。正源寺は時々家にやって来ては、「好きな時にぃ、道場に来ればよいからぁ」と、顔をほころばせて言っていた。
「気にかけていただいて、ありがとうございます」
と、礼を述べるのはいつも母で、明良はいつも黙ったままうなずくだけであった。道場に通っていた頃には、挨拶が出来ないと、よく叱られたものだが。


 明良はその後、働きづめで、顔を合わせると時に恥ずかしさをにじませている母は許せても、いつも流し眼で母を窺っている祖父を見るにつけ、ますます虫唾が走り、祖父を許すことができなかった。
「かぁさん、この家出て、どこか遠くで暮らそうよ」
と言ってはみたものの、生活に窮することは明良にも見て取れる。
「じじぃ、かぁさんに手ェ、出すなよっ」
「ガキが、男と女のことに口をはさむんじゃねぇっ。君子さんの体はなぁ、ワシを欲しておるんじゃ、ホンホンホッ」
「お義父(とう)さん、何もそんなこと・・・」
 目をとがらせて祖父を睨み据えた。
「身内でも、じじぃのこと、許さねえからな!」
作品名:Da.sh Ⅲ 作家名:健忘真実