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Da.sh Ⅲ

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 仕事を終えた明良は、いつもコンビニで弁当を買って帰る。
 弁当が入った袋を提げて、ハンバーガーショップの前を通りがかった時、そこには数台の大型バイクが止められていた。自然と目が行く。どんなバイクが、どこから来て街中を走っているのかには、非常に興味が湧くことである。
 川崎ナンバーと品川ナンバーに挟まれている、大宮ナンバーは、その中では異質であった。3か月前のことを思い出した。ライトが壊れて修理してくれた奴が乗っていたバイクに似ている。

――苗字は忘れたが、名前は確か、俊介、と言った。家は埼玉だったよな。とすれば、大宮ナンバーだったかもしれない。もしそうなら、この機会に礼をしておこう。

 店のドアを開けて、店内を見渡した。
 黒いバイクスーツに身を包んでヘルメットをテーブルに置き、ゲーム機らしきものに夢中になりながら、ポテトの袋の上で手をさまよわせている者がひとりいるだけで、それらしき人、形は他になかった。首をひねりながら立ち去りかけたが、民営の大きな駐車場になっている裏手をも覗いてみることにした。

 ピンクのデザインが入ったモトクロス用スーツを着込んだ男の胸倉をつかんで、黒っぽい服装をした男が腕を水平に引き、作った拳を今にも繰り出そうとしているかのような姿が捉えられた。同じような出で立ちの者三人が、周囲を取り囲んでいる。
 明良は、作業着の上に羽織っているジャンパーのポケットをまさぐった。取り出した石をギュッと握りしめた後、その男の腕を狙って、水平に振り抜いた。気に入った石を見つけると、お守り代わりにポケットに入れて持ち歩いているのだ。
 男は「イッ」と、肘を押さえ込んで振り向いた。そこにいた全員が明良を見た。
「なんだよぅ、テメェは」
「俊、無事か?・・・そいつのダチだ。その手を離せよ」
 モトクロス用スーツを身にまとった男が俊介だという確信はなかったが、難儀している様子は見てとれた。ゆっくりと近づいて行くと、体格が良くて一番強そうな別の男が、「お前は引っ込んでろよ、ナアッ」と言うが早いか、明良に向かって殴りこんできた。明良はサッと身をかわしその腕をつかむと、背中側にひねり上げた。体躯が大きい明良には、膂力がある。また柔道の技を体が覚えていたことに、内心では驚いていた。
「イッテェーッ」という悲鳴に、俊介を殴ろうとしていた男は明良を睨み据えて、「オイ、行くぞッ」と顎を振って、駐車場を横切って出ていった。
 ひねり上げた手を放すと、取り残されていたふたりもポケットから手を抜き出し、共にあわててそれに続いた。
 礼を言おうとした俊介を制して、「あいつらが出て行くまで、お前のバイクのそばにいた方が、いいんじゃないのか」と言うがいなや、ふたりは駆け出した。
作品名:Da.sh Ⅲ 作家名:健忘真実