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Da.sh Ⅲ

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 学校の文化祭の日早々に帰宅すると、お台場に向かってバイクを飛ばした。理由などない。ただ行ってみたかっただけである。お台場のテレビ局の前の広場ってどんな感じなのか、雰囲気を知りたかったのかもしれない。何もないはずのそこで開かれるフリースタイルモトクロスは見てみたかったが、塾のある日で行けないからだ。
――こんな所に、ジャンプ台と着地台を設置するのか。
 バイクを駐車場に入れて、人込みの中を歩き回った。

 レインボーブリッジを通過しての帰路、海の上を渡り来る潮風を受けながら、正面にそびえる高層ビル群を目指して走る爽快感。山の中での閉鎖空間とは逆の、解放感に酔い痴れた。
 埼玉には、海はない。海を見る機会などめったにない。潮と排気ガスの混ざった臭いを嗅ぎながら、海岸沿いの都道を南下した。
 
 休憩がてら、地図で現在地と帰路を確認するために、ハンバーガーショップに立ち寄った。バイクの駐車エリアには既に数台のバイクが止まっており、その間にスペースを見つけて止めた。
 ハンバーガーを食べ休憩を終えて外に出ると、バイクエリアには、四人の男たちが駄弁っていた。俊介のバイクの両脇に置かれていたバイクそれぞれに、またがって座っている。俊介が自分のバイクにキーを差し込んだ時、右側にいた男が声をかけてきた。
「それ、おまえのか?」
「はい」と、振り返ることなく答えた。
 左側の男が続ける。
「おい、ここ、見てみろよ」
 その男が指し示したところを見た。マフラーである。少し凹みが見られた。
「へこんでるだろう。ここに止めるまでは普通だったんだ。お前がそこに入ってくるまではな」
 俊介は、嫌な予感がした。早く立ち去りたかったが、バイクの後方にはふたりが立ちふさがっている。明らかに、言いがかりである。
「オレの愛するレイコちゃんに、傷がついたんだ。1万円で勘弁してやるよ」
「持っていません」
 猫なで声で話していた声が、突如として尖った。
「オウ、財布を出しな、確認してやるよ。そこまで、付き合ってくれ」
作品名:Da.sh Ⅲ 作家名:健忘真実