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Da.sh Ⅲ

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 峠からの下り道。
 右膝を路面に付けるようにしてカーブに入りエンジンの回転数を上げた途端、タイヤがスリップして体が肩から投げ出され、バイクは数メートル横滑りして山の斜面を軽くこすった。
「いってェーッ」と言いながらよろけるようにして立ち上がり、スリップした当たりをみると、トラックが落として行ったらしい土の塊が、そこここに撒き散らかしてあった。
 チェッ、と舌打ちしながら関節の具合を確かめる。
 バイクスーツのプロテクターが体を打ち身から守ってくれたが、右手親指の付け根をひねったらしく、痛い。後で腫れてくるかもしれない。指を動かし、グローブの上からさすった。足のほうは大丈夫だったが、体全体に軽い痛みがある。
 軽く体を動かし屈伸した後屈んで、バイクのグリップを握って気合を入れ、足の力を利用して車体を起こした。ブレーキレバーを開閉しながら、腰でバランスを取り支えて、道路が幾分広くなっている待避所まで押した。
 ブレーキに異常はない。エンジンにも問題はなさそうだがただ、ライトがつかなくなっている。途方に暮れてしまった。暗がりの中で、バイクの運転などしていられない。家に立ち寄ることはあきらめたが、バイクを置いたまま歩いて帰るか? いや、それよりも押して帰る方がいいだろう。とにかく国道まで出れば、明かりがある。どうにかなるに違いない。
作品名:Da.sh Ⅲ 作家名:健忘真実