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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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Wish プロローグ2

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「ふにゅにゅぅぅ~………え?あ、別に用なんてないよ。ただ、ハルちゃんと一緒に帰ろうと思っただけだよ~」

「それなら別に、急いで来ないでもよくないか」

「でも、私、朝、日直でハルちゃんと一緒に登校できなかったし。だから、帰りは絶対一緒に帰ろうと思ってたの~えへへ♪」

全国の幼馴染属性たちを一瞬で虜にしてしまうかのような微笑みを俺に向けてくる冬姫。
…なんていうかまぁ、健気な。

「そうか、じゃ、帰えるぞ」

「あぁ~ちょっと~待ってよぉ!ハルちゃん~」

冬姫は、慌てて俺のところまで駆け寄ってきて、俺たちは校門まで歩き始めた。






「しかし、ホントお前って人気あるのな」

俺たちが一緒に歩いていると、男子学生の視線の注目の的になっていた。
それと同時に、嫉妬の視線やこそこそと噂話をする者まで出始めた。
…まぁいつものことだが。

「え?そうなの?私、人気なんだ~知らなかったよ~♪わーい、わーい」

とお気楽モードではしゃぐ者が、約1名…。
まぁ確かに、幼馴染の俺の目から見ても可愛い部類に入るだろう。
俺は、昔からずっと一緒だったからそんな気はないんだがな。
まぁ、可愛いのはホントだけどな。

「俺には理解できん。この『天然少女』のどこがいいのやら」

「あれぇ~ハルちゃんってばやきもち?」

「ち、違うって!何でお前にやきもちなんぞ妬かねばならんのだ」

「ふにゅぅ……そんな全力で否定しなくてもいいじゃない~。むぅ!むぅ!」

「いや、そうでもしないと俺が生きていけなくなりそうなんでな」

「何よぉ~それぇ…。意味不明だよ~」

こいつは気づいてないようだな、この妬ましい視線の数々を…。


(くぅ~あの野郎、羨ましすぎるぜ)

(あのふたりって、ホントに『ただの』幼馴染なのか)

(らしいが…実際どうだろうな、怪しいぜ)


あの…聞こえてるんだけど…。

「まぁ、知らなくていいことも世の中にあるってことだ」

「ふ~ん、そうなんだ。ねぇ、ハルちゃん、この後、用事とかあるかな?」

「ん?何だよ、いきなり」

「あのさ…ハルちゃん…もし、よかったら…」

と冬姫が何かを言いかけた、まさに、その時だった。

「雛月先輩~冬姫先輩~待ってくださいです~!」

小鳥の囀りのような可愛らしい声で後ろから小柄の女の子がパタパタと走ってくる。

「こんにちはです~先輩……きゃあ!」

女の子は、急に何もないトコでコテンと転んでいた。

「ま…まどかちゃん!大丈夫~?」

冬姫は、心配してまどかちゃんのトコに近づいていた。

「うぅ…痛いです~…」

膝をスリスリしながら、ゆっくりと立ち上がるまどかちゃん。

「まどかちゃん、大丈夫か?」

「は…いです。こ…これぐらい…ぜ…全然…平気なのです…」

いや、涙を目に溜めながら言われても、説得力がないぞ。…っていうか泣いてるし。
まどかちゃん、変なことで、すぐやせ我慢するんだからな。

「ほら、膝見せてみ?」

「え…?ぅぅ…うー…はいです…」

まどかちゃんは、少し恥ずかしそうにしていたが、渋々、膝を見せてくれた。
ん~傷は大したことはないな。まぁこれなら、バンソーコーでも張っておけばいいかな。
俺は、確か何枚かバンソーコーがあると思われる俺の鞄の中を探り始めた。

「確か……おっ、あった、あった」

「うわぁ~ハルちゃん、用意がいいね~。ハルちゃんの鞄の中、何も入っていないのかと思ってたのに」

冬姫…さりげなくひどいこと言うのな…。それぐらい俺でも持ってるぞ。
そんな冬姫への弁解の言葉を考えながら、まどかちゃんの膝にバンソーコーを張ってやった。

「これでよし…と。まぁ、帰ったら一応消毒しておくんだぞ」

「はいです…あの…ありがとうございました。雛月先輩」

まどかちゃんは、頬を赤くして、はにかんだ表情で俺を見つめていた。

この小柄で、人懐っこそうな女の子は秋里まどか。俺の後輩だ。
といっても、俺はまどかちゃんと知り合ってまだそう日は経ってない。
俺は、冬姫経由でちょうど機会があって知り合ったというだけなのだ。
冬姫とは、中等部の時に同じ部活に所属していたらしくその時から仲がいいらしい。
まどかちゃんは、小柄で弱々しく、少しドジなトコがあり、何だかほっておけないオーラがある、そんな女の子だ。

でも、まどかちゃんは、素直で人一倍努力家で、先輩である俺が見習わさせられる程だ。
それだけじゃないぞッ!今やまどかちゃんは、俺たちの中ではマスコット的存在なのだ。
そう、まどかちゃんは、俺たちのオアシス…いや…『癒し』だッ!!
まどかちゃんは俺の目の保養になってくれ、俺の心を癒してくれてるからな。

おっと脱線したな。それに今そんな場合じゃないな。

「で、どうしたんだ?そんなに急いで。俺たちに用事か何かか?」

「いえ。ちょうど帰ろうと思っていた時に先輩方が見えましたので、一緒に帰ろうかと思いまして」

嬉しいこと言ってくれるじゃないか。
今、俺の中のまどかちゃんの株も好感度も共に急上昇中だぜ。

「そうなんだ。じゃ、まどかちゃんも一緒に帰ろうよ」

「はいです」





「そういや、まどかちゃんも来週から俺たちと同じ学園生だな」

ふと思い出したので俺はまどかちゃんに微笑みながら話していた。

「あ~そういえば~そうだったね。おめでとう~」

「ありがとうございます。これで、先輩たちと一緒ですね」

「ハハハ。そうだな。この春斗先輩がちゃんと面倒を見てやるから安心しろ」

「あはは。よろしくお願いしますね、先輩」

まどかちゃんは、ぺこりと頭を下げて、嬉しそうに笑っていた。

「あっ、それとですね、あの…冬姫先輩にお願いがあるのですが…」

「私に?何かな?」

「あの…その…ちょっと…ここでは…」

俺の方を見つめながら、まどかちゃんは、話しづらそうにしていた。
…何だ?俺に聞かれるのがマズイのか?

「わかった、じゃ、こっちで話そ~」

冬姫とまどかちゃんは、俺から少し離れたトコで何やら話していた。

「えぇ~!」

何だ?冬姫のヤツ、いきなり大声出して…って?
…ん?冬姫の顔が真っ赤だぞ…。
そして、話が終わったのか、俺のトコにぼや~んとした顔で戻ってきた。

「なぁ、何、話してたんだ?」

「あの…それは…」

まどかちゃんは、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

「ハ…ハ…ハルちゃんのエッチッ!!」

「なぜ、そうなるッ!!」

冬姫にエッチ呼ばわりされることしたか?いいや、してないはずだ。
大丈夫だ、問題ない。
ただ、まどかちゃんに何を話してたのか聞いただけだ……よな?
もしかして無意識に俺はとんでもないことを……って、なわけあるか。

「冬姫さん、どういうことかな?」

「ふにゅ…うぅぅ…と…とにかく…女の子にはいろいろあるの!!」

冬姫までもが、顔をゆでだこみたいに真っ赤にしてうつむいてしまった。

「わ…わかった。とりあえず、この話はこれでおしまいにしよう」

俺が諦めたとわかると、二人ともホッとした表情で見合っていた。

(一体、何なんだ?……凄く気になるぞ)
作品名:Wish プロローグ2 作家名:秋月かのん