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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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Wish プロローグ2

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「じゃ、私はここで失礼します。雛月先輩、冬姫先輩、さようならです」

「うん、また明日ね~。ばいばい~」

「おう、気をつけて帰れよ~」

「はいです~。ありがとうございます」

まどかちゃんは、ペコリとお辞儀して俺たちと別れて家路につくのだった。

「しかしホント、まどかちゃんは、礼儀正しいよな。明日香にも見習わしてやりたいぜ」

「えぇ?何で?明日香ちゃんすごくしっかりしてるよ~」

「いやまぁ、しっかりしてるのは認めるがな、さすがにアレはやめて欲しいぜ」

「??ねぇねぇ、アレって何ぃ?」

しまった。
抜かったぜ…俺としたことがなんという失言を。

「ん?あぁ…それは…まぁいいじゃないか。そんな細かいことは…」

「えぇ~、別に細かいことじゃないし、それに気になるよ~。ねぇ、教えてよ~」

珍しく目をキラキラと輝かせ、興味津々な心むき出しの冬姫。
そんな冬姫を見て俺は、困った挙句こんな声を洩らしていた。

「お…」

「お~??」

「お…男の子にはいろいろあるんだよ」

「何よ~それ~意味不明だよ」

「いやちょっと待てッ!さっきお前が俺と全く同じこと言ったんじゃねーかよ!忘れたとは言わさんぞ」

「あぁ、そういえばそうだったね~。すっかり忘れてたよ」

…おいおい頼むぜ。しっかりしてるんだか抜けてるのか、まったく。

「まぁ、教えてやらんこともないが…」

「ホント!?」

「ただし、条件がある」

「条件?……何かな?」

何やら不安げな表情を浮かべる冬姫。
かと思うと、なぜかぽっと顔が赤らめる冬姫。
って、なんで赤くなる!?

俺の疑問を察したのか冬姫が、

「ハ…ハルちゃん…。こんなトコじゃ…私…恥ずかしいよ~ふにゅ…」

「ってなんちゅー想像してるんだお前はッ!?いくら俺でもそんな条件は出さん」

「ふぇ?違うの?…何だハルちゃんのことだからそう言うのかと思ったよ」

一体、こいつの頭の中では俺はどう認識されてるんだ?
というか冬姫のヤツ、間違った想像とはいえ俺に何かされることに嫌がってなかったな。
恥ずかしいと言っただけで嫌とは言わなかった。

もしかして…ホントにその条件をしても…。
って、何考えてんだ俺は…。

「じゃあ何だろう~??」

「まぁ大したことはないんだが、さっき、まどかちゃんと話してたことを教えてくれ。そしたら俺のことも教えてやる。どうだ?交換条件だ?」

「えぇ~ダメだよダメダメ!ぜ~ったいダメ~!それは教えられないよ」

顔を真っ赤にし、手をブンブンと振るわせ全力で拒否する冬姫。
ちょっと面白い。…ついでに可愛い。

「そんな堅いこと言うなよ~。俺と冬姫の仲じゃないか~」

「あぁ!そうだ~私お使い頼まれてたんだった~。あはは、忘れてたよ~。あぁ、もう家に着いちゃったね~。じゃね~ハルちゃん」

冬姫は、いかにもわざとらしい演技をしながら自分の家に走り去っていく。

(逃げたな…)

ホントわかりやすい奴だな。まぁ、そのおかげで俺も事なきを得たんだがな。
あんなのがあいつ…いや、みんなに知れたら、またからかわれちまうからな。
俺はそんなのはごめんだからな。

まぁ、そんなことは今はもういいや。さっきからいい具合に疲労感と眠気が…。
今日は朝早かったし、朝からハードな通学だったし、今日はいろいろ疲れたぜ。
帰ったら軽く仮眠でもとらなきゃな。と言いつつ結局本眠だろうけど。
そして、俺は回れ右して自分の家に帰っていくのだった。





「うぅ…うっう…ぐす…うぅ」

泣き声が聞こえる……。
一人の女の子が公園のベンチで泣いていた。
周りの子供たちは楽しそうに遊んでいるのに、女の子の周りには誰もいない。
ただ、泣き声がしないよう声を押し殺して泣いているだけであった。
女の子は今にも溢れそうな涙をぐっと堪えて、肩で泣いているのだった。
その女の子の泣いている姿はなんかつらかった……。

……何でそんな寂しそうな顔で…、何で泣いているのだろう?

「どうしたんだ?何で泣いるんだよ?」

「え……?」

不意に声が聞こえたので、女の子は、一瞬、泣き止んだ。
女の子が、ふと顔を上げるとそこには一人の少年の姿があった。

「なぁ、どうしたんだ?」

「……誰?」

「ん、ただ、君が泣いていたから気になってさ。んで、どうしたんだ?具合でも悪いのか??まさか、誰かにいじめられたのか??そんだったらこの俺がやっつけてやる、任せろ」

「うぅ…うっ。ううん、違うの。そうじゃなくて…え、えっと、えっとね…。パパとママもお仕事でどっか遠いトコ行くことになっちゃって…ぐす…私…独りぼっちに…なっちゃったの。寂しいよぉ~うぇえええん」

女の子の瞳から再び涙が零れ落ちた。
そして、堪えきれなくなった女の子は、堰を切ったように泣き出してしまった。
とめどなく頬を伝う涙……。
次から次へと涙が溢れ出る。それはまるで、水道の蛇口を捻って流れ出す水のようであった。

「…そっか。そりゃ寂しいな。お母さんもお父さんもいなくなっちまうなんてさ。ってことは、君以外に家には誰もいないの??近くにそれか友達とかさ」

「えぅ…うぅ…家にはお手伝いさんと私……ぐす……しかいないよ。それに……ぐす……私には…お友達なんか…いないの。うぅう…」

「そうなんだ」

「うぅう…えぅっ…ぐすっ…寂しいよぉ…うぇへぇぇえんんん」

女の子は、今にも寂しさに押し潰されそうで、その華奢な体は今にも壊れてしまいそうだった。だから俺は、この娘を守ってあげたかった……。

「えぅっ…ぐす……。ふぇ…?」

少年は、女の子を頭をやさしく撫でていた。

「大丈夫……君は、独りぼっちじゃないさ。寂しい時、つらい時…、俺が一緒にいてやるからさ。約束する。だから、大丈夫…寂しくないだろ??」

「ぐすっ……ほ…ほんとう?」

「あぁ。だって俺と君はもう友達、いや仲間なんだからさ」

「お友達……。私とお友達になってくれるの?ほんとう?」

「ほんとうだ。だから、もう寂しくないだろ?」

「う…うん!寂しくない。えへへ」

「あはは。やっと笑ったな」

「………!」

「あはは。君、笑ってる方がいいぜ。笑った顔可愛いし、辛い顔ばっかじゃ辛くなるだけだしな。んなら笑っていこうぜ!!」

「あ…ありがとう…。えへへ☆」

女の子は、ホッとしたのか笑みを浮かべ、それと同時に頬を赤らめていた。

「ねぇ、お兄ちゃんのなまえは何ていうの?」

「俺か??俺は、春斗。雛月春斗っていうんだ」



次回へ続く
作品名:Wish プロローグ2 作家名:秋月かのん