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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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Wish プロローグ2

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まるで湧き上がる衝動を抑えきれないように。
いつの間にかクラス中を巻き込むかのように皆が拍手とともに、かえでコールをしていた。(主に男子)

「みんなありがとうッ!!ホントにありがとッ!!!」

みんなの声に応え、手を挙げる。

「私のこの勇姿、みんなも覚えていてほしい。でも、私だけじゃない。ここにいる戦士たちにだって、見えない剣があるんだ。想っていれば感じ合うことができれば誰だって、強く大きくなれるんだって(性的な意味で☆)」

皆、かえでを、立ち上がった戦士の勇姿を送り出すように、敬礼する。
勇者は光に包まれ、そして…。
って、物語序盤から気合入れすぎじゃね??
演出さんと照明さん頑張りすぎじゃね??
ホントお疲れ、アザーッス!!

まぁ、最後の部分がなければカッコよかったんだが、その下ネタで台無しだ。

「つーこって、俺はまぁ今回はパスってことで。大人しく家で昼寝することにするよ」

「そっか。後で春斗にもやらせてあげるから、楽しみに待っててよね☆」

「あぁ、期待しないで待ってるよ」

「ん~じゃ、またね~☆」

と、まぁこんなことがあったわけだ。
そんなわけで俺は、寂しく一人で帰ることになったのだ。
べ…別にホントに寂しいわけじゃないぞ。
回想終わり。長かったなぁ。

「さて、帰えるとしますか」

と、俺が帰ろうとすると

「おーい!ハルちゃん~待ってよ~」

後ろから思わず浮き上がってしまいそうなほわ~んな声がし、足音が近づいてくる。

「はぁ…はぁ…やっと…追いついたぁ~」

「よぉー!………えーと…悪い、お前、誰だっけ?」

「はぅ~!どうしよ~ハルちゃんったらとうとうボケちゃって私のこと忘れちゃったよ~。あぅぅ~このままじゃ若くして介護が必要に……あいたぁ!」

俺は勝手な妄想で勘違いした冬姫にでこピンをくらわしてやった。

「ホント、お前には冗談が通じないな、冬姫。このままほっといたら本当にお前に介護されるところだったぜ」

「え?え?冗談だったの?はぁ~よかったよ~ハルちゃんが無事で。でも、ハルちゃん~いつもそうやって私をからかうのやめてよ~」

「ハハハ。だってよ、見事に引っかかってくれるから面白くてさ」

「むぅ~。いいもん、いつかハルちゃんを見返してやるんだから」

冬姫は、頬をぷくっと膨らませてプンプンと怒っていた。
……ふふ、可愛い奴め。っと、そういえば『あのこと』を忘れるところだったぜ。

「あ!そうだ、そうだった。冬姫~朝はよくも俺を騙しやがったなぁ~ッ!」

「え、えぇ~!何のことぉ?わ、私…ハルちゃんに何か言ったかな?」

「ふっふっ…忘れたとは言わさないぜ~。あれは、忘れもしない早朝の悲劇だったんだからな」

「早朝の悲劇??何それ~。あ…もしかして、ハルちゃん、あんなに私が注意してたのに二度寝しちゃったんでしょ~。もうホント、せっかく私が起こしてあげたのにぃ~」

「違うわッ!!二度寝はしてない、ぜってーしてないから、マジで!?」

「ホントにぃ~??うそとかじゃないよね~??」

冬姫は、俺の顔を覗きこんできた。…って、冬姫、顔近いって!
下手をするとキスしてしまいそうになる距離だぞ。…って、何考えてるんだ俺。

「そうじゃなくて、登校日のことだよ」

「登校日??……ねぇねぇ、そのことがどうしたの~??」

冬姫は、何のことやらと言わんばかりにキョトンとしていた。

「な…なんとッ!まだ、しらばっくれるつもりかッ!冬姫よ。しょーがねぇ、俺がじきじきに教えてやろうじゃないか」

「え…!?あ…お願いします??」

冬姫は、何やら少し困惑した表情で俺を見つめている。

「いいか、お前は俺に『今日は何の日』かって聞いたよな?そこで俺は、お前に試されたわけだ。そして、お前は、最初から俺が登校日などということは忘れていると確信していたのだ」

「え…わ…私、そんなこと考えてなかったよぉ~」

「まぁ、待て、まだ続きがある。さらに、何日かだけか聞けばいいものをお前は、俺のブロックワードを使ってしまったのだッ!」

「な…何かな、そのブロックワードって…?」

冬姫は、聞きなれない単語なのか、首を傾げている。

「ふっふっふ…それはな…『忘れてる』って単語だぁぁッッ!!」

「え?」

俺の言葉に冬姫は、ぽかーんとした顔で俺を見ていた。
な…何だ?その『それがどうしたの?』的な表情は。……結構可愛いぞ。

「いいか、お前は、俺が挑発にのりやすい性格とわかっていてそう聞いた。つまり確信犯ってわけだ。そして、俺は、そのワナにハマり、まんまと挑発にのせられてしまった」

「へぇ~ハルちゃんって負けず嫌いなんだねぇ~。そう言われてみると、昔から勝負事とかは何かと本気だったよねぇ」

「そうだ!そのおかげで俺は…俺は…うぅ」

「う~ん。でも、それは、私のせいじゃなくて、ただ、ハルちゃんが勘違いしただけだと思うな」

「………」

「違う…かな?」

た…確かに、よく考えてみるとそんな気がしないでもない。
俺が勝手に春休みだと勘違いしただけであって、冬姫は何も言ってないしな。
冬姫のやつ…普段はポケ~っとしてんのに、こういう時は的を射たことを言いやがるぜ。
しかしッ!ここで負けを認めては、ディフェンディングチャンピオンの名が泣くぜ。
そうさ、俺に負けは許されないッ!よし、こうなったらこれしかないだろう。

冬姫を攻略するには、俺が一番よく知っているッ!!……いざッッ!!

「??ハルちゃん、どうしたのかな?」

「いや、何でもないぞ。それよか、…冬姫、…よくやったッ!!」

がしッと冬姫の両肩を掴み、感激に満ちた表情で大いに褒めてやった。

「え…え?ハルちゃん、どうしたの?急に」

突然のことに冬姫は、あわあわと困惑した表情で俺を見る。

「実はな、さっき、お前に俺が試されていたと言ってたんだが、あれは嘘だ。ホントは、お前を試していたんだ」

「ふぇ?わ…私を?ど…どういうこと?」

「それはな、お前はあまりにも純粋かつ騙されやすい性格なんだ!自分でもわかるだろ~あれだけ俺に毎日やられてるんだからな。いやでもわかる」

「い…言われてみれば、そんな気が…」

「そうだろ。んでだ、それが危ないと気づいた俺は、考えたわけだ。このままでは冬姫がとんでもないことになりかねんッ!どうにかせねばッ!……っと」

「ハルちゃん、私のこと…そこまで考えてくれていたんだね…。あ…ありがとう…わ…私、嬉しいよ…ふにゅぅ」

よし!かかった~!ここまでは作戦通りだ。
あと、これでフィニッシュだぁぁッッ!

「…冬姫、よく俺のワナにハマらず頑張ったな、えらいぞッ!」

俺は、冬姫の頭をわしわしと撫でてやった。

「あ…ぅ…ハ…ハルちゃん…ふにゅ……ふにゅぅぅ~」

冬姫は、とても幸せそうな顔で頭を撫でられていた。なんか猫みたいだな。
う~ん、何かこんな冬姫を見ていると、今やっていたことに俺の良心が痛むぜ…
よし、これからも俺が、冬姫が誤った道へと進まないよう、ちゃんと教育してやろう。

「で、そんなに急いで、俺に何か用があるんじゃないのか?」
作品名:Wish プロローグ2 作家名:秋月かのん