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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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Wish プロローグ2

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「俺は…俺は、守れなかったのか、国をッ!!!俺の甘さがッ…国を滅ぼした…ッ!!!くっそおおおおおおぉおおッ!!!」

机に拳を叩きつけ、うめいていた。
途端に照明??が落ち、辺りが真っ暗になった。
なんだ、何が起こったんだ。

そう思った瞬間、従姉さんと凍弥だけが浮かび上がった。

「大丈夫、トーくん」

聖母のような優しげな瞳で微笑みかけ、凍弥の肩に手を置く。

「悪夢は終わったわ。ほら、見て光が…。まるで私達の未来を優しく照らしてくれているようだわ」

不意に、生徒会室の絵が吹き飛び、真っ暗闇になったかと思えば、従姉さんと凍弥2人を輝かしい光で包まれ、辺りに幸せを強調する鳩が羽音をたてながら飛び立ち、まるでこれからの2人の未来を暗示し、明日への扉を開くかのような絵というか構図になっていた。

「ん、そうだな。俺たちの戦いはここからだ!!いくぞッ!!!」

従姉の手を取り、光が導き出した道を走りだす凍弥と従姉。
互いに『あははは』と笑いながら微笑ましい光景を見せている途中なのだが、これより重大な発表があるので、まぁ聞いてくれ。

それはな、この時点で完全に俺は蚊帳の外なんだぜ??
そんなことはお構いなしに、2人はドヤ顔で俺を見つめていた。
何だよ、そのやりきってやったぜ、キラ☆みたいな清々しい顔はッ!!

「…まぁ、引き際も大事ってことさね。春くん何だかひいてるし」

「…そういうことだな。今、俺達のやってきた事の意図もわかってないようだしな。…残念だ」

肩を落とし、嘆息する2人。

おや??おやおやおや??
え、何??俺のせいなの??
何か俺のせいみたいになってるの??
この2人がおかしいんですよね??
途中から話の意味もわからないのは、俺がおかしいんじゃないですよね??

あれ??あれあれあれ??
何で2人とも蔑むような目で俺を見るの??
哀れむような目で見るの??
ゴミを見る目で見ちゃってんの??

「あ、あの??」

空気に耐え切れず、声をかけると、噴出すかのように笑う従姉。

「ぷぷ…っ!!ぷははははははっ!!やっぱりダメだったね、トーくん」

「ふっ…。そのようだな。取り敢えずプランαを実行し、同情をひいて引き込もうと思ったが、春斗には効かなかったか。さすが、ヒナタンだ」

「うえッ!?何なんだ、一体お前ら何を言ってるんだッ!?」

話についていけないまま、加速し続けていく。

「どうする、まだ続けるのか??」

「ううん、今日はここまでにしようよ。それに、その作戦には下準備が必要だからね~」

「ふむ…それもそうですね」

何だ?さっきからまたこの二人の間で、俺の理解不能な語が飛び交い、何やら密談している。
…何だかいやな予感がしてきたぞ。
これ以上、俺の思考を掻き乱さないでくれ、頼むから。

「あの、お二人とも、さっきから何の話をしてるのかな??水を差すようで悪いんですが、低脳な俺じゃこれ以上ついていけないんだけど」

「テヘ♪♪(てへぺろ)」

「いや、お茶目な感じにごまかしてもですね。ぶっちゃけ余計に怪しいから」

「ううん、なんでもないよ!全然!気にしちゃダメだよ~。あはは」

いや、だからそんな慌てるとかえって怪しいですよって…。
姉さん嘘とかごまかしとか本当できないもんな。

「スマンな、生徒会内秘の極秘任務なんでな。関係者以外には口外できんのだ」

まぁ、聞いても理解できそうもなさそうだけどな…。

「でもまぁ、どうしても聞きたいなら生徒会に入ることだ。歓迎するぞ~」

「いや、遠慮しておく」

聞くだけ時間の無駄だからな。

「あらら~、それは残念。お前には特殊任務を任せようと思っていたのになぁ」

冗談じゃない!そんな怪しげな任務になんかに俺の人生を潰されてたまるか。

「じゃ、姉さん、俺はそろそろ帰ります」

身の危機感を感じた俺は、とっととこの部屋を退散するが如くドアまで緊急避難し、姉さんに帰ることを告げていた。

「うん。またね、春くん。ばいばい~」

姉さんに挨拶を済ませた俺は、生徒会室を後にした。




-ざわざわ

「ん?何だ…あれは?」

教室に戻ってくると、教室前にたくさんの女子が群がっていた。

「あれは…中等部の娘か?」

あきらかに制服が違うからなぁ…。
高等部はセーラー服で、中等部はブレザー、ちなみに初等部は自由だ。
…ということは、奴が原因だな。

「茜せんぱーい!お久しぶりです~。お元気でしたか?」

「茜先輩がいない春休みは、ホント、ショートケーキにいちごがないというくらい、灰色の毎日でしたよ~」

やはり、茜だったか…。相変わらず大人気だな…女子に!……羨ましいぞ。

「おーっほほほ♪♪そりゃ何ていったってお姉ちゃんですものね!!私達にはなくてはならない、それはそれは素晴らしきお人なんですのよ!!というわけで…寂しかったですわ、茜お姉ちゃーん!!!」

その中でも一層、目をキラキラと輝かせ、茜を褒めちぎり思いきり抱きしめて茜の胸に顔をうずめてくっついてる女の子がいた。

彼女は宮代燐祢。茜の後輩で2年だ。
茜を大層慕っており、憧れを抱いているようで身なりも健康的な茜スタイルだ。
茜によれば彼女はハーフのようで、パッと見、まるで人形のように整いすぎた容姿と外見に驚かされるが話してみればなんてことない人懐っこい普通の女の子だったそうだ。
まぁ、人懐っこすぎて今ではこの有様なのだがな。
瞳は澄んだ青色で、髪は金髪で長く両サイドで結っている。

暁らのいう属性でいうと、何ていったっけ??
あぁ、ツーサイドアップってやつだ。
小柄で、どことなくちょこまか小動物のように動き回ってそうな感じが見て受け取られる。

「ハハハ…」

いつものことだが茜はどうしたもんかと困っているようだった。それもそうだよな、慕われてるんだからむげに追い返すことも出来ないし、かと言ってシカトするわけにもいかないしな。…贅沢な悩みだと思うけどな。

すると、困っている茜を尻目に教室にいた暁がニカニカしながらやってきた。

「後輩の女子諸君、茜は、少々お困りのようだ。そこで、俺から提案あるから聞いてくれ~」

あの馬鹿!また余計なことを…。学習機能のないヤツだなホント。

「この、俺が、茜に代わって君たちの気持ちを受け取ろうではないか!さぁ、みんな、俺に…ぐはっ…あだっ…いでっ!」

「お姉ちゃんに近づくなっ!!このゴミ虫っ!!!バカがうつるからあっちにいけっ!!!私の至福のひとときを邪魔しないでくださるかしらっ!?あと、さりげなく触らないでくださいます??」

さっきまで穏やかだった彼女だったが暁の登場であからさまに不機嫌な態度をとり、ギリっと鋭く睨みつける。

「燐祢ちゃんの言う通りです!!暁先輩は邪魔しないでください!」

「そうです!私達の茜先輩との大切な時間を邪魔する人は、いくら先輩でも容赦しません!」

「つれないねぇ、そんなこと言わずに…」

「ブチッ!!言ってもわからん、バカがここに…粛清ッ!!!」

もの凄い蹴りがいやな鈍い音を響かせながら、暁を捉えた。
それは見事急所に入った。

「ゴボァッ!!」

さらに容赦のない急所攻撃。
作品名:Wish プロローグ2 作家名:秋月かのん