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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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Wish プロローグ

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「まぁ、お兄ちゃんのことだから、明日からはまた元通りだと思うけどね♪」

「そんなことはねーよ。…まぁ、今はゆっくりと朝飯を食べるとしようぜ」

俺は、明日香の作った朝飯をいつもより味わって食べていた。
っていうか冗談なしで美味いんだ、これが。いや、美味いッ!明日香様々だな。
妹が作った朝飯に感動していると、そのシェフ明日香が、

「えへへ♪ところで、お兄ちゃん、今日は何の日でしょ~?」

意味深な笑みで妙なことを聞いてきやがった。
って言ってもさっき明日香と同じ質問をどっかの誰かさんにされたんだがな。
……今日が何の日を聞くのが最近の流行なのか?…ってそんなわけないか。

「ん?冬姫もそんなこと言ってたな。今日は、土曜でまだ春休みだろ」

「そう~そう。今日は、土曜で春休み~。もぐもぐ…」

かえでも俺と同じ考えのようだ。そりゃそうだよな。
『今日はいつ?』って聞かれたら、まず思いつくのは日付だよな。そんで曜日がその後にくる。まぁ個人差で前後しそうではあるがそう変わらん。『キョウってナニ??』とかフジヤマ・サムライ・スキヤキ・テンプラなんちゃらしか知らん間違った知識観光外人であるまいし。

ここは、土曜と答えるしかなかろう。それ以外に何があるってんだ。
凡人かつ一般人たる少なくとも俺はそんな考えを持ち合わしちゃいないのさ。
だから、今日が土曜で春休みの真っ最中としか答えようがない。

「もう、何言ってるのっ!!お兄ちゃんにかえちゃん!!緊張感ないなぁー!!またユキちゃんに怒られるよ??」

おかしなことに、明日香はやれやれと言わんばかりに呆れた顔した。
俺たちの予想外な返答が明日香の口から返ってきたので、首を傾げずにはいられない。
…あれ??どういうこったい。

「な…何だ、今日なんか重要な日だったのか??」

しかし、今日なんかあったか?
明日香の誕生日か?いや、それは5月だ。
なら一体何なんだ?

家族サービスの日か?ボランティア活動の日か?
…絶対違うな。
っていうかそんなこと一回もしたことないしな。
明日香のわがままとかおねだりとか約束とかなら聞かざるを得なかったけどな。

つーか、何でこんな日常的会話でここまで難題にまで発展してんだ??
これは罠だ。俺が目が覚めているか、寝ぼけてはないかを試す明日香の試練なのだ。
そうだ、そうに違いない。もっとシンプルに答えを導き出すんだ。
いや、待てよ。さっき明日香は何て言った??

『そういえば、ユキちゃん、先に学園に行ったよ。何か用事があるとか言ってたよ』

『学園に行った』??何で冬姫が学園に行く必要があるんだ??
というかそもそも今日は何日なんだ?
確か…4月5日だったよな…。

(……あ!)

ちょっと待て、待つんだ、俺。
これはいかん、いかんぞ。分かってしまった、けどアホすぎて言えねぇ。
どうしよ、あまりのアホさ加減にかえでの事は何も言えんが、言わせてくれ。
このバカやろうッ!!!
さっきまでの無意味な考察乙すぎて禿しくワロタわッ!!!
でもバカだから仕方ない。ならもう笑うしかないじゃないかッ!!!

つーことで取り敢えず、冬姫ごめん。

「はいはーい!はーい!!あたし、わかったよ!!」

「……言ってみろ」

まぁ、期待はしてないけどな。
一応聞いてやろう。

「今日は、待ちに待った『そらおと』に『ハ●ヒ』のマンガの発売日だぁ☆もちのろんろん限定版予約済みだーい☆」

「違ああああぁああぁぁうッ!!そこの重大性じゃねぇってよッ!!!」

「大丈夫だって☆心配しなくてもあのアダルトメーカーの最新作の濡れる女教師の…」

「そっちの心配じゃねえええぇえぇええッ!!!ちっとは期待に答えやがれッ!!」

「それには及ばぬよ、春斗くん☆心配しなくても他にもちゃーんとエロティックな成人18禁ゲームも予約してあるってばよ☆」

(*-ω-)b ←こんな顔しながら俺の肩に手をのせ、目を輝かせるかえで。

「そういう期待じゃねぇッ!!!この期に及んで聞いた俺がバカでしたーッ!!!」

そんなことだったらどんなにいいことか…。
いや、よくないんだけど。しかし、現実は厳しい。
まぁ、この社会性ゼロかつ能天気なかえでにはそんなことはわからんだろうな。
…おっと、今はそんな場合じゃねぇな。

俺はそんな世間の荒波の厳しさを感じながらも口にしなけてはならないだろうその一言を明日香にゆっくりと口を開き、大きく嘆息しつつ訊ねてみた。

「今日は登校日ってことだろ?」

たらたらと大粒の冷や汗を垂らしながら、俺はクールに気持ちを落ち着かせ訊ねる。

「えへ、正解っ♪♪ってことで、急いだ方がいいと思うな♪♪お兄ちゃん、かえちゃん」

明日香は、俺とかえでに、微笑ましい笑顔を向けた。

(………)

「うわぁぁああああッ!!分かっちゃいたが、のんきに朝飯食ってる場合じゃないじゃねーか!!」

何が土曜だよ、何が春休みだ!何で今日が登校日だって今まで気づかなかった!
何を早起きして感慨に浸って優雅に朝飯食ってんだよ。

「ハハハハ☆春斗くんどうしたんだい??そんな慌てたような顔をして??せっかくの凛々しい顔が台無しダゾ☆ほーぅら何もかも忘れて僕と食事をしようではないか☆」

いかにもなハンサムボーイをわざとらしく演じるかえで。
ニカっと涼しく微笑む笑顔が無性にムカつく。

「ダメだ、こいつ…早くなんとかしないと…」

ってか今日が何日かをなぜ今まで忘れてたんだ。
俺の不甲斐なさに失望するばかりだぜ。
しかも、もう8時じゃねぇかッ!!
いつもより遅くなっちまったじゃないか!!

どうする、俺??
どうするの、俺??

……って考えるのはあとだ!!
考える前に動け!!そうさ、行動あるのみ!!いざ行かん!!!
今は、取り敢えず急ごう!それしかない。

「もぐもぐ…」

「明日香、じゃ、俺たち、先に行くぞ!戸締り頼むな」

「はーい☆お兄ちゃんたちも車に気をつけるんだよ~♪」

「おう、んじゃ、いってくる……って、お前はいつまで優雅に食ってるんだ!!行くぞ」

緊張感のカケラも減ったくれもないヤツだな。
いや、さすがだよ。人間追い詰められると他に考えが浮かばないんだろうな。
特にこいつ、かえではな。そうだ、そうに違いない。
まぁ、かえでには常識なんぞ通用せんし、人としての尊厳すらないだろうさ。
一言で言えば、残念だということだ。
そうじゃなかったらこいつがこんなこと言い出さないはずだからな。

「ちょっと待って、もう一杯おかわりするからさ」

これツッコむとこか??
まぁ、今はそんな暇も時間もないから後回しにするとしよう。

「そんな暇はねぇよッ!!立て、そしてとっとと行くぞ」

俺はのん気におかわりを要請していたかえでをよっこらせと強引に抱えると…って軽いな。

ホントこいつの身体はどうなってんだ?
このなりして大食い、どこに入ってんだろうなホント。激しく疑問だ。
誰か暇のヤツがいたら解析してほしいものだ。
おっと、そんな場合じゃないな。急がねぇと。
作品名:Wish プロローグ 作家名:秋月かのん