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ゾディアック 7

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観音の足元には 参道の石段にあったのと同じ筒状の車輪が付いていた。
私はそれをカラカラ回しながら「 闇に降りる前の通過儀礼だね 」と言った。

「 見て、観音様の後ろにも小さな観音様が付いてるよ。1、2、3・・ 33体もあるよ! 」ナアナが数えながら言った。
白い観音像は 木漏れ日に光りながら 私達に優しく微笑みかけていた。
後ろの軒に下がる五色の鈴の付いたリボンが 風に揺れチリンチリン・・と美しい音色を奏でた。

私は この観音が好きだ・・ と思った。
目を閉じると、瞼の奥に眩い光がキラキラ揺らめくのを感じた。

「 見ようとしてはいけない・・
顕在はひとつの魔法 目に映るものは幻。どんなに姿を変えても、大切なものがそこに隠されている 」
ナアナが言ったの?目を開けると、そこには誰も居らず ナアナはもう先に降りて戒壇の入り口に入ろうとしていた。

現象界の天使アリエルは ナアナを媒体として現れる。
風が木を揺らすように・・
その存在は 感じる事でしか確かめられない。
意識が捕まえた!と思っても その瞬間に掻き消えてしまう・・

サワサワサ・・ 高音の優しい 風の囁きが・・

「 ここは意識の闇の世界。外に閉じ込められた五感
状態の次元が真実 頭は使ってるだけ・・ 頭は使ってるだけ・・
観音とは・・ 振動を音と認識する究極のリアリティ・・ 」
断片的にアリエルの声が 私の中で呼霊のように響いていた。


バッ!!!デジャブの映像が消えた。
私はいきなり我に返り、よろめいた。心臓がバクバクしていた
「 モーリー見えた!?アリエルの言葉が・・ 女神島の 」モーリーに声をかけ揺すってみたが
モーリーの身体はピクリとも動かず、死んだように眠っていた。

細い清らかな肢体が、サンダルの芳香を匂い立たせ オイルに光っていた。
部屋はシーンと静まり返っていた

ふと闇の戒壇の入り口に立っていた白い観音を思い出した。
「 三十三観音・・ ナアナの数秘も33だ。モーリーも・・?
あれは、意識の闇を導くインスパイアーされた心の象徴 」

「 見ようとしてはいけない・・
顕在はひとつの魔法 目に映るものは幻。どんなに姿を変えても、大切なものがそこに隠されている 」
アリエルの囁きが耳に残っていた。



 ~ 52 ~

沈黙を守ったまま 横たわるモーリーの細い肢体を眺めていると
彼の、修道士の前世が見えて来た。
普段見ている明るく騒がしいモーリーとは まるで違う
別人のような 静けさを持った男だった。

「 背中が表なんだ。 背中がその人の真実を語る
人は起きてる時、前を向いて 仮装した自分を演じて生きている。
何かを忘れるため・・ 」

私はそっと、モーリーのうなじから肩甲骨にかけて触れた。
緩くウェーブのかかった髪が揺れ
再び、幻視が現れた。
 

暗いひんやりとした地下室の一角で、数人の修道士が祈りながら泣いていた。
彼らに取り囲まれ、蝋燭の灯りの中 黙々と作業をする1人の修道士がいた。
石のブロックを並べながら積み上げ、外側で泣いている修道士達に 外から漆喰をするように指示をしていた。
自分が中からブロックを積み上げ、壁を作った所までを塗り固めていくように
彼は、自らの墓を内側から築いていたのだ。

ヴァイオレットローブ、 彼には何の迷いも無い。
私の思考に対する呼びかけにも 答えず、ただ黙々と目的を完遂していた。

「 何を・・守るために? 」
「 ・・・・・ 」

最後のブロックをはめ込む前、彼は外の修道士達に 目で合図をすると軽く頷いた
修道士達の嗚咽は大きくなり、彼の名前を皆 口ぐちに叫んだ。
最後のブロックが内側からはめ込まれると、
泣き叫ぶ修道士達によって外側から塗り固められ壁は完成した。
そして、その地下室自体も 地上から土砂で埋められ封印された。

彼は自らを永遠に葬り去った。大切な何か諸共に

「 何を守ろうとしていたのか・・
何と戦っていたのか・・ 」

暗い闇の中で 消えかけた蝋燭の灯りにキラッと光る刃が見えた。
彼はその短刀を、自分の胸に深く突き刺した。
そして永遠に歴史から封印した

「 うーん、気持ちよかったぁ・・ 寝ちゃってましたー 」モーリーが起き上がった。
我に返った私の目からは、涙が毀れ落ちた。
魂が泣いていた

「 モーリー、自分で埋めちゃったんだね。何で?
愛と希望に満ちて生きた 理想の世界を作る夢が叶ったんじゃなかったの? 」私は聞いた
「 へ?・・・分かんないですけどぉ、さっき不思議な夢を見てました。
丘の上に立って、下の街の様子が変わって行くのを見下ろしてました 」

「 その丘に眠っている・・ シーシアの丘 」私は思った。
セラピールームを出ると、時間が来たので私は更衣室に入った。
ミクが座り込んで おやつを食べていた。

「 お疲れさま、今日は結構ヒマだったね。お蔭でオイルのやりっこが出来たけど 」着替えながらミクに話しかけた。
「うう・・ 」呻き声を出しながらミクが苦しそうに屈んでいた。
「 ?・・あんた菓子でもつまらせたの? 」聞きながらミクの肩を起こそうとした時

眩しいフラッシュバックが起こった

ハアハアハア・・・ミクは喘ぎながら、私の手を振り払い 後ずさりして苦しい息の下で言った。
「 大丈夫・・ 前にもあった。しばらくしたら納まるから・・
パイプオルガンが鳴ると、アイツが出てくるの・・ アイツが・・ 」ハアハアハア・・・
ミクは苦しそうに喘いだ。

制服を脱いだ私の身体から サンダルの深い芳香が部屋に立ち込めていた
ミクは私を避けるように、部屋の端まで後退し 後ろを向いて蹲った。

「 どんな死に方だって、何千回とやってるさ 」私の口から ヤツが言った。
鏡に映った私の瞳は赤銅色から深翠色に変わっていった

「 おまえの闇は何処にある? 」

ヒイイ・・ 頭を抱え丸くなったミクの背中に フォログラムが現れた。

穴に放り込まれた 沢山の肌色の山が見え
それは数えきれない人間の死骸・・ それぞれ切断された子供の死体だった。
壮絶な数の断末魔の痛みが私を襲った・・

私は吐きそうになった・・ 口から血が落ちた
ヤツは続けて言った。
「 人は何万回と人を殺している。マインドを映すな、魂を映せ 」

肌色の山は掻き消え、美しい城が現れた。
シャロン城だ・・ ラムカの前世がいた城

ザワザワ・・・ ザワザワ・・
ナゼ ラムカノシロガ・・ミクニアラワレタ・・????
私の概念は混乱して騒ぎ始めた。

可愛い金髪の利発そうな少女が 城の一室で何か習っていた。
教えている女性は青いドレスを着た
二十代後半の美しいブルネットの髪をした貴婦人だった。
細いうなじに緩くウェーブのかかった髪が揺れた

これは・・見たことがある!デジャブが起こった
先程ロミロミをやった・・ モーリーだ!!
少女の教師をしていた女性は、この時代のモーリーだった。
今の姿に面影のある 細い身体、 クールで静かな雰囲気は修道士の前世の面影だった。

男性で生きた失意から、次は女に生まれ変わったのか・・
作品名:ゾディアック 7 作家名:sakura