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らふまにのふ

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ヴォカリーズ



“みるく”と再会したのは、教会の鐘の音を聞いてから一年が経った頃だった。メールのやりとりでは物足りなくなってきているのは確かだった。「会いたいね」という文面を何度かやりとりしていたが、私はなかなか決心がつかなかった。
“みるく”が、家のバラがきれいに咲いているよ。というので、観に行きたいなと返事をして、私が“みるく”の家を訪問することが決まった。

“みるく”と出会った最初の頃、子どもがいるの……というので、小学生くらいかなと思っていたのだが、高校生だと聞いてびっくりした。だって、どう見ても40歳には見えない。その一人息子も大学生になって大学近くにアパートを借りて出て行ったと聞いた。だから、一人で寂しいのという言葉は私には嬉しい言葉だった。

“みるく”が田舎だよという東京郊外の駅前に立って私は辺りを見渡す。都心ほど混雑はしていないもののそこそこ活気があって、再開発されたのであろう駅周辺の建物群は個性が無いが綺麗だったし、やはり何処にもある有名チェーン店が入っていた。約束の時間になったのを確認して周りを見渡した。“みるく”はいない。私は少しためらったあと電話をする。
「あ、今何時、あれぇ、もうこんな時間。待っててね今行くから」
少し緊張したままここに来た私と違って、“みるく”は緊張感のない話しぶりだった。
私は苦笑いしながら“みるく”を待った。そのせいか私の緊張も解けてきている。

はぐれて見失うほど人混みはないなだが、“みるく”は絶妙の距離感で、私の手を引きながら商店街を歩いている。
「ここのケーキ美味しいんだ。あ、ケーキ食べる?」
“みるく”は、私の返事を待たず、私には選び出すのが一苦労の多種の中から選び始めた。
「あ、俺出すよ」
気がついてそう言ってはみたものの、もう“みるく”は財布を開いている。

「いいのいいの、じゃあ、これ持ってね」
“みるく”が差し出すケーキの箱が入ったビニール袋を私が持った。
「はい、何があってもこれは護ります」
「何、それぇオーバーな」
“みるく”が笑った。
「ははは、たとえば何かに躓いて転んでも、このケーキだだけは護ります。顔が血だらけになっても」
“みるく”が笑いながら私の腕につかまった。


作品名:らふまにのふ 作家名:伊達梁川