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らふまにのふ

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妻との思い出も、楽しいことだたったと感じながら思い出すことができるようになった。
あのうら若き妻の姿を……

        *       *        *

仲の悪い両親と住んでいるという澪。私の勤める小さな会社の後輩だ。澪とは自然に話ができ、すぐにつきあうことになった。

「もうここに住み着いちゃおかなぁ。あんな家に帰りたくない」
「おお、いいねえ」
「わたし本気よ」
「料理とかもするわけ?」
僕は小さな流しとガスコンロ1つのキッチンと呼ぶには狭い場所を見ながら言った。
「わたし、料理得意よ」
なぜか急に食べたくなったものがあった。
「おでんも出来る?」
「ははは、あんなの料理っていえるかなあ。簡単よ」
僕は嬉しくなって、もう立ち上がりかけていた。
「じゃあ食器が足りないなあ」
澪も立ち上がって、嬉しそうに言った。
「よおし、おでん作るぞお!」

駅前の商店街で、必要なものを買った。二人で相談しながら選んでいる時、店のおばちゃんが、澪のことを「お姉ちゃん」と言う。それは若い女性という意味の「お姉ちゃん」とは違うニュアンスだった。僕たちは姉弟だと思われたのだろうか。店を出てから「どうして私がお姉ちゃんなのよ、五つも年が下なのに」澪が半分あきれて半分怒っていた。
「お姉ちゃん、おなかすいたあ」
僕がふざけて言うと、
「はいはい、おやつにしましょうね」
澪は、いつ目をつけていたのか、すぐに鯛焼き屋に向かって歩き出した。
歩きながら鯛焼きを食べる。僕も普段しないことなので新鮮に感じたし、鯛焼きは美味しかった。

「ああ、いいなあ。毎日こうして二人でいたい」
「親というものを頭に入れないと簡単だけどね」
「あら、わたしの頭にはないわ」
「なら、もう進行形だ」

少し歩いたあと、澪が身体を縮めるような仕草をする。
「上着を着てこなかったから寒い」
澪が私を見上げていうので、僕は上着を脱いで澪に着せてあげた。
「いいの? 寒くない?」
「鯛焼きであたたまったし、澪より余計着ている」



まるでコートのようだったけど
僕のシャツを着た君が
ニコニコの顔をして
隣を歩いている

花屋の店先で立ち止まった君は
フリージアの花を手にとって
眼を細めて匂いを嗅ぐ
そして眼で訴える
僕から君へ
あげるよ

僕は
寒い筈なのに
ぽかぽかしていて
なぜか父親になったような
そんな気もして苦笑いしていた
西陽が二人の影を長く映していたあの日

作品名:らふまにのふ 作家名:伊達梁川