エヴァーラスティング
「す、すいませんでした」
その後、晴斗は結衣の付き添いで下着売り場へ来たことを伝え、少しはセラの怒りを和らげることに成功したのだった。
次の夜に花火をする約束をし解散となった。
もちろん、明日の花火は夏目も参加することにしてやった。
次の日の放課後、晴斗は屋上にいた。太陽が沈んで行くのをただじっと見つめていた。すると、ドアのほうから足音が聞こえた。
「ハール。なにしてんの?」
その足音の持ち主はセラだった。セラは晴斗の隣へ立ち晴斗の眺めている景色をみた。
「綺麗だねー」
「ああ。こうしていると、心が落ち着くっていうか、気持ちいいんだよ。」
「そうだねぇ。ぼくもハルと一緒にいると心が落ち着くよ」
「ふふっ。いきなりどうしたんだ?」
セラの言葉に晴斗は照れ隠しをするように笑った。
しかし、セラはそのまま言葉を続けた。
「ぼくは、またハルと会えてすっごく嬉しい」
「ね、ねぇ•••ハル。あのね•••ぼくは••••••」
その時だった!地面が強く揺れた。
「「「ドオオオォォォン」」」
そして爆発音。
学院あちこちから緊急のブザー、生徒の悲鳴がきこえてきた。
「はやく逃げなさい。はやくっ」
教師が生徒を避難させるべく声を張り上げて誘導している。それに従い避難を始める生徒達。
「なっ。何がおきてるんだ•••」
突然の出来事に晴斗は身動きができないでいたが、セラは唇を噛み怒りの表情をしていた。「(こんなところに••••••)」
「ハルっ。早くこの学院から離れて!」
セラは、爆発音のした方向へと向かい始めた。晴斗は、状況を理解することができなかった。そして、セラのする行動の意図をも。
「おい。セラ!どこに行くんだよ」
正気を取り戻した晴斗は、爆発音のする元へと向かうセラを呼び止めた。しかし、セラは
「いいからはやくいって!ぼくはすぐ逃げるから」
セラの初めて見る真剣な顔に晴斗は、頷いて学院の外へと目指した。
「(ハル。君とはもうお別れだ。———ありがとう——)」
セラは晴斗の背中を見つめていた。そして、決心したように、爆発音の元へかけて行った。
———20分前——
「ここだな」
黒い服を身に纏った2人は建物に足を踏み入れた。異彩を放つ2人は、一目見ただけで普通の人間ではないことが分かった。そして、そのもの達に恐怖感を覚えないものはいないだろうという程凄まじいもだった。
「な、なんだ。君たちは」
1人の警備員が2人を止めようと足を踏み出したその時。
「天災より出でし鋼の刀、破せし魂を持って千•••
黒服の纏う2人の片方が何かを呟き始めると、2人の周りに紅く染まった文字列が出現したのだ。それはまたたくまに
広がり2人を包んだ。
「———悪しき心に邪をもって滅びゆかん」
次の瞬間2人を包んでいた文字列が消え、姿を現したのは大剣と太刀を持つ2人だった。その刃物からは、紅い靄が途切れることなく漏れている。
「なっ!」
それは現世には存在しないとされている、魔術と呼ばれるべき存在。人間を超越させるもの。それが、今この地に現れたのだった。
何が起きたのかが分かり得ない警備員は気がつくと地面に倒れていた。自分の下半身がそのまま立っているのを見た。そして命が絶えた。
「行くぞっ。彼奴を殺す」
「他の奴らは?」
「邪魔な奴は———殺せ——」
そして、2人は桜聖学院に向かったのであった。
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「ここにまでくるなんて•••」
セラは爆発を起す者たちを探していた。
「くっ。」
いきなりの爆発にセラの体は横へ飛んだ。とっさにかばい、致命傷まではいかないが、出血が多く見られる。
「おっ!いたいた。」
黒服を纏う2人はセラを見つけるなりニヤニヤしている。
獲物を見つけたような狼の目をしていた。セラは、2人を見るなり歯ぎしりをした。
「貴様ら。なぜここに」
睨みつけるような鋭い目で2人を見ている。
「そんな、怖い顔するなって。まぁ、ここに来たのはお前を殺すためだ。『双銃の雷光』をなぁ」
2人は武器を手にセラに突っ込んできた。紅い靄を纏う大剣、太刀を手に。
セラは2人を上手く躱したが、2人の持つ武器に驚きを隠せないでいた。
「なっ、なぜ貴様らがそれを」
そう。2人が持っているのは普通の刀などではない。人の心の負の感情を具現化した存在。負の感情が強ければ強いほどその威力は強力になる。しかし、それは極一部の人間。いや、本当の絶望、憎しみを知る者が境地に立たされる時に使役できるものである。故に、それは公になっていない。
「驚くのも無理はねぇよなぁ。俺らはそれを強制的に使役させてもらったんだよ」
「あの方になぁ」
2人の言葉にセラは耳を疑った。『あの方』とは一体。そして、武器を強制的に使役させることが可能なのかと。だが、その疑念は、吹っ飛んだのだった。2人が攻撃をしかけてきたのだ。
(くっ。これ以上は好きにはさせない)
「悪しきものに神より鉄槌を下す、天を元にし雷光を威とする、邪を撃ち抜き正を示せ」
セラを紅く染まった文字列が包み、セラ双銃を手にしていた。
「面白くなってきたじゃねーか」
黒服の1人はニヤリと笑う。そして、再び1人の少女と黒服を纏う2人のとの戦闘が開始された。セラは向かってくる1人に照射を合わせた。双銃からは敵に向かって光が放たれる。そこで、2人目の斬撃を体をひねって躱した。
2人の視界を奪うために閃光弾を。そして、1人の目、喉、心臓に2発ずつ撃ち込む。そして、2人目を確実に仕留める。はずだった。しかし、セラの体は地面に横たわったのだ。
「なっ。な•••ぜ•••。」
体の自由がきかなく、声を出すことさえままならない。その間も、敵はセラに近づいている。しかし、何をしても体は動かなかった。
「くはっ。動けないだろーな。お前が最初に爆発で受けた傷。そこには、神経を麻痺させる粒子が含まれてたんだよなー」
2人のあざ笑う声がセラの頭を駆け抜ける。
(ぼくは、ここ死ぬのか?)
「結構、強力な神経毒だったんだがなぁ。やっときいてきたか!」
(ハル。君にぼくの気持ち伝えたかったな)
「じっくり、苦しみを味わって死ぬか?まぁ、俺はスーパー優しいからすぐ殺してやるよ」
(ハル。———ごめんね———)
「じゃあなぁ。『双銃の雷光』さまよぉー」
「グサッ」
紅い刀身の太刀はセラの体を深々と貫いた。そして、刀はセラの体から引き抜かれた。血しぶきをかぶりながら。
「うっひ」
「うっひ」
「ひゃっはあああぁぁぁ」
1人の声が響く。そばにいるもう1人は、無表情のままだ。
「んじゃ。帰りますかっ」
セラに背中を向け、歩き出す2人。1人は口笛を拭きながら。もう1人は刀を手入れしながら。
「•••ラ。セラああぁぁ」
2人がその声に気づいた。だんだんとちかくなる声を。
1人の少年が横たわる少女の元へかけて行く。
「セラ!どうしたんだよ」
「おいっ。セラ!」
「なんでっ」
血に染まった体の少女を抱え名前を呼び続けている。
作品名:エヴァーラスティング 作家名:†狐姫†