エヴァーラスティング
「僕は成瀬 せら よろしくお願いします。」
「俺は、知っての通り神灼 晴斗。2人は親友の夏目と結衣だ!」
よろしく。と結衣、夏目はセラに挨拶をする。
「せっかく時間あるし、学院の案内でもするよ」
「ありがと」
そして、晴斗は、セラに学院を案内し始めたのであった。
『桜祭』桜聖学院の1年に1度の大イベントである。
それが、来週行われる。
晴斗の所属するクラスでは喫茶店をすることに決定したのだが...。
「な、なんでだよおおぉぉ」
晴斗の叫び声が、こだまする。
「ハル...。がんばってね」
「結構似合うかもよ。晴斗!」
「晴...斗...。」
セラ、結衣、夏目に励まされる(最後の1人は笑を堪えているだけなのだが...)晴斗。
「どーして、どーして俺が...女装しなきゃいけないんだあああぁぁぁ」
そう、普通の喫茶店では面白くないという案により、男子、女子各1名が、女装、男装をしてもてなすと決定し、くじ引きをやり、見事に晴斗は、先が紅く染まった割り箸を引いてしまったというのだ。
そして、男装をする女性は結衣に決定した。
次の日、晴斗の恐れていた時間がやってきた。女装、男装用の衣服が、届きとうとう、女装Timeがやってきてしまった。クラスの皆の待ち遠しい笑顔によって、衣装部屋へと、見送られたのだった。
今日のために、佐奈ちゃんは、メイクアップアーティストを呼んでいたらしい。何故こういう時だけ力を入れるのだろうかと疑問に思いながらも、嫌々身を任せていた。
「終わりましたよ」
メイクが、終わりとうとう、本題の衣装を確認した。
吹き出してしまった。
「め、め、メイド服ぅぅぅー」
もう少しマシなのを期待していた晴斗だったが、見事にその期待は破られてしまった。
(もう...死にたい。)
本気でそう思ってしまった......
......死ねるのであれば...
羞恥心を捨て、メイド服に、着替え始める晴斗であった。
そして、とうとう来てしまった。クラスのドアの前に...
このドアを開けると地獄が待っているであろう。
だが、羞恥心を捨てた身。男に、2言はない!(女装してるけど...)
自分で心の傷口に、塩を塗った気分であったがまあ気にしない。
いざっ!
ガラガラとドアを開け遠慮気味にクラス内へと入って行く。
「「「「えっ......————」」」」
沈黙が訪れた。
(あっ。皆引いちゃってるよ。俺の学院生活も、ここまでだな..)
「............誰?」
何処からか晴斗に向けて発された言葉。
(誰って...まさか、存在も消されてしまったのか。)
クラスメイトの思わぬリアクションにうなだれる晴斗だったが、次の瞬間
「ハル⁉︎」
「晴斗⁉︎」
「晴斗...なのか」
親友達が反応してくれたではないか。
「お前ら...。」
嬉しさのあまり、涙が出そうになる。
そして、クラスあちこちから、
「えっ⁉︎神灼」
「うそっ!神灼君?」
次々、驚きの声があがった。
「あのさ、似合わないのは分かるけど、その反応俺、傷つくよ」
晴斗は、呆れ気味に皆に反応した。
「だって...。その姿...すごく———綺麗—–」
(んっ?俺の聞き間違いか?今、綺麗って)
「晴斗っ!凄く綺麗。綺麗だよ」
結衣の言葉に心の傷が、少し癒えたきがした。
「うおおぉぉー。神灼!お前すっげえぇぞ」
「きゃー。すっごく可愛い!」
「写真撮らせてー」
と、ものすごく評判がいい感じになっていた。
自分の顔をまだ見ていないので、セラに手鏡を借り鏡を覗くと、そこには...。
自分でも見惚れてしまうような、綺麗な顔が写っていた。
「お、俺の顔が...」
「晴斗...。その...お前、女装すごく似合ってるな。」
夏目が、頬を赤らめて褒めてきたので、気持ちが悪くなり腹に一発拳を食らわせてやった。
そして、その日から晴斗の2つ名は、『女装美人野郎』2つ名と言えるのか疑問だが、そう呼ばれるようになってしまった。
『桜祭』当日は、晴斗のおかげと言っても過言ではないほど、多くの客が晴斗目当てで、来客したことは、言うまでもないだろう。
桜祭が、終わり残るは後夜祭だけとなった。
「ハル!外にみんな集まってるよ。一緒に行こう」
「ああ。」
セラに誘われ、2人で歩き出す。
「今日は、楽しかったね」
「そうだな。久しぶりに、みんなとバカできたしな」
「晴斗の女装姿もまた見れたしね」
へへっと笑うセラを見ると、幼い頃のセラと遊んだ思い出が鮮明に思い出された。
「ハルっ。遅いよー。おいてくよ」
「まってよ。セラが速すぎるんだよ」
「早くしなきゃ。花火始まっちゃうんだよ」
「そんなに急がなくても大丈夫だよ。まだ時間あるよ」
「...やっとついたね。」
ヒュー。ドォン
「やっぱり、ハルと来れてよかったな」
「い、いきなりなんだよ。照れ臭いなー」
「あーあ。こんな幸せな時間が永遠に続けばいいのになー」
「そうだね。永遠に...」
「ハル。ハルっ⁉︎」
「あっ。なに!」
「どーしたのさ。ボーッとしちゃってさ」
「いや。昔の事を思い出してさ。」
「そっか。」
セラもまたハルとの思い出を思い出していた。
「でも、また、ハルと会えてすごく嬉しいな」
「あぁ。俺もすごく嬉しいよ」
「晴斗ー。」
先に外に出ていた、夏目と、結衣が晴斗たちを、待っていた。
「はやくー。」
「始まっちゃうよー」
結衣は飛び跳ねながら晴斗たちを呼んだ。
「セラ!行こう」
「うん」
晴斗達は、結衣達の元へ走って行った。
そして、再び4人の幸せな時間が、ゆっくりすぎていった。夜空には綺麗な花火があがっていた。
「...この、幸せな時間が永遠に続けばいいのにね」
だが、晴斗は、この時、幸せな時間が終わりに向かっていることをまだ知る由もなかった......。
「セラっ! 何処にいるんだ」
燃え上がる炎のなか、晴斗はセラを探していた。
周りには、崩れた瓦礫、燃え続ける机。
そして•••倒れている生徒たち••••••。
倒れている生徒の中には、傷を負って呻く者もいれば、恐怖に怯えている者もいる。
そして、命を失った物も•••。
「くっ•••。 何処にいるんだよ•••」
「セラあああぁぁぁっ」
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「んっ。」
いつもは朝に弱い晴斗だが、鳥のさえずりで目を覚ました。
昨日の事を思い出すと、笑みが漏れてしまう。
後夜祭で、4人で花火を見た後、夜遅くまでバカ話していたこと。途中で結衣が寝てしまい、晴斗が背負って部屋まで送って行ったこと。
つい昨日の事なのだが、懐かしい気がしていた。
「また、来年だな•••」
昨日終わったばかりだが、来年の桜祭が待ち遠しいように感じられた。
(おきるかっ)
やはり朝に慣れていないためか、重い体を起こした。腕を組むような格好で伸びをし、朝食の支度を始めた。
「んっ。」
「おっ夏目。起きたか? 」
いつもは晴斗が起こされる側なので、鼻を高くするように夏目へ朝の一言を言ってやった。
しかし、夏目が体を起こしたのはいものの、心ここに在らずのような顔をしている夏目が、いきなり頬を赤く染めたのだ。
作品名:エヴァーラスティング 作家名:†狐姫†