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ゾディアック 3

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観音とは・・ 振動を音と認識する究極のリアリティ

私の目の前に 次々現れる人達は、アセンデットが使う象だ
その象形を通して 可視的な物質世界を超え
無限に広がるイデアを知る

「 音と図形 」
地の底から響く声がして
ラムカの後ろに白い大きなヒヒが現れた
彼の名は・・ そうだ、トートだ

大いなる神秘を顕現に記す
聖なる諮詢に魂を導く 真実の守護者

月食を見た日から、ちょうど1年が経っていた。
8月28日
私の前に、また新たな扉が開かれていた。



~ 22 ~


「 ラムカは、最近体調が優れないのよね 」
ビスティはラムカのカップにお茶を注ぎながら言った。
「 それで マリオンさんのタッチセラピーを受けたらどうかって勧めて、
今日呼んだんです 」

ラムカの後ろには、漆喰の深い宇宙が渦巻いていた。
その闇は・・黒ではなく赤紫や青紫のようにも見えた・・
中央には ポウ・・と浮かび上がる
幾何学模様の螺旋が
波のようにゆっくりと旋回していた。

「 音と図形・・ 」
白いヒヒは低い声で 何度も繰り返した。

「 トート 」私は思わず声に出た
「 はい?・・マリオンさん? 」ビスティが聞いた。
ラムカは 怪訝そうな顔で私を見ていた。

この象印しに聞く事は 何かヒントが解るかもしれない、私は口を開いた。
「 ラムカさん、ケランスに行かれた事はありますか?
ここでお会いする前・・ 昨日 赤と青の旗と塔が見えたのです。
ここにあるヒエログリフも・・ 」
トートや宇宙が見えた幻視の事は言わなかった。

「 ケランスには行った事はありませんが・・ 私の亡くなった父が ケランスが好きで
店の名前を ケランスにある城の名前を取って シャロンと名付けました 」ラムカは言った。

「 ラムカのお父さんは パン屋さんをされてたんですよ。そういえば、
シャロンには塔の絵が飾ってあったわ・・ あれはケランスの塔よね。
面白そう!一体何が見えたんですか?マリオンさん 」ビスティが目を輝かせて聞いた。

私は躊躇した・・ ここでカヨの前世や天使の話をした所で 頭がオカシイと思われるだけだ・・
ビスティは続けた
「 マリオンさん、さっきトートて言ってなかった?トートって 古代エジプトの智慧の神の名よね。
確かヒエログリフもトートが作ったはず・・ マリオンさん、ヒエログリフの事も言ってたわね 」
ビスティが 書棚から太い本を出して来た。秘密結社全集と書いてあった。

何故そんな本がここにあるのか・・ あっけにとられた私におかまいなく、
ビスティは本をめくりながら言った。

「 あったわ。トートは 魔法に通じ、イシスに多くの呪文を伝えたとされる。
白いヒヒの姿で描かれる事もあり ヒヒは魔術の象徴・・ですって!」

私は驚いた「 それ何です?何故そんな事が書いてあるんですか? 」

「 この本は 昔、世界の闇の歴史や隠された真実、神秘思想を追及し求め活動していた、
秘密裏に結成されていた組織が残した書物なんです 」ビスティが言った。
「 たしかケランスにも秘密結社がありましたわ。タロッシュも使われていたはず・・ 」

突然 青い光がスパークして、ラムカとビスティの背後に ホログラムの映像が現れた。
何処かの城のような 地下の秘密部屋に ランプを持った男性が2人降りて来た。
先に降りて部屋を開けたのは、品の良い身形をした若い男で
後ろからついて来たのは、海賊のような恰好をした豪快に笑う男だった。

2人は テーブルに着くと、戦利品を分かち合うと言った。
海賊は 足をどっかりとテーブルに乗せ、木箱から取り出した異国の
珍しい石像や黄金の杯や装飾品を 若い男に自慢げに見せた。
それはエジプトの調度品だった

貴族のような恰好をした若い男は、海賊の行儀の悪さに 少し神経質そうに眉をしかめたが・・
グラスを持って来て、海賊にワインを注いでやりながら「 素晴らしい! 」と調度品を褒めていた。
彼は・・ 海賊の粗野な態度や言動が嫌だったが、遠い国への航海の旅の話しや
手に入れた宝物の話を聞くのが大好きだった。

海賊が帰った後は、金貨と換えた宝物を 1人眺めながら、いつかは自分も冒険の旅に出たい
遠い国に想いを馳せながら耽るのが好きだった。
彼は美術品のコレクターだった。
空のオリオンやシリウスを眺めながら、コレクションに囲まれて過ごす深夜のひと時が大好きだった。

「 マリオンさん? 」ビスティに呼ばれて、我に返った。
「 ああ、ごめんなさい。ボーっとしちゃって 」画像は消えた・・

海賊はビスティで、若い貴族の男は ラムカだった。
2人は前世からの 繋がりがあった。そしておそらく秘密結社だった。

人は自分に関係の無い事には 今世出逢わない。
さっきビスティが言った言葉・・

「 トートは古代エジプトの智慧の神でヒエログリフも作った・・
魔法に通じ、イシスに多くの呪文を伝えたとされる、白いヒヒの姿で描かれる魔術の象徴・・
昔、世界の闇の歴史や隠された真実、神秘思想を追及して求め活動していた、
秘密裏に結成されていた組織・・ たしかケランスにも秘密結社があった・・
タロッシュも使われていた・・ 」

それは、そのまま前世で 彼女達が知っていた事だ。
海賊だった彼女は、情熱と好奇心を持って 自由奔放に世界を駆け巡り、神秘な真実を追い求めて旅した。
海賊は女神に愛されていた。


砂塵は舞い上がる 高く雲の彼方へ
遥かな星を越えて 遠く
時の果てまで・・

古より呼魂する
女神の思し召しにより導かれる者達を

人は それを運命と呼ぶ


「 ラムカのお父さんのお店、シャロンに行ってみませんか? 」ビスティが言った。
「 何か、分かるかもしれないわ! 」
私は面白くなって来たと思った・・



~ 23 ~


この世界は ひとつの見え方に過ぎない。
私達は それ本来の姿を見ているのではなく、
ある姿を見ているだけだ。

この世界はヒントに満ち溢れている。
自分の姿を 鏡が無いと見れないように、
他人を知っているように判断するが
当の自分自身を 一番知らないのだ


アイがいつも あなたと共に・・
あなたがいつも アイと共に・・

胸の奥深くから 呼魂する声を聞いているだろうか?

砂塵は舞い上がる 高く雲の彼方へ
遥かな星を越えて 遠く
時の果てより呼びかける。



駅前の通りに、ガラス張りの古びた店があった。
軒先に揺れる緑色のテントには シャロンと書いてあった。
「 どうぞ・・ 散らかってますけど・・ 」ラムカがガラス戸を開けて
私とビスティを中に入れてくれた。

横長の広い間取りの部屋は 薄暗くシンプルな内装で
正面の壁には、ケランスの塔の絵画が飾られていた。
「 これだ・・ カヨに見えた塔・・ 」
その絵を見た途端、キーン・・ 小さな耳鳴りがしてきた。

古びた大きな箪笥の上には 美しい飾り細工のランプが
置いてあり、薄暗い部屋の中でひときわ目立っていた。
部屋はつい立で仕切られ 丸いテーブルと椅子が置かれてあった。

奥には もう一つの扉があり、広い土間から居住スペースへと続いていた。
作品名:ゾディアック 3 作家名:sakura