ゾディアック 3
私は本にある表を見ながら、自分の名前をヒエログリフに直していった
フクロウ、鷲、唇、2本の葦、縄、さざ波・・
象徴的な形の 様々な絵文字が並んだ。
「 フクロウや鷲、唇・・ これが私を表す象徴か、面白い 」
現代の文字で書く名前よりも、図形に籠められたスピリットを感じられ
その名前の人物を 深く知る事が出来る気がした。
「 太陽や月や星を表す形もある・・ 」空を象形した文字を見ていた時、
カク エク アフ ・・
聞いた事も無い 地の底から響き渡るような低い声がして
鷲やカップや鍵の形が見えた気がした
「おまえは・・ その場所に・・急がねばならない」
知らない言葉なのに、何故か理解できた
「何故?私が今 思ったの?」概念がまた グルグルと騒ぎ始めた
すると目の前に 光輝く金髪の男が現れた
身体は 微細な光の粒子に包まれ 陽炎のように風に揺らめいていた
そのオーラは・・ 背中から天に向かって長く伸び 眩しい白金の翼だった
顔がルシフェルと瓜二つだった・・ 私は驚愕した。
ルシフェルが月光なら、彼は朝陽のように眩しい太陽の光
青い空を背景に 光り輝く彼は・・ 彼は・・
彼の名は・・ 「 ミカエル 」
私はやっと思い出した。
瞳は 吸い込まれそうな程 透明な明るいスカイブルーで
悠然とした優しい微笑みを湛えていた。
ミカエルの隣には、大きな白いヒヒがいた
ヒヒと言っても その毛はたてがみのように長く、まるでライオンのような姿だった。
地響きのする低く太い声で言った
ペレト・イ
カク エク アフ ・・
「私は・・ やって来た
お前は 急がねばならない・・」
赤い砂嵐の中で 前世の私が 言葉を読んでいた。
石の椅子に腰かけた足元には、細い月が映って見えた。
~ 21 ~
漆喰の闇の中に
ポウ・・と浮かび上がる
黄緑の蛍光色の 幾何学模様が
波のように幾重にも渦巻いて見えた
蔓草のような植物の 繊細で美しい模様は
楕円を描きながら ゆっくりと旋回していた
これは1つの宇宙か・・
私は目を凝らして よく見ようとした
でも見ようとすると、掻き消えて
楕円の中心に 黒い闇が渦を巻いて吸い込んでいく
見ようとしてはいけないんだ
私は目を閉じた
すると黒い渦の中にもまた、ポウッ・・と浮かぶ
大小様々な形の菱型の模様が現れた
その幾何学模様は 幾重にも反復し
整然とした美しい配列を形成しながら
無限のパターンを構成し波打っていた
膨大な数の 様々な象形や数字が
嵐の中の砂塵のように 渦を巻いて舞っていた
闇の中から鳴り響く声がした
「音と・・図形・・」
私は静かに目を覚ました
「 音と図形・・ 」繰り返し呟き 天井を見つめた
楕円を描いて ゆっくりと旋回する
繊細で美しい幾何学模様の渦が
残像となって映り・・そして消えていった
「 あれは何だったのだろう・・ 」私は思い出そうとして
暫くベットに横になっていた
着信音が鳴り、電話に出た
「 こんにちは、マリオンさん。私です、ビスティです 」
「 ビスティ? 」一瞬誰か分からなかったが、
ナアナの家の近所に住む女性からだった、一度会った事がある。
「 ああ、こんにちは・・ 」
「 今日お時間あります?家にいらっしゃいませんか? 」と言った
不思議な女性だ。 そんなに知り合いでもないのに
突然 誘いの電話をかけて来るなんて・・
私は一瞬 戸惑ったが、断る理由もないので行くと返事をした。
ピンポーン・・ 呼び鈴を押すと 中から華やかな身形をした女性が出て来た
「いらっしゃい!マリオンさん、どうぞ上がって下さい」
派手な明るい印象の どちらかというと苦手なタイプだった
「 こんにちは、お邪魔します 」何故自分がここにいるのか分からなかった
黒い毛の長い室内犬が私に纏わりついて来た。
「 こらこら、ダメよ!マリオンさんごめんなさいね。お客さんが大好きな犬なの 」
「 いや、別に大丈夫です 」私は犬の頭を撫でながら家に入ると、応接間に通された。
高価そうな大きな壺や、華やかな装飾品で飾られた部屋には
どれも豪華なインテリアで埋め尽されていた。
私は 飾り棚に目が釘付けになった
「 これは・・ 」
「 ああ、それは先日 両親がエジプトに旅行した時のお土産なんです。
ヒエログリフって言うのよ 」ビスティは言った
「 ・・ 昨日同じ物を見ました 」私はテーブルに着きながら言った
「 まあ、偶然ね。エジプト私も行ってみたいわ!
でもこの国にもピラミッドがあるのを知ってました?アシラ山に・・ 」
ビスティがPCを開いて写真を見せてくれた
「 この前行って来たんです、UFOが見えるのでも有名な山なんですよ 」
写真を見ると、確かにピラミッドのような形の三角形の山だ
スフィンクスのようなライオン岩や、オベリスクのような石柱も映っていた。
私は写真を食い入るように見た
ピンポーン・・ 呼び鈴が鳴って、ビスティが「はーい、入って来て」とインターフォン越しに話した
「 まだ 誰か来るのか・・ 」私は顔を上げると、PCの後ろから漏れた光の筋が
2本平行して 白い壁の角に折れ曲がって当たっているのが見えた
それはまるで、大きな羽根を広げた鳥が2羽 飛んでいるような形だった
「 こんにちは・・ 」入って来たのは ターコイズのワンピースを着た
色白で 大きな深い目が印象的な女性だった。
瞳の奥の眼光は鋭く 見ていると吸い込まれそうだった。
「 はじめまして、ラムカといいます 」彼女はにこやかに言った
ビスティとは対照的な 静かで落ち着いた雰囲気の
どこか陰りのある神秘的な女性だった。
「 彼女はタロッシュをやるんです。マリオンさんもやってみて 」ビスティが言った。
「 タロッシュ? 」私が聞くと、
「 カードです、どれか一つ引いてみて下さい 」ラムカはそう言うと、私の前にカードを置いた
私はトランプのようにカードを繰り、一枚表に向けて置いた
「 アルケミ 」人魚の絵が描かれたカードにはそう書かれていた。
何処かで見た事があるような絵柄だった・・
そうだ・・ メリエスに会った日の朝見た、あの夢の中の人魚だ。
夢の中で、黒い髪の人魚が 岩の上に腰掛けハープを奏でていた
白い指先が 弦を爪弾くと、虹色の泡が生まれて
淡い空へと浮き上がってゆく
美しい音色に乗って、幾つも 幾つも
何処か遠い所へ 流れて飛んでいった・・
「 錬金術のカードですね 」ラムカが言った
「 一つの扉が閉まると、一つの扉が開く。そして全く新しい自分に生まれ変わって行きます
最近 何か・・起こりました? 」ラムカが私に聞いた
何が 起こったか? ・・・ それを言葉で外に説明しょうとしても
スピコンで魔女に言おうとした・・ あの時のように誤解されるのが落ちだ
私は黙っていた。
あなたは1人で行かねばならない
自分の心の深淵から 聞こえて来る声を聞いているだろうか?
誰が正しいかではなく 何が正しいかだ
あの時の声が蘇った・
ここは意識の闇の世界。外に閉じ込められた五感
状態の次元が真実 頭は使ってるだけ・・