串刺し王の玩具
0.抜粋
『彼ら飛ぶもの達は一般の人間とまったく変わらぬ生活を送っている。彼らは飛ぶという以外に何の特徴も無く、その能力が人生に益を為す事も無い。それどころか、ひたすらにその力をひた隠しにすることが、生き抜く為の必須手段なのである。もし、飛行を目撃されでもしたら、人々は彼らを八つ裂きにした上に火炙りにし、鉛の棺桶に灰をつめて下水に沈めてしまうだろう。そういう社会なのである。
飛ぶという能力を、彼ら自身も無視しつつ生活している。ただ、不意に飛び上がったりしないよう気をつかうことは、精神に極度の負担をかけるらしく、焦燥と疲労とが慢性疾患となっている。彼らは少数者の不安と誇りとに苛まれ、少しでも多くの同類と団結したいと考えている。その特殊な処世術により、彼らは一般人とは相容れない価値観を持っていることが察せられる……』
(『串刺し王の玩具に集いし者についての考察』と題されたタブロイド紙の、完結しなかった特集記事より)