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ゾディアック

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私達は寺院の参道を下り、山道に入ってレッドリーフバレイと呼ばれる谷へやって来た。
秋が深まると 紅葉の美しい場所だ。

相撲大会のあった日、ナアナがメネトーナに導かれて出逢った聖木に会う為に。
女神島で一番美しいと呼ばれる聖木だった。

「 確かこの辺りなんだけどな・・ 何処から川を渡ったんだろ。全部同じ景色に見える 」
ナアナがそう言って立ち止まると、私たちの前に一匹の鹿が現れた。
鹿は道の真ん中に立ってじっとこちらを見ていた。

「 あれ、さっき寺院の参道で逢った鹿じゃない? 」
近づくと鹿は片目が潰れていた。
「 やっぱり、あの鹿だ! 」私達が駆け寄ると、鹿はヒョイと脇の茂みの中へ隠れてしまった。
鹿が入って行った藪の方を見ると、下に川が流れていた。
「 あ、ここだ!この川を渡ったんだよ 」そう言うとナアナは 鹿の後を追うように茂みの中へ降りて行った。
私もナアナの後について降りた。

「 あの片目の鹿は メネトーナの遣いだね 」ナアナは言うと
浅瀬の石を飛び越えながら川を渡って行った。
私も後に続きグラグラする石に足を取られ 落ちそうになりながら川を渡った。

向こう岸に着くと 張り出た木の根っこや岩を掴み崖をよじ上る
「 すごい場所だね・・ナアナよくこんな場所1人で見つけたね 」私はズルズル斜面を滑りながら言った。
「 メネトーナの光を追っかけるのに必死だったからね 」ナアナは私を引っ張り上げてくれた。

相撲大会の日、三つの光が現れ 森の中を彷徨うナアナを聖木に導いた
サロンでボディセラピーをしていた私に「 精霊メネトーナが導く 」と声がして
客の背中に大樹が現れた・・
「 誰がこんな話を信じるのだろう? 」私は可笑しくなった。

泥だらけになりながら、藪をかき分け茂みを進むと いきなり広い場所に出た。
突然 風が、私達の足元から巻き上がり 目の前に立つ大樹の枝を雄々しく揺さぶった。

ザワザワザワ・・ ザワザワザワ・・
夕陽を浴びて枝の葉が・・金色に煌めく雨のように
パラパラと私達の上に舞い落ちて来た。

旋風が全てを巻き上げ 草も木の葉も砂塵も・・
渦の中で私達は 景色がまるでスローモーションのように止まって見えた。

「 気高く・・ 気高く・・ 」誰かが囁く
「 アリエル? 」私が聞くと
「 木だ・・ この木が言ってる 」ナアナは目を閉じて言った。
一瞬ナアナが、白装束を纏った巫女の姿に映り 私は目を見張った。

バサバサバサ!
突然 羽音がして、大樹から大きな鳥が一羽 夕陽の中に飛び去って行った。



~ 7 ~


永遠が光の中で踊っている
時の狭間に
眠りから覚め微笑む
あなたは一体 誰なのか?
そして私は 何故私であり続けるのか

アイに抱かれ 語る風の歌を
時の揺りかごに 消え往きながら
あなたは何処なのか?
そして私は 何処へ進み続けるのか


夢を見ていた。

クルクルクル回る 眩い光の中に、大きな羽根を拡げる女性が現れた
何かを囁いたが よく聞き取れなかった

アイ・・ シス・・?
ア・・ イシス・・

彼女の顔は 逆光の眩しい光に包まれよく見えなかったが
拡げた羽根は ものすごく大きな翼だった。
羽根を縁取る羽毛が風に揺れながらキラキラ煌めいていた

「 月は 見るものじゃない 感じるもの・・ 」

今度ははっきりとした声で聞こえた。
私は目を閉じると、自分の眉間に クルクル回る光る菱型が浮き上がるのを感じた
「 これは 何だろう? 」

光る菱型は更に高速回転して 眩しさが増して行くと
私の眉間の奥は透き通って 後頭部に突き抜けていくような不思議な感覚に襲われた。
静かな無音の美しい音が聞こえた。
実際に音は聞こえていないのに・・ 聞こえると強く感じ、光も見えると強く感じた。

「 目を閉じてる方が はっきりと解るんだ!! 」私は言った

同時に 大きな翼の女性は掻き消えた、青い空が広がった
13歳の私が 誰かの背中に摑って雲の上を飛んでいた。

「 世界が信じなかった事を?よく解ったね 」彼は言った

「 心から信じれば どんなものも存在するのよ 」私は答えた

「 目に見えなくても? 」

「 目に見えなくても! 」

「 素敵だね 」


ピピピピ!!
携帯のアラーム音で目が覚めた。
またあの夢・・ でも今日は大きな翼の女性が現れた。
昨日ナアナと女神島に行ったせいなのか・・ 携帯を見るとナアナから着信があった。

「 ナアナ、今夢でね大きな翼の女性が現れたよ 」私が言うと
「 マリオン!私も今 目の前に 大きな翼の女神が現れて、見ようとしてはいけないって言うの! 」
ナアナは興奮しながら言った「 あなたは誰?て聞いたら、イシスだって! 」
「 ナアナ、女神としゃべったの!? 」私は驚いて言った。
「 うん、気高く・・気高く・・て言ってたよ。物凄く荘厳で綺麗だった! 」ナアナは感激しながら言った。

「 イシスは、エジプトの月の女神の名前だ。だから夢で月の事を言ってたのか 」私は思った
月は見るものじゃない 感じるものだと・・

高速回転する光の菱型を眉間に感じると、無音の音ナディアのバイブレーションを感じる
昨日、女神島で聖木が 気高く・・と語って来た。あれも イシスだったのか?    
あの時 ナアナが巫女に見えたのと 今日ナアナがイシスとしゃべったのは偶然ではないと思った。

「 マリオン、私今日スピリチュアルな人の取材に行ってくるよ。
もしかしたら 他にも私達みたいになっちゃた人がいるかもしれないね! 」ナアナは言った。
「 私達みたいになった人?有り得ないものが見えたり聞こえたりするようになった人? 」私は聞いた
「 うん、もし他にも出逢えたら 嬉しいよね! 」ナアナは期待に満ちて言った。

そうかもしれない・・ この超常感覚を普通に共有し合えて 認めてくれる人間が他にも見つかれば
私達はだいぶ楽になれるだろう。
「 本当だね!もし出逢えたら仲間だね。また何かあったら教えて 」私はそう言うと電話を切り
期待で胸がいっぱいになったが・・ 何かが引っかかっていた。
でも そのモヤモヤした何かが分からないでいた。

サロンに行く前に セラピーに使うアロマオイルを買うのを思い出し
「 ああ、だから今日はアラームにしてたんだ! 」私はベットから起きるとシャワーを浴びに行き
そのまま 胸に引っかかっていた事など忘れてしまった。



~ 8 ~


車に乗って エンジンをかけると、いきなり虹色の光が目に入ってチカチカした。
「 あ・・ 」目を細めて見ると ミラーに吊るした羽根飾りに朝陽が当たり 透けて光彩を放っていた。

「 綺麗・・ こんなの今まで見えてたっけ? 早起きすると好い事あるね 」
いつも遅刻ギリギリまで寝ている自分をちょっと反省してみたが
たぶん改心は無いだろう。

羽根が揺れる度 キラキラと煌めき 車中に虹を散りばめた。
光の中で運転しているうち不思議な感覚に襲われた。
キーーーン・・高音の耳鳴りがして、車の振動なのか 自分が揺れてるのか分からない
まるで私自身が振動になって浮き上がって行くような感覚だった。
作品名:ゾディアック 作家名:sakura