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海野ごはん
海野ごはん
novelistID. 29750
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ワン メイクラブ one make love

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なんだか安心・・僕はまた携帯の電源をオフにした。
空調も効いているし、気持ちいいな。ちょっと横になるか・・・。

部屋のインタホーンを鳴らす音がする。なんだ?
京子はまだお風呂らしい。あ~面倒くさいのに何の用だ?
立ち上がりはだけた下半身をバスローブに隠し、ドアを開けた。
なっ、なっ・・・・綾香! なんでそこにいるんだよっ!
なんだか一番悪いシチュエーションに来やがって!わぁ~・・・・。

僕はハッと夢から覚めた・・・。ふぅ~~、なんだ夢だったのか・・・
それにしてもびびる夢だ。まだ心臓がドキドキしてる。俺も小心者だな・・・。
備え付けの冷蔵庫の中から缶ビールを取り出し飲んだ。ふぅ~・・・。


京子が浴室からバスローブをまとい上がってきたのは午前一時を過ぎていた。とっくに上がった僕がベッドに横になりそのまま眠り嫌な夢を見た後だった。
「ごめん、寝てた?遅かったかな?」
「いや、いいよ。ちょっとウトウトしてた。しっかり洗ってきた?」
「ばかっ!」京子はバスローブのままベッドに入ってきた。
沈黙が嫌で僕は大型テレビのスイッチをつけた。画面にはまた男女の絡みあいが映し出され、部屋中にいやらしい声が聞こえてきた。
慌ててボリュームを下げチャンネルを変えたが、今の雰囲気に合わないので消した。
「なんだか照れるね。この間は燃えたのに」
「この間は結構酔っ払ってたし、勢いがあったものね二人とも」
「やっぱり、こういうものは勢いでやらなくちゃいけないのかな」
「そういうことないと思うけど・・・」京子は体を密着させてきた。
浴室からジャズが小さく聞こえる。先ほど僕が選んだチャンネルだ。
京子も僕も言葉が出なく、しばらくじっとしていた。

「あのさ・・・」京子がやっと口を開いた。
「浴室で裸の自分を見たんだけど、もう歳だね。改めて明るい所で見ると自信なくなっちゃう・・・」
「・・・・」僕は黙って聞いていた。
「たるんだお腹、落ちたおっぱい、崩れた体型、顔も歳取ったし・・・」
「俺だって、太った腹に下半身には白髪だ」
笑わそうと思って言った言葉だけど、京子はクスッとしただけで顔がマジ顔だった。
「なんだか、嫌になるね。歳を取ると・・・。斉藤君に見せたくなくなっちゃった」京子はシーツを頭からすっぽり被った。
「おかしいよね。旦那にはすっぴんでも裸でも平気なのに・・・」京子がシーツの中から言った。
僕は綾香の事を思い出した。あいつもすっぴんで丸裸でベッドに入ってくる。嫌と思った事はないけど、燃え上がる意識も湧かない。
いつからだろう・・・・男と女の垣根が取り払われたようになったのは。
いつの間にか許していた。いつのまにか当たり前だと思っていた。
そして、二人の姫事もいつしかローテーションのように普段化していた。
そして、お互いを求める間隔は知らないうちに長くなり、どうでもよくなって面倒くさくなって、よっぽどお互いの性欲が高まった時じゃないとやらなくなってしまっていた。

「京子・・・あのさ、一度目の浮気はいつだ?」
「う~~ん4年前かな」
「一度目の時はドキドキしっぱなしだったろ?」
「うん」
「俺も・・・そうなんだ。で、二度目になるとそうでもない。三度目になると自分が嫌になる」
そう言ったまま僕は過去の女達を思い出し、少し黙った。
短い沈黙が流れた。堰を切ったのは京子だった。
「私は何番目の女?」
「ふう~~・・・・初めての女に決まってるじゃないか・・」少しふざけた感じで言った。
「やだ、話しが合わないじゃない。全然嘘ついてるし」京子も笑う。
「そだな・・・いいじゃないか。でも、この前は燃えたよな」
「うん」
「ところどころ記憶がないけどさ」
「よかった。全部覚えてられたら困る」
僕は一旦話しを区切ると、京子のバスローブを脱がし、自分のバスローブを脱ぎ裸を密着させた。そして京子の頭を右腕に乗せ腕枕にした。
京子は僕の胸に顔を近づけ、柔らかい胸を密着させる。
しばらく僕は天井を見上げてなにも言わないでいた。
京子も何も言わない。
二人の体が体温を共有し同じ温度になるのがわかった。ひとつになったような気分だ。

「ねぇ~・・・斉藤君・・・このままでいい?こうやって抱いてくれるだけでいいや。なんだか気持ちがふわっとする」
京子の言葉が心に沁みた。わかる、実は僕もこのままがいい。
先ほど綾香の夢を見て気になっていた。そう好きでもないのに遊びのつもりでセックスするのは気が引けるなと・・・。夢の中の綾香は相当怒ってたもんな。当たり前だ。誰だって自分のパートナーが寝取られるのはいい気はしない。遊びもつい魔がさして一度は仕方ないが、二度目の行為は裏切り行為だ。いや、全部裏切り行為か・・・。
同じ事を京子も考えてるのかもしれないし、そうでもないかもしれない。だけど彼女がこのままで居たいという事は、セックスをしないって事は何か考えてるんだろうなとぼんやり思った。

「いいよ・・・このまま寝ようか。腕枕は貸してあげるから・・・」
「ありがと」
それから浴室から漏れる薄暗い照明の中、僕達は広いベッドで横に並んで寝た。静かな夜だった。





「じゃ、帰ろうか」
窓から朝日が差し込んでいた。部屋は明るく新しい世界の夜明けのようだった。京子はすでに化粧を終え、帰る準備は整っていた。
窓の外の海はだいぶ上った太陽に照らされ、キラキラ水面を輝かせている。時計はまだ7時前だ。
「斉藤君こっち来て」京子は窓側から僕を呼んだ。
「ん?」僕は京子に歩み寄る。
「お別れのキス・・・」京子が僕の正面に立って来た。
僕は軽く肩を抱きかかえ、京子の唇にキスをした。
「これで最後のキスか・・・残念だな」
「いいじゃない。。。楽しかったんだから」
そうだなキリギリスには楽しいことが一番だ・・・・。
京子はそう言うとバッグの中から小さな小瓶を取り出した。
「はい、これ」
「なに?」
「朝顔の種。私達の記憶の種。地元の小学校から貰ってきたんだ。理科の実験に使うやつ」
「へぇ~、ちょうど今頃植えればいいのか」
「そう、朝顔が咲いたら思い出してくれる?」
「ああ・・・。ありがと」
僕は小瓶を受け取り、ガラスの中でころころしてる3つの黒い種子を見た。
「なんだかでかいな。どんな色の朝顔なんだろ」
「二人で楽しみにしよう」
「ああ」
僕は朝顔の種が入った小瓶を夏ジャケットの内側のポケットに入れた。
そして僕達は明るい部屋を後にした。

朝の駅はまた通勤客で一杯だった。初夏の暑さが構内をさらに暑くしている。エスカレーターに並んで下りてくる乗客は蟻の行列だ。
「じゃ、これで帰るね。明日からまた仕事しなくっちゃ」
蟻の行列に逆行するように僕達は上りエスカレーターの前まで来た。
「じゃ、ここで・・・さよなら」
「うん、さよなら・・・」京子は小さく手を振った。
僕はそれを見届けると、踵を返し駅からビジネス街に向かう流れに沿って歩き出した。

「お~い、斉藤」誰かが呼ぶ声がした。またあいつだった。大学時代の同級生横田だ。
「やあ。また現場発見!斉藤君よろしくやってるな。駅は危険だよ」
ニヤついた声でその同級生は近寄ってきた。