ワン メイクラブ one make love
「なんだ、おまえか・・・。今から仕事か。ご苦労さんだな」
「斉藤君は朝帰り、僕は今から奴隷のように仕事、いいな斉藤は」
「いいと思ったら真似したら?」片唇を浮かして僕は笑った。
「いやいや、斎藤先生ほど精力はございませんから、もう歳ですし」
「なんだ精力減退か・・・おいおい、まだまだいけるぜ」
僕は横田の股間にパンチを入れる真似をした。
「そうだ、いいものやる。最近愛用している秘密の精力剤だ。ちょっとやばいところから仕入れたやつなんだけど、これが効くんだ~」
僕はジャケットのポケットから、先ほど京子がくれた朝顔の種の小瓶を取り出した。
「これブラジル産なんだけど、媚薬みたいで一粒でカーニバルになれるぜ」
僕は横田の目の前に小瓶をかざした。
「でも、一粒だけだぞ。昼の弁当で食べたら夜にはサンバが鳴り出すから」
僕は横田の手に持たせた。
「いいのか斎藤」
「いいんだあと三粒しかないけど、俺はまた手に入れられるから。やるよ」
「なんだか、すまないな」
「いいって、たまには知ってる奴に恩を売っとかないとな。今日見た事は内緒だぜ!」
「おぉ、わかった」横田は少し小躍りしている。
「じゃ~な、しっかり働けよ」僕は手を振り送り出した。そして横田は蟻の人混みに消えた。
蟻の行列が行儀よく並んで通りを同じ方向に歩いているのを尻目に、逆方向に僕は歩き出した。そして携帯を取り出すと綾香に電話をかけた。
数度の呼び出し音で綾香は電話に出た。
「おはよ~。メール貰ってたな」
「おはよ~、どうだった飲み会は?悪いことしなかった?」
「ああ、するわけないだろ。おとなしく飲んでたさ」
「どうだか・・・、でも、いいわ。信じるから」
「綾香、今週末はあいてるか?」
「なんで?」
「温泉でも行かないか?」
「えっ、うそ~、どういう風の吹き回しよ。罪滅ぼし?」
「なんのだよ?バカ言うな。俺ら最近、倦怠期みたいだし場所を変えて思いっきりエッチしようぜ」
「ふふっ、馬鹿ね。朝からなにテンション上がってんの。まだお酒入ってる?」
「あ~、そうかも」
「いいわ。オッケーよ。あなたの行く所どこへでも。うれしいわ」
「よし、バンバンしようぜ」
「なに言ってんのよ~」綾香の笑い声が聞こえる。
「じゃ~な、また電話するから」
「うん」
僕は携帯電話を切ると、また蟻の行列に逆らって朝の通りを歩き出した。
(完)
作品名:ワン メイクラブ one make love 作家名:海野ごはん