ワン メイクラブ one make love
僕はあごの下にある京子の顔を持ち上げて、屈みながらキスをした。温かい唇同士が触れ合った。もしかしたら京子とは初めてのキスかなと思い出し、ついでに前回ホテルでセックスをした彼女の体つきを思い出した。
割と見かけによらない大きな乳房、張った腰、丸くてすべすべの尻・・・。
久しぶりに股間が熱く固くなった。そして、わざと京子に押し付けた。
「やん、固いのが当たってるわよ。若くなってる・・・ふふふ」
そう言いながら京子は右手で触ってきた。膨らみを確認するようにさする。
「おまえなあ、そんなに触ってどこがロマンチックなんだ」
「ごめん、つい・・・駄目?」
「いや、いいけど。うれしいけど」笑いながら言う僕に気をよくしたのか京子はジッパーを下ろし始め、隠しておいた僕の熱くなった物を口に含んだ。
生温かい生き物が僕のを吸い付く。久しぶりの感触だった。
京子は丁寧に大事なものを扱い、舌を這わし、唾液で覆い尽くした。
「はぁ~。京子おまえ・・・すけべだな」
熱くなったものから口を離すと京子は立ち上がり、僕の首筋を舐め
「そうよ、欲求不満のおばばなの。嫌だった?」と聞いてきた。声が笑ってる。
「たまげたな。正体見たりだ」
「ふふっ驚いた?」
「ああ、でもいい」
「なにがいいの?」
「吸われるのも・・・ははっ」僕達は大声で笑い出した。京子が笑ってる間に僕はジッパーをあげた。いくらなんでもここでセックスはまずい。それに今夜はお泊りなら、尚更ここで終わるわけにはいかない。
「なあ、京子は旦那とご無沙汰なのか?」
「う~~ん半年に一回くらいかな。この間はいつしたんだろ・・・」
「少ないな。なんで?」
「えっ、少ないの。でも、もうやんなくていいや。面倒くさい」
「俺とでもか。面倒くさいのか」
「いや、相方とするのは、もう燃えないんだよね」
「おまえもそうなんだ・・・実は、俺もそうかもしれない。なんかめんどくせ~。
衝動的って言うのか、そういう気持ちにならないんだよな。飽きたのかな」
「そうよ。飽きるのよ。私ももうなんだか燃えない。こないだ斉藤君が私を誘ってホテルでしてくれたでしょ・・・燃えちゃった~。気持ちよかった。まだまだ私も女なんだ、出来るんだと思ったもんね。ありがとね・・・」
「なんのなんの。お礼を言うのはこっちだ。俺も気持ちよかった」
僕は京子の肩を抱き引き寄せた。そして歩いてきた繁華街方面の街の明かりの集団を見てクリスマスツリーを思い出した。
「ほら、あそこ。一番光り輝いてるところ、さっきいた街だ」僕は指差した。
「きれいね~」京子が言った。
「クリスマスみたいだな。なんだかロマンチックじゃないかい?」
「そうね。きれいだわ」
「ようし、これでお前の望みはひとつ叶った。さっきロマンチックして欲しいと言ったろ」
「ふふっ、そうね。叶ったかもね」京子は僕のわき腹にパンチをひとつくれた。
「じゃ、ホテルに行くか。そこで思いっきりエッチしようぜ」
「やだ~、そんな言い方。せっかくだからいいムード壊さないでよ」
「いいじゃないか燃えてんだ。やりたいんだ。火が点いた」
「私が点火しちゃった?」
「あ~そうだ。はち切れそうだ。早くしてくれ~」ふざけて僕は大声で言った。
「やだぁ~、だから下品だって・・・。やめてくれる」京子も笑ってる
なんて楽しい夜なんだ。綾香には悪いけどこれがキリギリスで,その場が楽しければ一番なんだ。後から電話するって言ったけど面倒くせぇ~な・・・。
僕は綾香のことを頭の片隅に追いやった。そして電話はしないと決めた。
暗い階段を注意しながら一歩ずつ下りると、やがてコンビニの明かりに辿り着いた。店内には客は誰もいなかった。無人のコンビニはどこか寂しい。いつも人が居るところに誰もいないと、ここはどこなんだという気になる。
そしてそれは僕の人生にも言える。誰かが廻りにいる人生、誰もいなくなったら、本当にここはどこなんだと失望してしまうだろう。人は誰かを頼り、そして面倒くさがる。矛盾した気持ちだけど寂しがり屋なんだ。誰もいない世界ほど寂しいものはない。
大通りに出るとタクシーを止めた。そして携帯を切った。二人で乗り込んで「どこか近くのラブホテル迄」と頼む。沈黙の車内に緊張感が走る。京子は僕の手を握っていた。どこか小さく震えてるような気がした。
やがてタクシーはホテル街の中の大きなラブホテルのフロントまで入り込みメーターを止めた。料金を支払い、慣れた足取りで案内パネルの前に行き適当に空いてる部屋番号を押した。京子は無言でついて来た。
エアコンの効いた部屋に辿り着くと京子はホッとしたのか、照れなのか
「あ~緊張した」と言った。
「なんで?」僕は面白がって聞いてみた。
「だって慣れてないもん。タクシーの中だってラブホテル迄って言ったら、絶対こいつら今からやるんだなとか思われてやしなかった?」
「いいじゃないか、ラブホテルって言わなきゃ普通のホテルに行ってしまうだろ。それに、するんだし・・・ちがう?」
「斉藤君、慣れてるのね」
「そうでもないよ」
「いや、いや、絶対そう。結構不良中年なんだ」横田の言葉を思い出した。駅で会ったとき言われた言葉だ。苦笑いするしかない。
「ハイ、ハイ、不良中年です。ハイお風呂に入ろう」
お湯を入れてくるわと言って僕は浴室に向かった。ジェットバスは結構大型のものが備え付けてあった。タッチパネルにはいくつものボタンがある。どこをどう押したらどうなるか試してみた。ライティングに音楽、ジェットバスの泡の調整。それから浴室テレビのスイッチがあった。
テレビのスイッチをいれてみる。小さな画面にいきなり裸の男女が戯れあう画像が映し出された。あえぎ声が浴室に響き、慌てて小さくボリュームを下げた。だいぶお湯が溜まったところで、浴室の照明を落とし、テレビの画像はそのままにジャズのBGMを流した。準備完了だ。
「お~い、お風呂沸いたよ。一緒に入ろうか」
「いやだ~」京子の声が聞こえた。
「なんで~、入ろうよ」僕も叫んでみた。
「やだ~恥ずかしい」
「暗くしてるから大丈夫だよ。来てごらん」僕はさらに照明を暗くした。
京子は顔を覗かせてお風呂を確認したがベッドの方向へ戻って行った。
「なんだ入らないのか」
「後で入るから、先に入ってて」声が聞こえた。
仕方ないな。50過ぎての裸は誰にだって抵抗がある。僕だってある。
僕は一人で入ることにした。下着の一部分が京子の咥えたせいで少し濡れていた。ジェツトバスの泡を最大にして音楽のボリュームをあげる。大きなバスタブで一人も気持ちいい。僕の股間はこれからの事を期待していつもより大きくなっていた。こんな日があってもいいさ。綾香には悪いけど。
僕が浴室からバスローブをまとって出ると、京子はメールを見ていた。
「なんだ旦那が気になるのか?」
「ううん、ちょっと嘘のメールを入れただけ」
「悪い奴だな~」
「あんたが悪いんじゃない」
「かもな・・・。お風呂入ってこいよ。広くて気持ちいいぞ。ジャグジー最高」
京子はバッグと携帯を持って浴室に行った。
そういや、綾香から連絡入ってるかもしれないな・・・僕も携帯を見た。
メールが一通「今日はもう家に帰るね」とだけ残っていた。
作品名:ワン メイクラブ one make love 作家名:海野ごはん