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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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そらのわすれもの4

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机に影が出来たので、知秋はピクンと身体を動かし、上を向いた。あまりにも、夢中でノートを写していたので、優太が近付いて来ていたのに気が付かなかった。
「んっ。何?」
訝しげに見つめる色素の薄い茶色の瞳が愛らしい。その姿を見ると、優太は一瞬話すのを躊躇った。今からする話題は、話し方を間違えれば喧嘩を引き起こし兼ねないからだ。
「知春ちゃんに会った。」
優太は勇気を振り絞り、話題を持ち掛ける。それを聞くと知秋の表情がぱっと明るくなる。
「おっ、さんきゅー!早速、ありがとう。」
太陽の様な笑顔が眩しい…。
「…。」
優太は、思わず目を反らす。自然と知秋の机の上に視線が行く。そこには、五冊くらい重ねられたノートの束があった。優太は、それを一冊手に取る。自然と顔が厳しくなる。
「あっ…。何と言うか、今晩は忙しくて…。宿題がやれないというか…。」
知秋は、慌てて立ち上がり、恥ずかしそうにノートを手で隠した。

優太は呆れたような顔で知秋を見る。
「今晩も終電を過ぎるまで、帰らないつもりなのか?」
知秋の顔が固まった。
「え…。」
「知春ちゃんを1人残すのは可哀想かと思って、君が帰宅するのを待っていたんだ。でも、終電ギリギリになっても君は帰って来なかった。知り合って間もない俺が言うのもなんだけど、どうかと思うよ。」
「えっ?何で?別に知春はいつも1人で夜を過ごしているけど?」
知秋は不思議そうな顔をしてから、すぐにノートに視線を戻した。

毎晩のようにこの子は遊んでいるのだろうか。

知秋は全く罪悪感が無さそうだ。
とにかく、ひたすら慌てながらノートを見比べている。

知春に対しての無頓着さが優太の勘に触った。
「夜1人って…。可哀想だと思わないのか。」
「…。」
その言葉を聞くと、知秋は下を向いた。辛かった。知春に寂しい思いをさせていることは分かっている。でも、どうしようもないじゃないか。同時に知秋と知春は存在できないのだから…。だから、知秋は優太に知春に会って欲しいと頼んだはずだった。

「どうしてそんな事を言われなくちゃいけないんだよ…。」
一言呟くと、知秋は悔しくて、口をぎゅっと結んだ。