水晶少女
でも、忘れられなかった。片時も目を離せなかった。いつも彼女の姿を追っていた。授業を真面目に受けているときも、大人しく小説を読んでいるときも。下校のときも、家に帰ったときも、僕の頭の中には彼女が浮かんでいた。
どうして。何度もそう思った。もう諦めろと、幾度も自分を律した。だけど、無理だった。脳裏にこびりつくように、彼女の姿が頭から離れなかった。
何度も悩み、考え、そして僕は知った。幾層もの自分の感情。自分を取り巻く感情の渦。それを一つ一つ剥いでいって、その先にあった、真っ白で純粋なこの想いは、
「ただ、君を知りたい。そう思うだけだ。君の心に触れてみたいんだ」
「……」
「その感情に同化はない。理由なんて一つもないんだ。君と対等の、一人の人として、純粋に君を知りたいんだよ。それが……僕にとっての、好き、という感情なんだ」
彼女は何も言わず、僕の瞳を見ていた。
「君はこの前、こう言ったよね。私にはこうする生き方しかできない、と。その理由を教えてくれ」
僕は決して目を逸らすことなく、彼女の瞳を受け止めた。
「君の本当の心を……教えてくれないか」
沈黙。一言も発さず、しかし互いに視線を逸らさなかった。言葉を交わさずとも、僕たちは感情をぶつけ合っていた。そして彼女は目を伏せ、ふ、と唇の端から小さな吐息を零す。
「分かったわ。でも、これだけは言っておく。私の心を知ったら、間違いなくあなたは失望をする」
「……それは聞いてから判断することだよ」
「そう」
彼女は小説を鞄にしまった。そして、改めて僕に向き直る。