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Ramaneyya Vagga

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 しかしながら、わたくしが生活しておりますのは、無人島ではなくして、このわたくしの見解によれば男の肉欲の積み重なりたる、人間社会であります。つまるところ、他者との関係というものを考えなければなりません。それが男の肉欲の結果であれ、夫婦の愛の結果であれ。
 ところで、暴力というものの本質とはなんでしょうか。わたくしは報復であると見なします。ならばその始原はどこにあるのかといぶかしがる方がいらっしゃることでしょうが、それについては自然への報復であると言うこともできましょうが、わたくしの申し上げたいことからは少し外れてしまいますので、ここではその問題にはこれ以上立ち入らないことにさせていただきます。
 彼はわたくしを疎んじた、ゆえに彼は愚劣である。彼女はわたくしを蔑んだ、ゆえに彼女は報いを受けるべきである。このような感情が、暴力の源であるとわたくしは感じます。
 みなさん、このような暴力の応酬にかかずりあう以上、安らかに生きていくことなど望むべくもないではありませんか。そして社会的人間の生涯といいますものは、まさに暴力とのかかずりあいそのものではないでしょうか。かりにわたくしひとりが孤独に安らいだとしても、周りの人々がほうっておいてはくれないのです。またわたくしとしましても、周りにいらいらした人がおりますと、気になって仕方がありません。この問題をなんとかしなければなりません。
 還元いたしますと、わたくしひとりのみが幸せになるということはありそうにございません。こうしてみますと、わたくしがこれはわたくしであると見なしているものは果たしてひとりのわたくしなのだろうかという疑問が生じるのですが、これもまた少しわき道に逸れてしまいますので、これ以上の詮索は差し控えたいと思います。
 では、人が他者を助けて幸福にするということは、果たして可能なのでしょうか。そのようなことが起こったと見えることがあります。しかし例えばその助けられたと見えた人が、仮に死んでいたらどうでしょうか。何も起こらないでしょう。その人が自ら生きていて初めてそういうことが起こるのなら、それはもうその人が自ら成したことではないのでしょうか。
 ある人々は、宇宙人やイルカに期待します。水晶などの岩石とか、水とか、その他さまざまなものに、助けてくれるのではないかと期待する人々がおります。これらはわたくしには類型的な積荷信仰に見えますが、とにかくそうした人は今日少なくありません。しかしわたくしは率直なところ懐疑的です。宇宙人が真理を教えてくれるのでしょうか? 宇宙人が現われて、「これは真理である」と言ったとして、それがなんだというのでしょうか。それは彼がそう見なしたというだけのことです。いやそうではない、それが真理なのだとおっしゃる方は、よろしい、宇宙人が現われるまで冷凍睡眠され、彼から真理を聞いたなら、これを承認しない者は愚劣だと叫んで、人々と殴り合いをなさるのがよいでしょう。
 わたくしは、あらゆる物事は個人の問題であると見なします。そしていったい、自分自身で何かを成すのでなければ、生きる必要などまったくなくなってしまうのではないかとも思います。そういうわけですから、わたくしにできることと考えますのは、自然や自らを観察したり、昔の人々の事跡や思惟を学んで感じたことを、表現することだけということになってしまうのです。わたくしの申し上げますことや書きますことをみなさんがどう感じられるかについては、わたくしは物理的に関与できません。しかしながら、わざわざそのようなことをする以上、わたくしにも目論見があるわけです。つまり、「これはみなさんが自然を理解され、他者と敵対せずに安らかに生きるために、役に立つはずだ」と。もちろんわたくしの勝手な思い込みでして、申し訳ない思いもありますけれども、しかし、わたくしは、こうしたことをする以外に、わたくしの人生に意義を見つけられなかったのです。そうです、わたくしは、人生の目的とは、見つけるものに他ならないと見なします。わたくしが自分の子供をもうけるということはこの先もないでしょう。しかしこうした昔の人々から続く英知の伝承が、わたくしの生殖です。

 さて、初めにわたくしは、人参ご飯の話をさせていただきましたときに、これによって、みなさんが人生の目的を完遂なさることを疑わないと申し上げました。あのときみなさんの心には、どんなものが思い浮かばれたでしょうか。その思い浮かばれたものこそが、みなさんがご自分の力で見つけられた、人生の目的ではないでしょうか。
 おしまいに、もうひとつ申し上げましょう。阿弥陀如来や宇宙人や金貨よりも、それよりもわたくしは人参が欲しい、と。
作品名:Ramaneyya Vagga 作家名:RamaneyyaAsu