Ramaneyya Vagga
お上、北センチネル島へ行く[未完]
「我々はお上だ」
俺は連中を見回しながらはっきりそう言った。それはセンチネル語で"上"に接頭辞"御"をくっつけたものだ。間違いないはずだった。
ところが奴らは互いに顔を見合わせて、いぶかしげに囁くばかりだった。そのうちひとりが、おそらくは最年長のひとりが、頭にくっつけた鳥の羽を揺らしながら言った。
「お上って、なんのことでげすか? あんた方はなにもんで、なにしに来たとですか? 優しく教えてちょんだい」
ポートブレアの連邦政府に勤めてこの方、どうということはない仕事ばかりしてきた。真珠の養殖場の管理は、退屈だがのんびりしたものだったし、タロイモ農場に至っては、日がな一日詩を作っては歌っているだけでよかった。しかし今度ばかりはそんなのんきな仕事じゃない。
北センチネル島のセンチネル族が唐突に交渉を求めてきたという噂は、俺のような下級官吏にもすぐに伝わった。俺の母親はオンガン族で、俺はセンチネル語と近いオンガン語がわかるから、嫌な予感はしてたんだ。
「それで、いったいお上っちゅうのは、なにをしたくて、なにをしているんでげすか? なんのために、それをしたくて、それをするんでげすか?」
「それはだな」
俺は一瞬なんと言ったらよいかわからなくなった。
「民主主義とか、資本主義とか言ってだな」
いかん、こんな語を英語で言ってなんになる。
作品名:Ramaneyya Vagga 作家名:RamaneyyaAsu