Ramaneyya Vagga
ワウリは落ち着き払っていた。俺の心を読んだように、静かに言った。
「トドがぜんぶ許してくれるだよ」
俺とパールラヴィは顔を見合わせた。笑い合った。トド。この言葉だけでよかった。それが俺たちの、そしてネネツのキーワードなのだ。
村の連中がすっ飛んできた。そして叫んだ。
「トドは捕れただかー!」
ワウリがばかでかい声を張り上げた。
「捕れた! 捕れた!」
それは港中に、このネネツの村中に、俺が乗ってきたイギリス船にも、氷に固められたフランス海賊船にも、すべてに響きわたる大声だった。だから、桟橋にいる連中も、駆けてきた連中も、みんな飛び上がった。
「ひゃはー! めでたい! めでたい!」
「ワウリ万歳!」
奴らは心から俺たちを祝福してくれていた。俺もパールラヴィも声を張り上げた。
「トドが捕れたぞ!」
「トドの肉よ!」
ワウリが叫んだ。
「みんな集まれ! トドが捕れただ!」
こうして、俺たちのトド狩りとともに、このネネツの村に春がやってきた。
作品名:Ramaneyya Vagga 作家名:RamaneyyaAsu