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Ramaneyya Vagga

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 コジーンの部屋に? 一緒に? まあいざというときは頼むよ、それじゃまた。電話を切ると、今度はスズから。コジーンと同じように、ひと通り笑ってから。
 「仕事はまた探せばいいよ。部屋を追い出されたなら、うちに来ればいい。あのストーブなんだけど、かなり大がかりになってきてね。助手がいてくれると、助かるんだけど。そう、つまり、きみがね」
 ぼくがきみの助手を? ストーブがコンクールで賞を取れば、賞金なんかが入るから、報酬も出せる、当面の食費くらいは、なんとか出してやるから。だって? 待ってくれよスズ、そう未来の話ばかりされても、ぼくには明日のことすら想像できない毎日が、もう何年も続いているんだからね。ああ、また電話するよ。
 ぼくは高野さんに電話した。コジーンかスズのところに住むなんて、きっと、なにかひどいことが起こるに決まっている。高野さんだ、ここを出ていくことになってしまったとき、ぼくの愛する高野さんの部屋に置いてもらう約束を取れないだろうか?
 「高野さん、赤池です。うん、コジーンから聞いた? そう。そうだよ、ひどいだろ? ぼくは狂っているらしい。専門家なんだから、本当だとも。どうりでどこの出版社でも相手にされないわけだよ。アウトサイダー文芸誌ってないもんかね。画期的だね、この企画。眠い? あしたデート? だれ? コジーン? 好きなの? ああ、知らなかったとも。セックスしてるかなんて、言ってくれなくてもいいよ、ショックかって? まさか。気にしないよ、そんなの。仕事はまた探すよ、大丈夫、眠いのにごめん、おやすみ」
 それでぼくは、すっかり新しい気分になった。充分に吟味して、自分の感情を、思考の色と方向を決めてきたつもりだったけれど、それは過信だったと気づいた。ぼくは前にブーちゃんに聞いた、長野の畑仕事について考えた。ブーちゃんに電話。きみが前に言ってたあの仕事なんだけど。
 「嘘でしょ、六郎太くん、長野行くつもり? 嘘、急じゃない、みんなと会えなくなるじゃない、どういうつもり? 真奈美さんに会えなくなっていいわけ? コジーンも鈴木くんも泣くわよ、きっと。あのね、あなた知らないかもしれないけど、コジーンとスズはね、電話番号? 控えてあるけど...ねえやめときなさいよ!」
 電話番号をメモする。ブーちゃん、ありがとう。また踊りに行こうね、いつ? さあ、いつかね。長野の農家に電話。こんにちは。畑で働きたいんです。
 「おらんとこは、たいへんだど。おめえ、つとまるか? ほうか。ほんなら、明日、電車乗れるかね」
 なんて詩的な表現だろう! 明日電車に乗れるかね。ぼくは感動した。リュックに服一式とコンピュータだけ入れて。ほかにいるもの、友達みんなの写真。みんなありがとう。いつかまた会って、楽しく話してくれるかい?
作品名:Ramaneyya Vagga 作家名:RamaneyyaAsu