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かざぐるま
かざぐるま
novelistID. 45528
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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「なんてことを……太一」
 ひなたの屈託のない笑顔を思い出すと、身体が怒りで震えてくる。俺が会わなければあの娘はこんな思いをしなくて済んだのだろうか。いや! 違う。 
「女性の気持ちも考えろ! 犬や馬の交配とは違うんだぞ!」
 勝手に『ADAM』として選ばれ、また勝手に不必要と言われる事はかまわない。だが、ひなたの、また女性たちの気持ちを考えると、はらわたが煮えくり返った。死をちらつかせて、好きなように実験を行うコイツを殺してやりたいとさえ思った。
 しかし、不思議な事に太一の爽やかな笑顔を思い出すと、竜崎が全部嘘を言っているようにも思えてくるのだ。俺はもう、何が真実なのかが分からなくなってきていた。
「僕の命令で太一君は今日も『交配プログラム』に参加しているよ。もう彼の子供は既に二十人を超えたかもしれないね。若い彼にとっては『交配プログラム』は一種のハーレムなんだよ。不老不死細胞にたどりつく可能性が最も高い人間だから、まあ当然の権利だね」
「……要するに東条君、君はもう『用無し』なんだ。君が掃除係の仲間に加わる前に、『古いADAM』に敬意を表して今日は種明かしをしてやろうと思ってね」
 俺は今までの人生で、こんなに勝ち誇った顔の人間を見たことがなかった。
「不老不死なんて不幸なだけじゃないか! 人間は生まれてから死ぬまでの時間が短いから、精一杯生きられるんだ。あんたは全く分かってない!」
 誰に言うわけでもなく叫んだ。
 俺はこの時、神に向かって叫んだのかもしれない。