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かざぐるま
かざぐるま
novelistID. 45528
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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「よお、シンちゃん。前から聞こうと思っていたんだけど、男でぬいぐるみを取る人なんて本当にいるのか?」
 ぬいぐるみの位置を直している伸二を見つけたたかしは、UFOキャッチャーのガラスにへばり付きながら声をかけた。隠れているつもりなのだろうか。
「あ、たかし君久しぶり。うーん、それが意外といるんだって。何かクレーンゲームのプロが施設に居て、その人が動画を配信しているんだよ。それを観た人たちが自分でもできるんじゃないかって集まってきてさ。今じゃ俺の配置と彼らのテクニック勝負みたいになっちゃってんの」
 たかしの突然の声かけにも驚かずに答えた。
「ふーん。何か楽しそうだな。やっぱ何か打ち込めることがあると、毎日が充実するよなあ。ところでこの人を知らない?」
 たかしはポケットから写真を出すと伸二に見せた。
「見たことあるような、無いような。あんまり特徴の無い顔だね。もし見たら連絡するよ。今日はこれからクレーンゲーマーたちの挑戦を受けるから忙しくなるんだ」
「んじゃ頼むよ」
 邪魔しちゃ悪いと思い、たかしたちは手を振るとカジノエリアに向かった。
 カジノエリアに入ると、バカラテーブルやルーレット、スロットマシンなどが広いエリアに散らばっていた。昼間なのに数十人が遊んでいる。斉藤は顔なじみの支配人に近づくと写真を見せようと肩を叩いた。
「いらっしゃいませえ。って斉藤君久しぶりじゃない。今日もチップをかっさらっていくつもりなの?」
 少しオカマっぽい口調なのがこの人の特徴だ。
 二十歳の支配人は、地上では『さりな』という名前を持つ美人ニューハーフだ。その業界では有名な存在だったらしい。支配人の制服を着て襟足を綺麗に刈り上げているが、確かにな何か妙な色気を出している。
 よくNoah2は性別を間違えなかったものだと、たかしと斉藤はいつも感心していた。
「いや、今日は遊びにきた訳じゃないんだ。支配人ならチップ管理の名簿を持っているんじゃないかなって。この人を探しているんだけど……スギサキシンヤって名前なんだ」
 たかしはポケットから写真を引っ張り出して支配人に見せた。
「見たことがないわねえ。まああなた達なら名簿を見せてもいいけど、絶対に他の人には内緒よ。てゆうか、気を許した人と話すとこんな口調になっちゃうの、ごめんなさいね」    さりな支配人は照れ臭そうにいった。
 彼が奥から持ってきた名簿は、あいうえお順にページがわかれていた。
「す、す、す、スギサキシンヤ!! あった! でも最終預け日は……十日前でそれから一度も来ていないな。チップも少額だし残念ながら部屋番号もない」
 肩を落としながら、たかしは名簿を机の上に放り投げた。
「支配人、もしこの人がチップを預けにきたらすぐ連絡してね。今度お礼にブラックジャックの攻略法を教えてあげるからさ」
 そう言うと、斉藤はたかしの方をくるんと向いて意味ありげにニヤッと笑った。
「おい、今日は遊んでる暇はないぞ。……こっち見んなって」
 たかしはそーっと目を逸らした。
「ちょっとぐらい、いいじゃないですか。竜崎の足取りも見つけたんだし」
 斉藤はもうチップを機械から引き出している。
「ほんとにちょっとだけだからな! 東条さんたちに怒られたら、お前のせいだぞ」
 たかしもまんざらでも無い様子で機械からチップを引き出している。

 四時間後

「お前何やってんだよ! そこはコールだろうが! このへったくそ!」
 たかしが斉藤の手札に向かって吠える。
「たかしさんが行けって言ったんでしょ!」
 斉藤も負けずに言い返す。
 二人の座っているブラックジャックテーブルの周りには人だかりができていた。彼らはあれから四時間も勝負を続けていたのだ。
 今日一番のデカい勝負に負けた斉藤はカードをばらばらと投げ出し、ふと腕時計を見た。
「ヤ、ヤバいですよ、たかしさん! うっかり遊んでしまって、なんと四時間も経ってます!」
 この時、たかしには斉藤の瞳孔が開いているように見えた。
「なにいいい! 東条さんはともかく、太一に殴られたら俺、生きている自信はないぞ!」
 二人は慌てて席を立ち、チップもそのままに次のコミュに走った。
「斉藤くんったら……相変わらず可愛いわねえ」
 別室のモニターでその様子を見ていたさりなの目には、何か特別な光が宿っていた。