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かざぐるま
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欲望の方舟 ~選ばれしモノたち~

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『エターナル・本部』 一月八日


 今日は大事な会議があるということで、太田、那智博士、舟木、颯太、アイリーンたちが集まっている。今回は、MIC代表の吉永茂も参加していた。
「原子力発電所の問題が深刻化しています。報告書によると、伊方原子力発電所の電力はこのままでだと供給できなくなります。詳細は那智博士お願いします」
 太田は真剣な顔で博士にマイクを渡した。
「要はこういうことじゃ。エターナルの地下に地下施設があることはみな知っておるじゃろう。核攻撃までは、そこに島根原発と伊方原発から50%ずつ電力が供給されていたのじゃ」
 頭をかきながら続ける。
「しかし、ハルマゲドンのあと島根原発からの供給が自動的にストップしてしまった。現在は伊方原発に100%依存する形になっておる。はっきり言おう。地下施設への電力をカットしなければ、島を覆う大型L・D・Fの電力は確保できん」
 室内がざわざわし始める。
「カットした場合、地下施設はすぐに自家発電に切り替わりますが、燃料から計算すると三か月も持ちません。あくまで緊急時のものですので」
 吉永社長が極秘データを見ながら引き継いだ。
 彼の立場でしか見られないデータだが、今回の事態の深刻さを受けて持参してもらっていた。
「でしょうね。しかし地下施設に今まで通りの割合で電力を割いてしまうと、将来エターナルは大事な防御壁を失ってしまう。颯太、現在の割合はどうなっている?」
「はい。現在、発電所が100%で稼働していると仮定します。地下施設にはそのうち15%が供給されている計算です。主に地下の酸素供給装置と、メインフレーム等の動力に送られていると思われます」
「なるほど。ということはカットした場合、三か月以内に地下の2000人は全滅だな」
 太田は目をつぶって考え込んだ。
「太田さん。提案があるんですが」
 颯太が手元の資料を見ながら発言する。
「言ってみろ」
「松江にある島根原発は、直撃を受けていない可能性が高いです。電力供給網も無傷だと思われますし、原発施設まで行ければ再送電の設定ができるはずです。松江まで空路使用の場合、直線距離で北に180キロメートルです。ところで博士、大型L・D・Fの電源を一瞬切ることは可能ですか?」
「電源オフから再起動まで一分はかかる。分かっていると思うが、その間は汚染された空気が多少侵入してくるじゃろう。だが、それほど今回は懸念することはない。何故なら島の暖かい空気が、地球の冷えつつある大気に向かって膨張するからじゃ」
「ということは可能ってことですよね! 僕、行きます。島根原発は自動で送電をストップしてるだけで、手動で再送電できる可能性は高いはずです。この中で誰か飛行機を飛ばせる人いませんか?」
 すがるような目でみんなを見回した。
 しーんと静まり返る中、すっと手が上がった。
「私、できるわよ。最先端の戦闘ヘリだって飛ばせるわ」
 声の主はアイリーンだった。
「お願いします! 地下施設には東条先輩や、愛里ちゃんもいるんです。みんな助かる方法はこれしかないんです」
 彼女をまっすぐ見つめると、深く頭を下げる。
「私からも頼む。愛里だけじゃなく2000人の命が助かるなら、可能性に賭けてみたい」
 吉永社長も立ち上がり、颯太よりも深く頭を下げた。
「待て、颯太。エターナルを一歩出たら、表は放射線だらけなんだぞ。しかも島根原発が100%無事だって保障はない」
 颯太をたしなめるように言った。
「分かってます。しかしこの可能性に賭けてみたいんです。もし、アイリーンさんが承知してくれたらの話ですが……」
「俺たちも行くぜ! アイリーンと俺たちはいつでもチームだ。家族みたいなものなんだ。ひとりだけで行かせられるかって!」
 ボビーの太い腕が挙がり、同時に手を挙げたチャンとこぶしを空中でぶつけた。
「ありがとうございます! 原子炉の制御と、電力の再送電は僕にまかせて下さい」
 そして、アイリーンに全員の視線が集まった。
「これで決まったわね。あの時、依頼されたとは言え、私は太田の命を奪おうとした。今度は太田だけでなくみんなの命を守る番だわ。颯太、足手まといにだけはならないでよ」
 アイリーンは魅力的な笑顔で颯太に微笑むと、太田をまっすぐ見る。
「……わかった。アイリーンのチームはこの作戦の詳しい計画書を早急に出してくれ。黒い雨の降ってない日に出発だ。L・D・Fの制御は那智博士が指揮して下さい。俺は飛行機を松山空港に手配しておく」
 愛するアイリーンを、本当は危険な目にあわせたくないに違いない。しかし、彼はこの国のリーダーとしてやることを心得ていた。